ショートショート 『深夜コンビニ』

 ウィーン

 深夜のコンビニが大好きだ。何故かは分からないけど。取り敢えず1周まわってみる。店員はニコニコしながら俺のことを見ている。俺も笑い返した。店内の時計を見ると、針はいつも通り3時5分を指していた。買うものは特に無いが、いつものクセで缶ビールを手に持っていた。そのままレジへ向かう。

「よ!」

「うぃー、やっぱり来たね」

「何でか知らんけど、深夜のコンビニが好きでね」

「お前コンビニの深夜のバイトしてんじゃん、この店で」

「まぁね、でも今日は休みだから。どうせお前も次の休みはいつも通り深夜に買い物に来るんだろ?その次の休みも、その次も」

「まぁな」

「用事もねぇのにわざわざ…ご苦労だな」

「お前もな」

「「ハハハッ」」


 ざっざっざっ

 深夜のコンビニが大好きだった。俺がバイトをしていた、ここにあったコンビニが。火事で無くなってしまった。今は空き地になっている。取り敢えず1周まわってみる。かつてレジがあった場所に立っているかつての店員は、ニコニコしながら俺のことを見ている…のか?暗くてよく分からない。一応笑い返してはみた。かつて、時計が掛けられてあった場所を見るが、当然時間を表してはくれない。ただ、3時5分で間違いない。買えるものは特に無い。手ぶらのままかつての店員の元へ向かった。

「よ!」

「来てくれて良かったよ」

「俺が来なきゃ、お前はここでずっとポツンだからな」

「それはお互い様だろ。逆に俺が来てなかったら、お前はここでずっとポツンだ」

「まぁな、でも俺は必ず来るよ。どうせお前もいつも通りここに来る。明日も、明後日も、明明後日もずっと、この時間に」

「その通りだ」

「大好きだった場所に縛られて…幸せ者だな」

「お前もな」

「ハハハッ」


 ウィーン

「いらっしゃいませー」

 深夜のコンビニに来た。なぜか分からないが、何となく。取り敢えず1周まわる。コンビニに来たときの癖だ。店員はレジでボーッと立っていた。スマホで時間を確認すると、時刻は3時5分だった。別に欲しいものがあった訳でもないのに、なぜこんな時間に来たのか。おかげで目が覚めてしまった。睡眠薬代わりにビールを手に取り、レジへ向かう。

「よ!」

「よ!」

「…えっ?」

 なぜだろう、友達の様に接してしまった。店員がフレンドリーな人で助かった。そうじゃなければ、絶対変な奴と思われたろう。

「すみません…」

「いえ…あの、どこかでお会いしましたっけ?」

「いえ、何で友達みたいに声をかけたのか自分でも分からなくて…」

「僕もなんですよね、なぜか友達が来たと思い込んでしまって。でも、お兄さんとは絶対どこかで会ったことある気がする…」

「え…」

 そのとき初めて店員の顔を見た。見た瞬間、自分がここにいる理由が分かった気がした。

「そうですね、どこかで会ったかもしれないですね」

「どこか…でね」

「ハハハッ」

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