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声が紡ぎだす あなたに伝えたいSTORY _02

story_02_東洋医学と西洋医学のものの考え方の違い

向野:例えばね、僕はよく「栗むき3例」の話をするんですけど、栗を剥いた3人の患者さんの症例。
中嶋:ほう(驚)。
向野:それは、ある秋に自分の患者さんとして体験したんです。
中嶋:はい? 栗をむく3人の患者さん? 
   それは、どういった前提なのでしょうか?
向野:ははは(笑)
その人たちというのは、1人目は「肩」が痛い、右肩がすごく痛い。
それから、2人目は「めまい」がするという。元々肩こりがひどくなるとめまいがする人だったんですね。めまいがするという訴え。
もう1人は、「肘」が痛くて痺れるという患者さん。
西洋医学から見ると、これらは3つとも別の病気なんです。それで、検査はそれぞれ別々の検査がされて、治療も西洋医学的診断に基づいた対応をして治療をしようとするのが西洋医学のアプローチですけど。

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だけど実はこの患者さんたち、体の動きを負荷するとある一定の共通した傾向があるんですよ。
中嶋:“体の動きを負荷する”というのはどういう意味ですか?
向野:例えば、1人目の肩の痛い患者さんに、手を上げたり、腕を後ろ/背中側に伸ばしたり、横に広げたり、肩の動きをいろんな種類やってもらいます。
するとその患者さんは、ある動きで痛いという。それは、肩関節の伸展という腕を後ろに伸ばす動きでした(図1-Case1)。
2人目のめまいの患者さんは、上を向いた時にめまいがひどくなってしまう。(図1-Case2)
3人目の肘の痛みと痺れの患者さんは、ドアノブを回すように親指を内側に回すように手首を回す動きをすると痛みがひどくなる。(図1-Case3)
これらの動きは、東洋の考え方というか、僕が考案した方法で分析すると3つとも同じ病態なんです。
東洋医学では、『経絡(けいらく)』という筋(すじ)みたいなものが何本も全身に分布していると考えられていますけど、先程の3名の患者さんたちが痛みなど症状を訴えた動きは、特に親指と人差指に分布している経絡で、「肺経と大腸経」と呼ばれる経絡に関係しています。
動きを負荷するというのは、つまりこれらの経絡という筋みたいなものを動きで引き伸ばす、テンションをかけるってこと。ゴムひもを引っ張るみたいなイメージかなぁ。新しいゴムひもは柔軟性もあって多少強く引っ張ってもなんともないけど、使いすぎたり年月が経ったものは少し引っ張ったら切れてしまったり、伸びきったり、傷が入って使い物にならなかったりする。
だから経絡も同じで、負荷をかけるとカラダに痛みやつっぱり、だるさなど、様々な症状が現れることがある。普通にしてると何もないんだけど、動きをしたことで起こるカラダの異常(痛みやつっぱりだるさなど諸症状)が出たということは、動きをすることで何かが起こった、誘発されたということが分かるわけですね。
そうすると、この3人を東洋の発想で見ていくと、同じ原因で起こったのではないかということが推測できる。
これらの症例の時期は秋で、3人はちょうど栗むきを沢山やっていた。それに続いて肩の痛みが酷くなったとか、めまいと肘の痛みなどの症状が全部一致して起こってきている。
それに対する治療は基本的には3症例とも同一です。それを治療することで、3人とも簡単に解決してしまった。
このような東洋の考え方は、その患者さんが何を行っていたかという生活の背景まで見ることのできる仕組みを持っている。
西洋は、確かに骨に異常があるとか、頸椎や肩の骨に異常があるとか、腱に異常があるとか、たとえば三半規管に異常があるとか、そういう診断でアプローチしようとするけど、実は日常とはあまりリンクしていないじゃないですか。
だけど患者さんの背景というのが一番大事で、そういうことがわかる仕組みが東洋の仕組みということ。だから西洋と東洋、両方一緒にやれればこれに越したことないんですけどね。
ただ医療になりえないと言うかね・・・。

中嶋:医療になりえない?
向野:お金にならないんですよ。
中嶋:お、お金にならない?(驚) どうしてですか?
向野:うん(苦笑)・・・
この方法論は、診断には基本的にお金のかかる検査は必要ない。実際に負荷をするだけでいい、動きをね。そして何箇所か刺激すればいい。
そうすると、今の出来高払制の医療システム3)の中では活かしていきえないという現実がある。 
中嶋:へーーー。
まぁそれは、患者からするとありがたい話というか・・・。
向野:そうです。(笑)
だけどね・・・。
中嶋:点数にしたらめっちゃ低いみたいな?
向野:そう、低いです。
というか、まぁ例えば再診料の中に含まれる、初診料の中に含まれる形になってしまう。
中嶋:ふーん、なるほどですね。

3)出来高払の医療システム
 出来高払いとは、診察、手術、注射、検査など一つ一つの医療行為に点数を設定し、それらを合計したものが医療費になる方式。
一つ一つの医療行為の診療内容と料金が明確で患者にとってわかりやすい。また医師からしても、必要と認めた医療サービスが補償されるので、安心して医療を提供することができる。一方で、医療サービスを積み上げたものが医療費になるため、不要な検査、不要な投薬、入院期間の引き延ばしなどによって医療機関が収益が得ようとする場合がある。また、行ってもいない医療サービスの架空請求などの悪質な犯罪行為も。
医療機関に在籍する医師の技術力によって医療費の節約、入院期間の短縮が行われた場合、患者にとってはメリットがあるものの、医療機関の経営を圧迫することにもなりかねません。逆に、腕の悪い医師が患者を診た場合、治療期間が延びれば延びるほど医療機関の利益が大きくなることになってしまいます。
このように、医療機関の経営努力や医師の技術力が治療費に正当に反映されないという点が「出来高払い方式」の大きな問題といっていいでしょう。
日本ではこの方式が一般的に採用されてきました。患者にとって親しみやすくてわかりやすいというメリットはあります。
これに対するのが、包括払いです。包括払いは、一般的な投薬、検査、画像診断などをどれだけやっても支払額が変わらない方式。「まるめ」とも呼ばれます。現在、入院医療では包括払いが多くなりました。
2つの違いは、「単品注文」と「食べ飲み放題」の違いのようなものです。

次回につづく・・・


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