「遠近法の理解 ~半球を用いた透視図法~」10

【10】 広い画角と狭い画角の特徴

絵を描く場合、どの程度の画角を取ればよいのかという問題がある。広い画角を用いて描けば(視点から近い場所で見れば)、前後で大きさの差が強調されるような絵(遠近感の強い絵)を得られる。一方で狭い画角を用いて描けば(視点から遠い場所で見れば)、平行投影のような絵(遠近感の弱い絵)を得られる。

その二つのどちらが正しいかはどのような評価基準を用いるかによる。例えば設計図などには遠近感は不要で、主観的なもっともらしさよりも、客観的な正確さが重要である。そのような例もあるが、一般的には大きい物には広い画角を用いて、小さい物には狭い画角を用いるのが自然であろう。大きい物は広い画角を占めて、それによって遠近感も強くなるというのは当然の理屈である(図10-1)。

画像1(図10-1)

人間は絵を見ると、その逆方向の判断が脳内で自動的に行われるようである。絵において遠近感が強いと、描かれている物は大きい(あるいは視点から近い)という印象が生じ、一方で絵において遠近感が弱いと、描かれている物は小さい(あるいは視点から遠い)という印象が生じるようである。その点を念頭に置けば、効果的な絵を描けるであろう。

例えばロボットの絵を描くとする。遠近感を弱く描くと、小さい物が描かれているというように解釈されるはずである。そのため受け手にとって、それは模型のロボットのように見えるであろう。一方で、遠近感を強く描くと、大きい物が描かれていると解釈されて、巨大ロボットのように見えるであろう。

また車にぶつかりそうになっている絵を描くとする。遠近感を弱く描くと、車は視点から遠いと解釈されるはずである。一方で、遠近感を強くすると、車は視点から近いと解釈されるはずであり、受け手に対して、車が非常に接近しているという印象をもたせる事ができるであろう。

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