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未来を見据える球団も…”Elijah Greenレース”7月編

お疲れ様です、イサシキです。

オールスターブレイクも明け、MLBは後半戦に突入。日本時間31日の5時に終了したTDL(Trade-DeadLine)でも各球団に大きな動きがあり、コンテンダーとして大物選手を獲得する球団、その選手をプロスペクトと引き換えにして将来のコンテンダーを目指す球団もありました。

そんな中、2022年の全体ドラフト1位指名権も混戦となってきました。

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そこで今回も先月に引き続き、今シーズンここまで勝率の低い球団ワースト5の現状などを紹介していこうと思います(※先月もそうでしたが、決してその球団を貶めるとかそういう意図は全くございません。苦手な方はこの時点で引き返していただけるといいかなと思います)。

なお、この記事は「2022年ドラフト全体1位指名権争奪戦」というマガジンで読むことが出来ます。また、記事のタイトルにもなっている”Elijah Green(イライジャ・グリーン)”はアメリカ・IMGアカデミーに所属する外野手で、2022年のMLBドラフトで全体1位指名が予想されている選手です。前回の紹介時にGreenのプレー動画を貼り付けてありますので、よろしければ下記リンクよりご覧ください。

Elijah Greenレース(上位5球団)7月31日試合後


1位:D-Backs(33-72、勝率.314)

2位:Rangers(37-67、勝率.356)D-Backsとのゲーム差:4.5

3位:Orioles(37-66、勝率.359)D-Backsとのゲーム差:5

4位:Pirates(40-64、勝率.385)D-Backsとのゲーム差:7.5

5位:Twins(44-61、勝率.419)D-Backsとのゲーム差:11

D-Backsも一時期の勝率2割台からは向け出したものの、全体的にはダブルスコアで負け越している状態。Rangers、Orioles、Piratesも勝率3割台と、まだまだ再建を頑張っている状況。Twinsはとうとう調子が上がることなく、TDLでコアの選手を放出することとなってしまいました。

それでは今後の展開も含めて、見ていきましょう。

1位:D-Backs(NLWest5位 首位とのゲーム差:32.5)

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今シーズンチーム内本塁打、打点2冠のEscobarはMILへ移籍。規定打席到達者が3人しかいなくなるというグロテスクな事態に...

月間成績:11勝12敗 勝率.478

悪夢の大型連敗が起きた5、6月が過ぎ、7月はほぼ勝率5割で戦い抜きました。ただ、ここから巻き返そうにもなかなか難しいところはあります。

まずはTDLでチームの主軸であったEscobarがトレードでMILへと移籍。これにより打線の弱体化は避けられません。しかし悲しいニュースばかりではなく、先日死球で右手首を骨折した捕手のCarson Kellyが戦線復帰したことや、ここまでチーム野手トップのfWAR(2.1)を記録しているJosh Rojasも7月11日から21日まで7試合連続安打(内マルチヒット4回、猛打賞1回)と非常に好調ぶりをアピールしていました(その21日の試合で左手を脱臼してしまい、現在はIL入り中ですが...)。

投手陣は、ただでさえ先発、リリーフ両方が焼け野原状態であったのに、クローザーのSoriaがトレードでTORに移籍したことにより、リリーフ陣が手薄に。ただ、移籍後肩の怪我で戦列を離れていたベテランリリーフClippardが復帰したため、当面はこのClippardがクローザーを務めるのかなという気がしてます。

そして先発陣も規定到達がMerrill Kellyただ1人ではあるものの、直近7試合の先発登板で4勝1敗、ERA3.07と大奮闘。BumgarnerGalenの調子がなかなか上向かない中で、間違いなく今シーズンのD-BacksはこのKellyがエースでしょう。

かねてから移籍の噂が絶えなかったMarteがチームに残留するなど、根本的にチームを解体することはなかったD-Backs。このMarteSmithKelly(C)、Rojasらをコアとして、果たして数年後に魔境・ナ・リーグ西地区でコンテンダーになれるのでしょうか。

・TDLでの動き

放出Eduardo Escobar(MIL)Joakim Soria(TOR)Stephen Vogt(ATL)

加入:Cooper Hummel、Alberto Ciprian(MIL)Mason Berne(ATL)

Soriaは後日発表選手2人とのトレード

2位:Rangers(ALWest5位 首位とのゲーム差:26.5)

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Rangersの看板選手Galloを放出するなど、5選手がチームを去った。このまま順調にリビルディングは進んでいくだろうか。

月間成績:6勝18敗 勝率.250

今シーズンコアとなっていた選手たちを次々と売り出し、着々と再建を目指すRangers。7月は16日のTOR戦から25日のHOU戦まで10連敗を喫するなど失速し、期待のかかる選手たちの勢いにも陰りが見えた1か月となりました。

まずは7月の月間打率が.163と打撃不振に陥ったSolakが23日にマイナー(AAA級)降格。シーズン当初ハイペースで本塁打を量産し、ASにも選出されたGarciaも7月は打率.216と低迷。さらにはKiner-Falefaも打率.188、個人的に好きな選手の1人でもあるLoweは.243だったもののなかなか長打が生まれず、今シーズンここまでチームを引っ張ってきた選手たちが軒並み苦しんでいました。

投手陣も野手同様、エースのGibsonがDET相手に2戦連続で捕まってしまった影響で月間防御率は6.26。Lylesはイニングは稼いてQSも月間で3回達成しているものの、それでも防御率は4.80と先発5番手クラス。Foltynewiczに至っては月間防御率が10.42とついにイニングも稼げなくなりつつある状態。期待のDunningも防御率こそ2.70ですが、まだ長いイニングは投げ切ることが出来ません。

一方リリーフ陣は、大きな成績変化はないものの、クローザーのKennedyが移籍したことによってゲーム後半により不安ができるようになりました。おそらくですが、昨日のSEA戦を見ている限りでは、Pattonがクローザーとして起用されるのではないかと思っています(その試合で2失点したことは黙っておこう...)。また、個人的に23日からメジャー昇格を果たしたJoe Barlowが非常に良いピッチングを披露しているので、もしかしたら今後この成績を維持できるようなことになれば9月あたりにはクローザーを務めているかもしれません。

やはり再建にはもう少し時間がかかるかなあという印象を受けますが、どんどん若い選手が出てきているのも事実。そしてGibsonらのトレードで、PHI元NO.1プロスペクトのSpencer Howardを獲得したことは非常に大きいと思います。かつてダルビッシュAndrusらが在籍していた頃のような強いRangersはいつ戻ってくるのか、期待しながら待ちたいと思います。

・TDLでの動き

放出:Joey Gallo、Joely Rodriguez(NYY)Kyle Gibson、Ian Kennedy、Hans Crouse(PHI)

加入:Glenn Otto、Josh Smith、Ezequiel Duran、Trevor Hauver(NYY)、Spencer Howard、Josh Gessner、Kevin Gowdy(PHI)

3位:Orioles(ALEast5位 首位とのゲーム差:25)

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放出の噂があったMeans、Manciniは揃って残留。静かなTDLを過ごしたBALはここからの戦いが重要になる。

月間成績:10勝12敗 勝率.455

熾烈な争いを繰り広げるア・リーグ東地区の中で、Oriolesだけはその争いから脱落しています。TDLではSSのGalvis、リリーフのArmstrongを放出するのみに留まり、大きな動きは見せませんでした。

先月も紹介したMullinsがASでスタメン出場を果たしたり、Manciniがホームランダービーで準優勝するなど、何かと公式戦以外の部分での話題が多かった1か月ですが、実は野手陣で1人、面白い成績を残している選手がいます。
その名はRamón Urías。27歳のIFで、GalvisがILに入った後はSSとして起用されています。

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このUrías、実は4月は打率.154と大きく苦しんでいましたが、5月に入ると途端に爆発。怪我もありながら5月は打率.429、6月は打率.316。そして7月は全試合に出場し、打率.313、出塁率.368、打点12と存在感を発揮しました。

長打力が秀でているわけではありませんが、確実性のあるバッティングは魅力的なので、8月以降も良い成績を残せるのではないでしょうか。

投手陣はAS明けに予告通りエースのMeansが復帰したという明るいニュース以外は特に目ぼしい話題は無し。正直FrySulserScottあたりはリリーフを探している球団がトレードで獲得してもおかしくはないと思っていましたが、特に動きを見せることはありませんでした。

とはいえRutschmanをはじめとするプロスペクトたちも充実してきており、1年半後にはChris Davisの大型契約が終了するため、徐々に勝負をかけるタイミングが迫りつつあるのではないかと思います。ここからの期間でしっかりと若手を育成しつつ、チームの底上げを図っていけるといいですね。

・TDLでの動き

放出:Freddy Galvis(PHI)、Shawn Armstrong(TB)

加入:Tyler Burch(PHI)

Armstrongは金銭トレード

4位:Pirates(NLCent5位 首位とのゲーム差:21.5)

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ASにもスタメンで選出されたFrazierSDへと移籍。しっかりと見返りでFrazier2世になれる素質を持つ選手を獲得したのは◎か。

月間成績:11勝14敗 勝率.440

昨年は短縮シーズンで30球団中最下位の勝率となり、2021年ドラフト全体1位指名権を獲得した前回王者。今年も再建中であることに間違いはありませんが、昨年と違って将来に向けた明るい話もいくつか出てきました。

まずは再建中のチームとしては異例ともいえる、Bryan ReynoldsとAdam FrazierASに2人揃ってスタメン出場をしたことでしょうか。

Reynoldsは昨シーズンの不振を振り払い、今シーズンここまでチームトップの打率(.309)、本塁打(18本)、打点(58)、OPS(.914)というチーム内三冠王といった成績を記録しており、まさに再建中のチームにおける大黒柱的存在でしょう。

FrazierLeading-Hitter最多安打争いに加わる大活躍を見せ、ASファン投票で1位を獲得する健闘ぶりが見られました。

そして個人的にはTDLでのトレードで得た見返りに高評価を付けられるかなあとも思っています。

Frazierのトレードでは、SDからFrazierがまさに将来像ともなるべきプロスペクトのMarcanoを獲得することに成功。また、HolmesをトレードでNYYへと移籍させる際の見返りとして、ParkCastilloという優秀な野手のプロスペクトを獲得することに成功。さらにはTDL終了間近の駆け込みでRodriguezと引き換えにWilsonを獲得することに成功するなど、自球団と他球団の双方にメリットのあるトレードをバンバン成立させていた印象が非常に強いです。

一方、シーズンではここまで大きな怪我無く先発陣を引っ張ってきたAnderson、クローザーとしてAS級の成績を残していたRodriguezらがトレードで抜けたため、戦力ダウンは必至。また野手陣もFrazierが抜けることになるので、得点力といった部分は間違いなく落ちるでしょう。

それでもまたコンテンダーになるために着々と他球団からプロスペクトをかき集め、今年のドラフト全体1位ではCのHenry Davisを獲得するなどその方向性は一貫しており、もはや貫禄が出てきているほど。まだまだ数年以上はかかると予想される再建への道ではありますが、同じ道を歩むことになるであろう同地区のCubsと共に、力を蓄えていってほしいです。

・TDLでの動き

放出:Adam Frazier(SD)、Clay Holmes(NYY)、Tyler Anderson(SEA)、Braeden Ogle(PHI)、Austen Davis(BOS)、Richard Rodriguez(ATL)

加入:Tucupita Marcano、Michell Miliano、Jack Suwinski(SD)、Hoy Park、Diego Castillo(NYY)、Carter Bins、Joaquin Tejada(SEA)、Abrahan Gutierrez(PHI)、Michael Chavis(BOS)、Bryse Wilson、Ricky DeVito(ATL)

5位:Twins(ALCent5位 首位とのゲーム差:17)

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TORへと移籍したJose Berriosさん。その見返りは非常に豪華なパッケージでした。来年以降のMINに大きな影響を与えたかも?

月間成績:11勝16敗 勝率.407

このチームがTDLに売り手に回ることを誰が予想できたでしょうか。このチームが地区最下位に沈んでいると、一体誰が予想できたでしょうか。

2019、2020シーズンのア・リーグ中地区王者が、現在苦境に立たされています。シーズン序盤からコロナによる試合中止等で選手たちの調整、コンディションが万全ではない状況下で当時絶好調だったBOSやOAKなどとの対戦カードが多かった不運も重なり、気づけば首位を争うはずだったCWS、CLEに置いてけぼりを喰らっていました。

昨シーズン良かった投手陣も今年は軒並み成績低下。打線も絶好調のBuxtonが怪我で離脱するなど、なかなか投打が噛み合いませんでした。

それでも売り手となったTDLでは良いムーブを見せました。FAまで半年となっていたCruzHappでそれぞれ東京五輪アメリカ代表にも選ばれたRyanや既にSTLの先発ローテの一角で投げていたGantを獲得。極めつけには今シーズンここまでローテの柱として活躍していたBerriousトレードの見返りとして、こちらも東京五輪アメリカ代表のSimeon Woods Richardson(MLB全体プロスペクトランキング67位)に加え、MLB全体プロスペクトランキングで15位に入っていたAustin Martinまで獲得するという、現時点で100点満点のトレードを成立させました。

おそらくですが、MINの場合は数年かけて再生するというよりも「また来年勝負するよ」という意気込みが感じられます。何せこのTDLで獲得した選手たちは、いずれもMLBデビューが非常に近い選手が多いです。そう考えると、実は今夏のTDLで最も成功したのはMINではないかとも思えてきます。

そのTDLでトレードの噂が流れたDonaldson、Buxton、前田健太、Michael Pinedaがトレードされなかったところを見ると、今オフにどう動くかでまた戦況が変わってくるチームではないかなと思っています。

・TDLでの動き

放出:Nelson Cruz、Calvin Faucher(TB)、Hansel Robles(BOS)、J・A・Happ(STL)、Josē Berrious(TOR)

加入:Drew Strotman、Joe Ryan(TB)、Alex Scherff(BOS)、John Gant、Evan Sisk(STL)、Austin Martin、Simeon Woods Richardson(TOR)

まとめ

やはりTDLで売り手に回った球団が多かったですね。ただそれもチームを強くする過程においては必要なこと。将来を楽しみに、今シーズンもMLBを楽しみましょう。

また、今夏のTDLで大幅に主力をトレードしてチームを解体したCHCやNats、逆に市場で売りさばけなかったStoryを要するCOLなども今後成績を落としてくる可能性があるので、まだまだGreenレースの行方はわかりません。

今回は以上となります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

今後もMLBやCubsに関する記事を書いていきますので、ぜひお読みください。

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