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【CHC】本当にカブスを救っちゃった"Pitching Philosopher"
サムネイルの画像はMLB.comとシカゴカブス公式Xより引用。営利目的での引用ではありません。
※こちらの記事も合わせてお読み下さい!
今回はいわゆる「続編作品」です
お久しぶりです、イサシキです
開幕から早1ヶ月と半分が過ぎました。今季は全体的に故障者の多いシーズンであり、カブスも26勝21敗と5つの貯金がありながらもアクティブロースター(26人)の半分以上にあたる15人がIL入りを経験するという非常事態に見舞われ、現在進行形でもチームのコアであるダンズビー・スワンソンがIL入りしている他、開幕前から両ハムストリングの不安を抱えるイアン・ハップが低調なシーズンを送り、同じくハムストリングを痛めたニコ・ホーナーもずっとベンチから戦況を見つめている状況。さすがにこれだけ怪我人が大量に出ると様々な要素にイライラしてしまうところですが、それを払拭するような活躍を魅せる選手がいます。
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その選手が何を隠そう、我らがカブスの"Pitching Philosopher"、今永昇太投手です。
Imanaga’s 0.84 ERA is the lowest of any starting pitcher (excluding openers) through their first nine career starts in @MLB history since ER became a stat in 1913 🔥 pic.twitter.com/tkI8sXEQhQ
— Chicago Cubs (@Cubs) May 18, 2024
ポスティングシステムを利用して今季から基本4年5300万ドルでカブスに加入した今永投手。当初は先発3〜4番手の働きを期待されて入団した彼が、今や先発投手として100シーズン中最も良いERAを叩き出すというまさにヒストリカルなピッチングを続けています。
今回のnoteは、そんな彼のピッチング分析を単純にやってみようという回です。
想像以上のツーピッチ主義
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NPBでは多彩な球種を操りながら、抜群の奪三振能力で打者を翻弄していた今永投手。しかしMLBではウェポンであるフォーシームとスプリットチェンジの2球種で約90%を占める投球スタイルになりました。これは対戦相手が右打者を多く並べていることも関係してそうですが、おかげさまで今永投手は強力なツーピッチを軸としたピッチングができるので、長所がずっと発揮されるような形となっているのではないでしょうか。
また左打者に対してはスイーパーの使用も目立ちます。今季打者に投じたスイーパー49球のうち45球は左打者に対して。実に約92%を占めるピッチセレクトとなっており、打席に応じて明確なピッチデザインがあることがうかがえます。
縦の揺さぶり〜高めと低めのコントラスト〜
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浮き上がるように見えるフォーシームと鋭く沈むスプリットチェンジにおける最大の効力は「打者の目線を変えて縦の投球幅を確立させる」というところにあるのではないかと考えています。
配球チャートを見ると、ご覧の通りフォーシームは真ん中より高めにおおよその制球力でコントロールされており、スプリットチェンジに至っては真ん中低めから右打者のアウトコースにかけてギリギリのところにデリバリーされているホールが多いことがわかります。
もちろんカウント状況や打者、さらにはウラをかくためにローコースへのフォーシームを投じることもありますが、基本的にこの2球種は縦のグラデーションが相乗効果を生み出しているのではないでしょうか?
フォーシーム:浮き上がる錯覚はリリースにあり?
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ピッチングアドバイザーのコール・ニューウェル氏によると、今永投手のフォーシームは人差し指と中指を同時にボールから離す特徴があり、それがボールの回転効率を高めて打者に浮き上がるかのような錯覚を与えていると言います。確かに人体の構造上、最も長い指は中指になるため、リリースでも基本的には最後までボールに触れているのは中指でしょう。ただこれがボールスピンに対する一貫性のなさを呼び込み、スピンレートに悪影響を与える可能性もあるため、このリリースは今永投手にとって重要な調整ポイントなのかもしれません。
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現にSavantがデータ提供をしているボールリリース時のボール回転軸(写真上)とリリース後の予測回転軸(写真下)では、フォーシームを示す赤いグラフが上下ともにまとまっており、ボールがリリースされた後もほぼ同じ回転軸を辿って18.44mを駆けていることが読み取れます。
また今永投手本人も自身が手がけた著書の中で、フォーシームのリリースに関して、ボールを球体ではなく立方体として捉え、その立方体がキレイな縦回転をしたまま進んでいくことをイメージしていると語っていました。
個人的な解釈ですが、これは立方体の角に人差し指、中指、親指を引っ掛けるとその立方体を安定感のある状態で持てるというように、3本の指のアーチを確立させて指の角度を固定し、人差し指と中指に均等な力を伝えられるようになる=回転軸のブレないキレイなフォーシームが出来上がるという認識でいます。
今永を支える唯一無二の「コマンド」
ずば抜けて速いボールを投げるわけではない今永投手にとって、現在の活躍はそのコマンド能力が光っていると言って良いでしょう。
今永投手の今季Zone%は50.9と飛び抜けたストライクスロワーではありませんが、初球ストライク率は67.2%と非常に良く、フォーシームとスプリットチェンジをはじめとした各アーセナルの制球力に問題はなさそうですね。
ちなみに純粋なストライク・ボール%だと67.5%なので、3球に2球はストライクを投げている計算となります。
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またストライクゾーン近辺での投球で打者と勝負できているのも好印象で、ボール1個分のコマンド能力でコースの出し入れを管理できている部分や高低の使い分けで、最終的に高めのフォーシームと右打者の外へと逃げながら落ちるスプリットチェンジが活きてくるといった投球内容になっているように思えます。
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さらにフォーシームに関しては高さを間違えないため、ハードヒットはされてもバレルには入れず、ホームランも許していないため、とりわけ右打者のインコース対応はここまで完璧と言って差し支えないでしょう。
今後の活躍は期待して良いの?
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MLB1年目という慣れない環境でいつかは打ち込まれる試合が来ると思っていましたが、今のところは全くその素振りもありません。
先述のコマンド能力であったり、MLB史上であまり類を見ない球質であることが影響しているのか、Under%(打球角度45°〜90°:一般的にはフライアウトになりやすい領域と言われている)が34.7%、Topped%(打球角度0°〜-90°:いわゆるゴロかそれに近しい打球)が21.0%と打球の半分以上が安打になりにくいゾーンで捉えられているため、相手から高めのフォーシーム対策を徹底されない限りは同等の成績を収めていく可能性も高くなるでしょう。
ただここまでの9先発でビッターズパークを経験しておらず、これから夏場にかけて疲労度合いが色濃くなる中で打球も飛ぶようになると考えると、さすがに被本塁打は増加すると思います。
久しぶりの投稿な上、ややShortに近いnoteですが、このノースシカゴ野戦病院に憂いているカブスファンに一筋の光を指す存在として、今後も今永投手の活躍に期待しましょう!
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