脱虚無

　「何か」を書く場所が欲しいな、と漠然と思っていた。おそらくずっと。けれど、どうにも始める踏ん切りが付かず、今まで尻込みしていたが、この度一念発起した。
　「書く」という作業自体は、物語を書くことと同じじゃないか。などとは眼の肥えたみなさんはさっぱり思わないだろう。やはり、いざ「書くぞ！」と腹を決めても、緊張感が全然違う。だってもう、ほら、書き始めて100文字の時点で文章が自分の人格からどんどんかけ離れていってるのがわかる。いま文字を打っている貴様は誰だ……。書き続けたら慣れるのだろうか。この違和感に。もしくは文章を書く行為そのものに。
　
　さて、そんな私がいま、相当な勇気を奮ってこのタイミングで文章を綴ろうと決意したのには、いくつか理由がある。
　まずひとつ。実は、私には密かな野望がある。この随筆もどきがある程度の数になったら、自分用にいつかまとめて一冊の本を作りたいな…と
　なんとその場合、本の装丁は彼女がつとめてくれるらしい。パートナーである以前に、私は彼女のセンスのファンなので、これはぜひとも実現させねばと燃えまくった。彼女が装丁を手掛ける代わりに私に出した条件はひとつ。「私のことも書いてほしい」だ。
　……書くよ！
　人見知りの彼女の方からそんなことを言うのは珍しい。ならやる気を出さないわけにはいかないな。
　というわけで、この文章は始まりから終わりまで、存在全てが惚気となっています。ご了承ください。

　このページを作るきっかけその２。
　私の歳下の友人について。
　私には、歳下の友人がいる。もう付き合いはかれこれ七年くらいになるだろうか。出会った頃は高校生だった友人も、今や立派な成人で、活躍の場をロンドンに移し、マーケティングを学んでいる。
　さてこの友人、多彩なのは知っていたが、なんとつい最近知り合いのホームページで『ロンドン紀行』の連載を開始したのだ。
　エリザベス女王を失ったイギリスの落胆と、民衆の前進の力と、それを見つめる日本人的なまなざし。
　す、すごい。なんてテーマだ。そして文章がまた面白い……。
　個人の文章の質を比較しても意味がないが（自分に言い聞かせている）、それでも尊敬や焦りを覚えないわけがない！
　やべ〜、私も何か書こう。じゃないと、あまりにも早い日々の流れに置いていかれそうだ。ただでさえぼんやりとXのタイムラインばかり生きてるんだから、ここで虚無タイムの人生への侵食を食い止めなければならない。そんな危機感が、ある。

　このページを作るきっかけその3。
　私の同級生の友人②について。
　180センチのムキムキであるこの友人、なかなか面白い。ちょっと変。どのあたりが、というと、マンガの守備範囲が恐ろしく広いところだな。
　GLからBL、TL、少女漫画、歴史物、ホラー、とにかくなんでも楽しく読めるのだ。歳を重ねて少女マンガの魔法がかかりにくくなってきた私にとって、その友人の懐の広さは憧れのひとつだ。
　しかも、王道はもちろん抑えつつ、とびきりブームにはなっていないけれど、確かに面白い…というマンガを発掘するのが抜群に上手い。
　教えてくれるマンガがことごとく面白いものだから、私はしゃぶしゃぶを食べながら、その友人に「マンガバーを開いてくれよ。棚一面に君のおすすめを置いてさ。週末だけでも」とけっこう真面目にお願いしてみた。
　友人は渋いバリトンボイスで「さすがに無理だよ」と笑った。私は「ならば」と食い下がる。
「おすすめをまとめてくれよ。たくさん読みたいから」と追撃。そうすると友達は「うーん」と唸って再び肉を食べはじめた。
　その日はそれでお開きになったんだけど、帰ってさあ寝るかと思った時に、LANEが来た。
『書いてみた』というシンプルな連絡に、noteのURL。
　なんとなんと、彼は帰宅してすぐに彼の城を作ってしまった……。
　私はあまりにも愕然とした。なんてスピーディ。なんてパッション。こういうやつが出世して世の中を回すんだ。日本をよろしくな…。
　それは置いておいて、その友達のすごいのはここから。そいつは、きちんと週に一回、自分のおすすめマンガを定期的にnoteにまとめはじめた。
　もちろん、内容や文章が特別面白かったり読みやすかったりするわけじゃない。けれど、そんなことは問題じゃない。二次創作とはいえ、ちょぴっとでも文字を考えたり書いたりしてみると、継続的に物事を行うことの難しさを恐ろしいほど痛感する。黙々と書いて、淡々と上げる。そんな職人のようなオタクになるのが、どれだけ難しいことか…。
　そんなカッコいいオタクに、私も、なりたい……。だからここは、ちょっと恥ずかしいが、ある意味で私の自己実現の場所でもある。

　と、いろいろな人からの影響を受けて、私もこうやって「何か」を書きはじめてみた。
　……というか、お気づきの人もいらっしゃるかもだが、私の行動のきっかけはほぼ”他人のアプローチに触発される“だ。影響を受けやすいどころではない。他人90%。残りの10%はX。Xも他人の生活を眺めるツールだと思えば、もしかして、私の生活はほぼ他人で構成されていることになる！？
それは大丈夫なのか！？　
　みんなはどうなんだろう。どうやって、何を考えて、時間を何に使って毎日生きてるんだ？　なんでそんなにしゃっきり生きられるんだ？　私は本当に何も考えてないんだよ。だから、このページを始めたよ。ネタを探すには、自然と日常にアンテナを張らなくちゃいけなくなるから……。
　書きたいことを書くための場所じゃなくて、書きたいことを探すための場所。手段と目的が逆転してる気もするけど、まあ、良いだろう。私が良いと思ったら良いのだ。

　あと、私がこういう類の文章（日記とかnoteとか）を書くことに対し、非常に腰が重かった最大の理由。
　私は恐ろしいほど三日坊主なのだ。どこに行っても門前の小僧もびっくりするくらいあっちゅーまの三日間を過ごしている。
　やべ〜今回もそうなったらどうしよ〜。ここまで長々と言い訳や決心を書いてまた更新が止まったら、ホント、もう笑っちゃうな。笑うしかないよ。今のうちに笑っとくわ。笑
　

ほんものになりて〜。
世の中に置いていかれちまう前によ〜。
ほんものってなんだよ〜。