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2023年のアルバムオブザイヤー その1

年末、Twitterを眺めていると、その年のベストアルバムを選出するアカウントをよく見かける。中には100枚近く選出する猛者も。そこで、こんなアンケートを募ってみた。

10枚から20枚の票が多かった。自分の感覚的にも1年間でリリースされた新譜からベストの作品として選出するなら20枚以内が妥当かなということもあり、選んだのは16枚。

2023年は

2023年、女性アーティストが強い年だった気がする。年の顔として個人的にパッと思い浮かぶのはNew Jeans、YOASOBI、boygenius、マイリー・サイラス、オリヴィア・ロドリゴなどすべて女性。

グラミー賞のノミネートだって、レコード賞もアルバム賞も8組中7組が女性アーティスト。フジロックの現場でも、個人的に印象的だったのはカネコアヤノ、羊文学、ロミーなど女性だったし、やっぱり強かったのかなと。

音楽シーンのトピックとしては、フェスの現場でマスクの着用義務がなくなり、「声出し解禁」でいつものロックフェスを再び楽しむことができるようになった(フェス初参加のワタシが述べる感想ではないけれど)。

そして、2023年はヒップホップが誕生して50周年の節目。1973年8月、DJクール・ハークがブロンクスのパーティーで2台のターンテーブルを繋いでレコードをかけたのがその起源だと言われる。RUN-D.M.C.が一発当てた1986年頃、一過性の流行で終わると思っていたヒップホップが見事にサバイブし、長年メインストリームの一角を担っている。

また、2023年もミュージシャンの訃報が相次いだ。ジェフ・ベック、デヴィッド・クロスビー、トム・ヴァーレイン、ティナ・ターナー、ロビー・ロバートソン、シェイン・マガウアンなど大好きなロックヒーロー達が、高橋幸宏、鮎川誠、坂本龍一、大橋純子、八代亜紀など日本の歌謡界、ポップ界を担ったミュージシャン、歌手たちが逝ってしまった。そして、シニード・オコナー、櫻井敦司、チバユウスケが50代の若さでこの世を去ったことは、音楽ファンに衝撃と深い悲しみを与えた。

そんな悲しみの2023年だったが、ローリング・ストーンズが18年ぶりにフレッシュな新作をリリースしたり、AI技術の進化で、まさかまさかビートルズの新曲が聴けるという、長年の音楽ファンとしてはこの上ない喜びも味わうことができた。「ロックは死なない」というフレーズが、威勢のいいスローガンなどではなく、そのロックを作った当事者によって、初めて現実に示された、そんな奇跡の年でもあったのだ。

1. Hackney Diamonds / The Rolling Stones

60年以上続くロックの代名詞が、日和ることなく軽やかに今の音を鳴らした18年ぶりのスタジオ新作。これがアルバムオブザイヤー1位。

1994年代以降、ドン・ウォズの手堅い仕事により、30年近く変わらない姿を見せてきたローリング・ストーンズ。
地上最大のロック記号に、その背中を追いつつロックを進化させてきた若いバンドのような瑞々しさを注入し、再び転がしたのは、Steel Wheelsの翌年に生まれ、キース・リチャーズに憧れるギター少年だった33歳の若者、アンドリュー・ワット。

90年代後半以降、時世を取り入れることに無理があると感じるようになったストーンズの新作。肩に力が入りすぎているというか、このサウンド、ストーンズにフィットしないぞ、と思った。70年代頃は、上手く時世を取り入れながらこれぞストーンズという音を出してたのに、何か上滑りしているのだ、90年代後半時期以降のそのような楽曲は。

ところが18年ぶりにリリースされたスタジオ新作からは、これぞストーンズという王道サウンドに無理なく今日的なエッセンスが組み込まれており、絶妙のバランス感覚と共に溌剌とした若々しさが伝わってくる。しかも肩の力が全く入っていない。80歳なのに何なん。本当に若返ったのか、アンドリュー凄いな。

サブスク解禁された午前0時、クロムキャストでSpotifyをテレビに繋ぐ。ストーンズの新作を聴くのにこんな状況ある?いつも仕事帰りにCD買って帰って聴いてたのに。

先行シングルAngryの後、2曲目Get Closeで最初の感動が訪れる。Sticky Fingersを彷彿とさせるザラザラしたコクのあるグルーヴ。これなのよストーンズは!もうすぐ寝ないといけないのにアドレナリンが全開に。
ブレイクの後聴こえてくるサックスソロは、ボビー・キーズばりのスワンピーな南部テイストではなく、流麗で都会的なフレーズ。またこれがよく合ってる。最高だ。

ポール・マッカートニーのブリブリとドライブするベースBite My Head Offの後、5曲目Whole Wide Worldは、最近のストロークス辺りを彷彿とさせるモダンなオルタナロック。ちょっと待ってよストーンズ、結成60年を超える最古のロックバンドが、こんな現代的な新曲を演っても全く違和感がなく、しかも最高にカッコいいなんて。

7曲目Mess It Up。キラキラとしたダンサブルなロックはまるでThe 1975。ストーンズの新作、本当に凄いわ。いや、今のストーンズ自体が凄いわ。きっとどんな時代のどんな音楽でも飲み込んで、自分たちのものにしてしまうだろう。それを実現させているのは、60年間バンドの表の顔であり続けたミック・ジャガーの「声」に他ならないけど。

後日、この曲のドラムを叩いていたのがチャーリーワッツだということを知る。涙が止まらなかった。死んでもなお、ミック、キース、ロニーと共に転がり、バンドを前進させたのだ。

2023年、終幕が近いと思われた巨大なロックのビンテージダイヤモンドは、若き職人によって磨き上げられ、再び眩い光を放ち始めた。

過去の傑作に並び称される壮大なロックゴスペルSweet Sounds Of Heaven、それに続く自らの原点Rollin’ Stone Blues。ロックを作りそれを牽引してきた第一人者の最高に美しい伝説の終幕…と思いきや、この伝説にはまだ続きがあるらしい。それは近日中に公開され、我々は再びその磨き上げられた眩い光に魅了されることになるだろう。

おわりに

冬のポケットから1年ぶりに発掘されたリップクリーム、2度と埋もれないようにズボンのポケットに入れ替えました。すると…

何ということでしょう!回してもないのに回転部が勝手に回り、クリーム部分が全部外に出て、ケースから完全に分離してしまったではないですか!

こんな時は焦らずに、蓋でクリームを押さえながら、回転部を逆回ししてください。
あら不思議、ちゃんと元に戻りますので。

2位以降は、2023年ベストの鮮度が落ちない近日中に記事にしたいと思います。

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