ヤなことそっとミュートと私(起)

初めての印象は実はあまり良くなかった。
パステル調強めのアー写にティザー映像もふわふわした楽曲バックに白いワンピースを着たメンバーが歩いており訳が分からない。  

元来ロック、主に邦ロックが好きだった自分にとってはあまり刺さらなかった。

名前も何だか変だ。恐らく今や東京最凶と呼ばれるまでになった彼のグループをもじったのだろうが、それにしても中々口に出すのも恥ずかしい。

これが僕がヤなことそっとミュートに一番最初に抱いた感想だった。

当時自分はオタちゃん(BELLRING少女ハート《以下ベルハー》のオタクの総称)でありそのベルハーの楽曲制作担当チームが新しいアイドルグループを作るという事で関心はあった。

何を隠そうその中の一人であるタニヤマヒロアキ(敬称略)が僕が人生で一番好きと言っても過言では無いasthmaやそれに次いで好きな憂鬱のグロリアを作った人というのもあって期待している部分もあった。

だが先行公開されたアー写やティザー映像が余りにベルハーからかけ離れたものだったのもあり拍子抜けというか全く毛色が違うグループなんだなという感想しか無かった。

お披露目前だったので当たり前ではあるが、僕はまだヤなことそっとミュートの真の姿に気付いていなかった。

そんなこんなでお披露目も大盛況に終わったと風の噂で知りつつオタ活に励んでいたある日、一人のオタちゃんからこう質問された。

「キりンさん、ヤナミュー観た?」

「いや、まだですね……どうでした?」

「格好良いよ!」

その感想は自分にとって意外だった。未だ例のアー写とティザー映像の印象が強かったからだ。

今思えば「ヤナミューは格好良い」という感想は当時Twitterに溢れていたと思う。ただ今程に「住人」でなく知り合いのオタクも数える程度しかいなかった当時の自分としてはその感想は鮮烈であり一気に興味が湧いてきた。

ただ当時は今以上に現場でのファーストインパクトを大事にしていたのもありYouTubeに上がっているライブ映像も一切観ず近い内に観れる日を楽しみに待つ事にした。

そしてその日は程なくしてやってきた。

2016.7.24

https://ameblo.jp/gajumalu/entry-12184189800.html 

この日の事は上記ブログに詳しく書いてあるがヤナミューに関してはほんの数行なのでここでは補足説明的にそこに焦点を当てて書いていきたい。

絶望音楽祭とはベルハーが対バン相手が見つからなかった時に行われる単独公演と記憶している。長尺なので普段対バンでは中々観られないレア曲もやるので割とオタちゃんからの人気も高い。そのイベントのオープニングアクトとしてヤナミューが抜擢されたという訳だ。

前述の通り一切ライブ映像を観ずに来て開演前オタちゃんの一人から「今日で12現場目」と聞かされていたのもあり期待と多少の不安を持ちつつ開演を待った。

そして流れるヤなことFriday。ティザー映像で使われていたあの曲だ。思えばタニヤマさんが作った楽曲は結局この曲だけだった。出囃子的な位置のこの楽曲は対バン相手の初見オタクの気を惹くに充分であり、あの日の自分もこれから何が始まるのだろうとステージを注視しつつ思っていた。

そして流れるギターリフ。

ティザー映像とは全くかけ離れた、自分が完全に好きなやつ。

それは正しくロックだった。

ツキノメ。今では推しの推し曲でもあるこの歌は初見の自分に衝撃を与えるに充分だった。

なんだこれは。全然違うじゃないか。寧ろ全然まったく自分が大好きなやつじゃないか。

混乱する頭を置いてけぼりにするかのようにいつの間にか終わっており、次の曲が始まった。

see inside

僕はドアウェー対バンの一曲目でこれが来た時にガヤガヤしてるピンチケや最前管理が一瞬鼻白む瞬間が大好きです(突然の感想)(性が悪い)

深淵を這うかのように展開する楽曲。一転最後は海上に出たかのように晴れやかに終わる。この曲が終わる時点で大好きが確定していたと思う。

続くのは、これは名前も事前に聞いてたし唯一何かの映像で一瞬聞いた事ある楽曲

燃えるパシフロラ

初期ヤナミューの主力の一つでありなでちゃんの「火祭える」は微笑ましいを通り越して豪快でしか無いし一生擦っていきたい(歌会漢字ドリルの成果が出ていたようで何よりです)

ちんさん(たけちんさん。古のオタちゃんでありヤナミューに於けるMIXを創り上げた人物)のMIXを耳にし轟音の中歌い上げるなでちゃんに目を惹かれた。滅茶苦茶格好良かった。そして次に来たのが

Done

言わずもがな未来永劫永遠無窮のヤナミュー楽曲での一番好き曲(実はこの時はどちらかというとカナデル派でした)

あーこれはもう間違い無いや、両手を挙げて降参です。というか絶対また観たい。そんな思いを抱えた僕に向けて最後に放たれたのが

カナデルハ

もう笑っちゃった。何これ? デビュー1ヶ月ちょいってマ? 本当どんだけのクオリティとパフォーマンスなの?? 

ライブがあっという間に終了しメンバーが捌けていった後も暫く自分は圧倒されっぱなしだった。

期待以上というか完全に予想の範疇外。完全にドルオタ以前の僕が好きだった音楽が鳴っていた

ベルハーが始まっても最初の方は衝撃に打ちひしがれていた(途中からしっかりブチアガったのは上記ブログの通り)

そして、ライブは大盛況の内に終了となった。そうなると、ここから先は特典会だ。

正直最初は誰にも行く予定は無かった。既に撮りたい相手は決まっていたからだ。そしてその娘の列が大抵滅茶苦茶長い事を知っていたからだ。

あーやんこと柳沢あやの。

BELLRING少女ハートという異端の中にして王道。故に異端の存在。

彼女が僕のベルハーの推しだった。故に僕は彼女とチェキを撮るべく列に並ぼうとした。

ただ如何せん長い、いや、流石に長過ぎる。

時間は既に9時を回っていた。当時はコロナ前だったので終演後物販9時開始はザラにあったのだ。

こちらのリミットは品川22時54分。この最終新幹線に乗り遅れた時点で死が確定している。故に余裕を持っても10時までには出たい。

ただ流石主催、そしてみずほこと朝倉みずほと人気を二分するだけあって列が何回も折り返している。これは流石に絶望的だ。

早々に判断した僕はフロアを出て退散すべく入り口の階段に向かおうとした。

その時オタちゃん仲間から声を掛けられた。

「キりンさん、ヤナミューと撮ってよ!」

時計を見るとまだ20分もいっていない。10時には渋谷から出れればいいから余裕はある。幸い列もそれほど長くなさそうだ。一人くらいなら余裕で行けるだろう。そう判断した僕はライブを観る前から、正確にはあの最初のアー写時点で良いなとなっていた娘の列に並んだ。

その娘こそ僕のヤナミューでの推しとなるなでちゃんことなでしこその人である。

実は彼女がなでしこだと認識とした時点で彼女とは浅からぬ縁がある事を知った。まあそれは前世()に関わる事だし余計長くなるので述べませんが(そもそも古のオタクには周知の事実)

初接触で覚えているのはチェキの僕の顔がまあまあ事故っていたのともう一つ。

前述の通り僕はタニヤマさんが手掛けると知ってヤナミューに興味を持った。

だからこう言った。

「タニヤマさんの楽曲が滅茶苦茶格好良くて……」

「あ、タニヤマさんじゃないんですよー」


「は?」 


「あ、ちなみにこちらがタニヤマさんです」

あろう事かチェキを撮ってくれたスタッフがタニヤマさんその人だった。

高速で会釈してその後二、三やり取りをしてその場を去った。

WWWを出て駅を向かう中で頭を占めていたのはこの言葉だけだった。

「ヤなことそっとミュート  やばい」



流石に長くなってしまったので後何回かに分けて書く事にします。

目を通して頂きましてありがとうございました。







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