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ツボでいきいきー東洋医学よもやま話ー

004_最新の脳科学から迫る経絡の謎

ツボを理解する上で重要な経絡という情報伝達系がどのような仕組みになっているかは、現在に至るまで謎のままだ。しかし、1996年に発表された研究はその仕組みの一端をうかがわせている。

研究で取り上げられた患者は、列車事故で右腕の肘から先を失った青年。
”切断された手がある”という感覚が、青年にはあざやかに残っており、歩く時には他の部位と合わせて動いたという。
さらに、時々、発作的に痛みが生じたことから、青年の指示に従って、失った右手の”合谷(ごうこく)*”付近に鍼治療を施した。空間に鍼を打つまねをしただけなのに、赤外線センサーで物体の表面温度分布を計測し画像化するサーモグラフィーで体を観察したところ、合谷が所属する経絡のルートをなぞるように体温の変化が起き痛みも瞬時にとれたという。

青年のケース以外でも、存在しない手足の痛みがしばしば患者を苦しめるという事例が、医学専門誌にも数多く報告されている。幻の手足が幻の動きをしており、幻肢と呼ばれる。

カリフォルニア大学サンディエゴ校の脳認知センター所長のラマチャンドラン博士は、著書「脳のなかの幽霊」の中で、脳をだまして、幻肢を忘れさせる実験について触れている。鏡に写った正常な手の上に、幻の手を置くことで、幻肢と痛みを魔法のように消し去ることができるという。

最新の脳科学理論が読み解いてきた幻肢体験のメカニズムと経絡との関わりを研究することが、経絡の役割を解明してくれるかもしれない。

*合谷(ごうこく), LI04:
手の陽明大腸経に所属する4番目の経穴。
左右の第1、第2中手骨の間で第2中手骨よりに取穴する。

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