「遠近法の理解 ~半球を用いた透視図法~」5

【5】 円形の絵から四角形の絵への変換

普通、絵は四角形である。しかし半球を平面に投影する事によって得らえる絵は円形である。全体は円形で、しかも内部は歪曲している絵というのは奇妙と言えば奇妙である。円形で問題が無いならともかく、額縁に収めるなどをしたいなら、四角形の方が望ましい。なお星図のように円形の絵もあるので、その点はまだ許容できると言えるかも知れない。しかし直線の物が歪曲して描かれるという点には違和感を覚えるであろう。

ただし歪曲は必ずしも悪とは言えず、その点は良く言えば効果である。例えば不動産物件の紹介などでは、広角レンズで撮影したと思われる歪曲のある写真も少なくない。そのような写真の使用には、部屋が広いという印象を見る人に与えるという狙いが込められているのであろう。歪曲の有無の良し悪しの評価はともかくとして、ここではその補正について述べる。

円形である事と歪曲しているという事に対して、単純な対応として、円形の絵の周辺部を切り落して、中央部分の小さい領域の四角形を得るというやり方がある。そもそも180度という非常に広い画角が必要になるという場合は限られている。静物画や肖像画などに広い画角は特に必要というわけではないので、周辺部分を切り落としても不都合は生じないであろう。

ただし切り抜かれた四角形の絵から歪曲が完全に無くなるわけではない。よほど小さく切り抜いた場合には、その歪曲はほぼ無視できる程度になるであろうが、厳密に言えば歪曲は消えずに残る。樽型に歪曲している絵に対しては、糸巻き型の補正を施す事でその歪曲を軽減させられる(図5-1)。

画像1(図5-1)

元の絵が単純なら手作業でも歪曲を直線に描き直す事ができる。例えば、図5-2のように、四角形の物が歪曲して写っている絵があるとして、それに対して直線を引けば、四隅が引き伸ばされるという変形は伴うが、四角形の物を四角形として描く事ができる。

画像2(図5-2)

全体的な変換については、円形の座標から四角形の座標へ描き移せば、円形から四角形に変換できる(例えば、このページこの画像この画像を参照)。それを手作業で行うのは大変な手間であるが、画像処理ソフトにはそのような機能が備わっている。


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