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NovelJam2021 「えにし独楽」を読んで

NovelJam2021
鷹村アキラ著: 「えにし独楽」を読んで

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この作品は当日のプレゼンを聞いて、面白そうだと思った期待の一冊。
時代物の小説というのを私はあまり読んだことが無いものの、
バカ真面目で、お江戸でお役目に就いたばかりの田舎侍と
荒々しい寺侍崩れの浪人のコンビは、ドラマ「相棒」をイメージさせ
否応なしに期待感が膨らんでしまう。

冒頭、仁之助が食べている夜鳴き蕎麦という響きがどうにも美味そうで腹が減る。屋台で食う物ってのはなんでああも美味く感じるのだろう。
昔よく通った焼き鳥屋を思い出してしまった。食いてぇなぁ。

夜鳴き蕎麦の婆様を探しながら、奉公人から受けた破れ寺を改める依頼を受けるあたりで、だんだん2人のキャラクターが見えてきた。世渡りベタでバカ正直な仁之助を頭の切れる禅次がコントロールしていく。

寺を探っていく中で気味の悪い盲目の男が登場し、雰囲気は一気に緊迫してきた。さらにそこへ夜鳴き蕎麦の婆様が「たたりぼとけ」に願いをしに来る場面などは、これまでの流れからなんとなく予感していたものの、「きたきた、これで話が繋がっていくぞ」とほくそ笑んでいたが、そこから続く奇怪な情景には少々息を飲んで一気に読み進めた。仁之助が切るのを躊躇ったあれが「たたりぼとけ」だったのだろうか。

このコンビで、これから次々と江戸のミステリーを解明するような
シリーズになれば面白いんじゃないかと考えながら楽しませて
頂きました。事あるごとに様々な問題に首を突っ込む仁之助と
それを「おめえさんは、また面倒事に首突っ込みやがったのか」
と悪態を付きながらも切れる頭で事件解決に向かっていく。
回を重ねることで、より2人のバディとしての絆が強くなっていく
さまが描けるのではないかと。

プレゼンで感じた期待に裏切られることなく、たのしく読ませて
頂きました。1点、台詞回しのせいなのか、現代劇に感じるところが多く、
「でやんでぇ」と書けとは申しませんが、もう少し江戸を味あわせて頂ければというのは私の我儘にございます。

これを読んでもし気になった方がいらっしゃれば
こちらからぜひお願いします
https://bccks.jp/bcck/170185/info

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