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声が紡ぎだす あなたに伝えたいSTORY_01

story_01_現代医療、西洋医学の中での東洋医学

向野:インタビューにあたり、改めて自分のことを整理してきました。
中嶋:こういうお話しを、どなたかと対談のようなかたちでする機会は結構あったりするんですか?
向野:いやー・・・前やったのは、雑誌:鍼灸ジャーナルくらい。
あとは記憶がないかなぁ。
鍼灸ジャーナルの対談は、鍼灸師でジャーナリストの松田博公氏と私で相当時間かけて行って、その中から必要なところを文章化したんです。
中嶋:必要なところを文章化して、読み物としても?
向野:はい、読み物になったんです。
中嶋:あー、読み物になったんですね。
向野:それで、鍼灸ジャーナルに掲載された対談は、他の著名な先生方の対談も集めて対談集「日本鍼灸を求めて」1)として出版されました。
それが結構売れましてね。海外でもドイツなどは翻訳したいという申し入れがあるというのを担当者から聞いたたことがありますけど。
鍼灸ジャーナルの対談シリーズにはいろんな人が出てくるから、その中でもセレクトして面白そうな話を取り上げて本を作っているんですよ。
中嶋:それ、どんなテーマの本なんですか?
向野:鍼灸に関しての本です。
鍼灸を研究する人というのは、僕は「今の医療の中の“アウトサイダー”」という表現をしているのですが、ジェフリー・ダン2)氏は、「鍼灸師は、マーベリック(烙印を押されていない離れ牛)でなくちゃ」と表現しています。

1)日本鍼灸を求めて〈1〉松田博公著 緑書房 ISBN978-4-89531-847-1
2008年〜2013年に緑書房から刊行されていた雑誌「鍼灸ジャーナル」の中で、ジャーナリストで鍼灸師でもある松田博公氏が、鍼灸界を中心に多方面で活躍するキーパーソンに迫った対談の中から、厳選された対談がまとめられたい一冊。ゲストは、傳田光洋、藤本蓮風、吉川正子、向野義人、スティーブン・ブラウン、ジェファリー・ダン。
2)Jeffery Dan(ジェフェリー・ダン)
米国鍼灸師、医療人類学者。医療人類学の研究で日本に滞在し、武道、指圧、整体などを学んだ経験がある。現在、コロラド州で鍼灸治療を実践する傍ら、日本鍼灸の普及に貢献している。

中嶋:烙印されていない牛?
向野:うん。
そういう人でないと、こういう領域、鍼灸や東洋医学の研究はできないというようなこと。
中嶋:へー。
向野:だから正規のルートでやろうとすると、なかなか研究も仕事も進まないという。
正規の組織の中、つまり西洋医学の中で鍼灸の研究をやるということ自体が非常に大変なことなんです。
やらせてもらえないという事情があって・・・。
中嶋:大変なところというのは、どの辺なんでしょうか?
向野:大変なところはですね、まず“ポジション”をとることが難しいということですね。
その仕事を標榜してポジションをとるというのがものすごく難しい。
例えば、「私は鍼灸をやることが得意です!」ということでポジションは取れないということです。
大学病院であれば、病院の中で泌尿器科とかいろいろ診療科・部/医局と呼ばれる所属があるんですが、そのどこかに所属しないと大学人としてのポジションがないんです。
もしもそのポジションが無い中で、いかにして自分の考えていることを実現していくかということになると、西洋医学の領域であれば何とか頑張って上に上がればなんとかなるけど、仕組みそのものがないところでやろうとすると結構・・・(苦笑)・・・難しい。
中嶋:うーん・・・(悩)。
先生、鍼灸自体があまり西洋医学的ではないので、そういう今の医学の中で展開することが許されていないということですか?
向野:そうそう、そういうことですね。基本的には許されていない。
だけど患者さんにとってはいいものだから(苦笑)。
これだけ役立つものを何とか広げようとすると、どうしても無理を重ねないといけないというか・・・。
中嶋:うーん・・・
アプローチとしては、そのうち鍼灸の技術が西洋医学的な科学的な根拠でもって西洋医学に組み込まれて、“市民権を得る”とかそういう時が来る可能性もあるんですか?
向野:可能性はあるんですが・・・
実はその・・・西洋と東洋のものの捉え方っていうのがかなり違いますからね。
それで、もしかしたら別の形で発展した方がいいのかも。
今の医療の中でどういうふうに役立てられるかっていうのは非常に難しいのかもわからない。
中嶋:ほーーーう!
じゃぁもう医学部の中の泌尿器科に所属しながら鍼灸を研究するのではなく、医学部ではないところで鍼灸の研究学部みたいのができて、そこで思い切り研究とかですか?
向野:まぁそういうことも大事かもわからないけど・・・
私は医学部で学んでる人、その人たち全員にこういう”ものの考え方”を知っておいてほしいと思う。
中嶋:”ものの考え方”ですか?
鍼灸のものの考え方、東洋医学のものの考え方と西洋医学のものの考え方、根本的にどこが違うんでしょうか?

次回につづく・・・

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