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レコード棚を総浚い #68:『Daryl Hall & John Oates / Along The Red Ledge(赤い断層)』

1978年、プロデュースにデヴィッド・フォスターを迎えてリリースされた『赤い断層』

タイトルのRed Ledgeには、「人生の転機」という意味だが、音楽的な転機を企図して制作されたアルバムということなのだろう。
ブルー・アイド・ソウル路線を踏襲したA面と思い切ったロック路線に舵を切ったB面で構成されている。

この「転機」を豪華なゲスト・ミュージシャンが支えている。
ジョージ・ハリスン、チープトリックのリック・ニールセン、キング・クリムゾンからロバート・フリップなどなど。

『サラ・スマイル』や『リッチ・ガール』で、すでにソウル界隈に地歩を固めたところからの大きなチャレンジにはどのような意図があったのかは、わからない。
だが、このチャレンジがなければ、名盤『H2O』も生まれていないだろう。

この時点ではまだ既定路線のソウルサイドに分があり、ヒットシングル『イッツ・ア・ラーフ』から『想い出のメロディ』の流れは実に彼ららしくて好ましい。
終わってしまった愛を、特別で永遠に続くものだと思っていた自分を大笑い(=ラーフ)だね、と自嘲するこの『イッツ・ア・ラーフ』という曲には、何歳になっても青春の痛みを蘇らせてくれるところがある。

大昔まだ若かった頃、(たぶん)雑誌の記事かなんかで、「彼女とドライブに行くときはホール&オーツをかけてはいけない。ハンサムなダリルをイメージさせて自分と比較させるのは得策でないから」と書かれていたほどのモテ男イメージがあるダリルだが、彼の書く歌詞には少なからず痛みを伴うセンチメンタルがあり、僕はそういうところが好きなんだ。

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