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ジャケ買いCD 『CAVATINA / 村治佳織』

いつもようにCDショップを徘徊していた僕の目に、目にも鮮やかなグリーンのポスターが飛び込んできた。そのポスターから白いシャツを着た少女が、悪戯っぽい目で僕を見つめていた。

ポスターを見ると、どうやらクラシックギターの新譜発売のようだった。クラシック音楽にはそれほど強い関心はなかったはずだが、なぜだかその表情が気になって、少し高価なポスターを買うつもりで、そのCDを買った。

高校生の時、親しかったベーシストが『禁じられた遊び』を教えてくれて、少し練習したことがあったくらいの知識で、そのCDを聴き始めた。
いつも聴いているロックやポップスのCDだと、自分の楽曲作りの参考になるところはないか、という耳で聴くわけだが、この聴きなれない現代ギターの楽曲では、そのような不純な気持ちが生じない。
僕は、なんだかずいぶん久しぶりに、穏やかな気持ちで「音楽」を聴いたような気がした。

それからしばらくして、偶然『情熱大陸』で村治佳織さんを見た。アランフェス協奏曲の作者であるホアキン・ロドリーゴを訪ねて、彼の作品を弾くという企画だった。

アランフェス協奏曲には思い出があった。
予備校時代勉強に行き詰まり、深夜ヘッドフォンでかけっぱなしにしていたラジオから、ジム・ホールというジャズギタリストがカバーしたアランフェスがかかった。
その美しい楽曲に触れた途端、なぜか郷里に心が飛んで涙がこぼれ落ちた。

あの曲を書いたのはこの人だったのか、という感慨と、その大作曲家に対峙して怯むでもなく自分の音楽を表現しきった彼女に特別なものを感じた。

それ以来、村治佳織とロドリーゴは僕にとって特別なものとなり、彼女のアルバムはすべて揃えてきた。
そのきっかけを与えてくれた『CAVATINA』CDはいつも部屋に飾ってあり、聴く用の高音質CD(XRCD)も買ってある。



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