ビックモーター事件について


1 初めに

公に事件が公表される以前より、ネット界隈ではあまり良いうわさを聞いていなかったが、不正発覚が表沙汰となりコンプライアンス遵守が当たり前の世の中となった現代において、なぜこのような事件が発生してしまうのかに興味を持ち調べてみました。

2 不正発覚経緯について

2021年秋にビックモーター社員が損保の業界団体に「上長の指示で過剰な自動車の修理をし、その費用を保険会社に請求している」という旨の内部通報した事が不正発覚の発端となりました。

3 さまざまな不正について

3-1 過剰な自動車修理による不当請求について

ビックモーター社員より内部告発があり、その内部告発を受けてビッグモーターと取引のある、損保ジャパン、東京海上、三井住友海上の保険会社3社がサンプル調査を実施。その結果、全国に33の整備工場にうち25の工場で、水増し請求の疑いがある案件が80件見つかったという。その後調査が進み、現在は33の整備工場で、300件超の不正が発覚しています。しかし、ビッグモーター側は手続きミスなどと報告したため、損保側は納得せず厳密な調査を求め、損保会社3社が不祥事の確証を掴んだことや、マスコミ等の外部からの指摘もあり、2023年1月に特別調査委員会を設置。
特別調査委員会の調べにより、とても常識では考えられない不当請求を行っていた事が明るみになりました。

3-2 保険金水増し請求できる運用構築

水増し請求が出来るようになった背景には2019年4月より損害保険会社「損保ジャパン」が事故車修理の「完全査定レス」の仕組みを出向者中心に練り上げていた。
完全査定レスとは、損害査定人(アジャスター)による修理見積もりのチェック工程を完全に省略し、ビッグモーターの見積もりをほぼノーチェックで通して保険金を支払う仕組みのことである。
損害査定人のチェックを行わず、ビックモーターの見積もりをほぼノーチェックで通せるのであれば、ビックモーター側は「やりたい放題」の不当請求が出来る環境化となった。
 

3-3 水増し請求・不当請求実例について

① ひょう被害で修理依頼のあった車両をゴルフボールを靴下に入れ故意に凹みキズをつけキズの範囲を広げ板金塗装代を不正に請求。
② タイヤにネジを突き立て故意にパンクさせてパンク工賃を不当に請求。
③ 高級タイヤに取り替えたとウソをついて安価なタイヤを使い、その差額を利益にしていた。
➃ ドライバーで車体に傷つけ、不当に板金塗装工賃を請求していた。
⑤ 謎の事前費用請求・・・8万円の納車準備費用という意味が分からない費用を事前請求。「納車準備」なのに整備は一切行わない。

3-4 不正行為について

① 自動車整備士無資格者が車検整備を実施していた。
② 車検時にスピードメーターの誤差を確認する検査を行っていなかったにもかかわらず、整備記録を改ざんし虚偽の記載をして適合証を交付しました。またスピードメーター検査だけでなく複数の法令違反が確認された。

スピードメーター検査とは
スピードメーター検査とは、実際の速度とメーターの表示が一致するかを確認する検査で、車の駆動輪を速度計に乗せ、表示を確認するものです。

③ 水没車である事を偽ってお客様へ販売し、お客様が水没車と気が付き店舗へ問い合わせしたが、店側が「知らなかった」と補償なし。
➃ 自動車購入契約するまで、店舗内に3~4時間帰らせてもらえず軟禁状態

4 問題のある企業風土について

① ビックモーター社内での「環境美化」目的で各自治体の許可なく無断で店舗周辺の街路樹に除草剤を散布し街路樹を枯らして伐採していた事。
街路樹を枯らして伐採した背景として、社内ルールで店舗周辺に落ち葉一つでも落ちていたら罰則が設けられていたため。
② 店長への罰金制度

自動車保険の契約について月間目標額が定められ、目標を下回った販売店の店長が、上回った店長に現金を支払う慣行があることが3日、同社への取材で分かった」

引用元:産経新聞

目標を達成できなかった店長は、上限10万円をポケットマネーで支払わされ、目標を達成した店長たちに分配されるというシステム。
月1回の会議時に経営陣が退席した後、実績上位の店長が仕切り役となり本部からの配布表に従い、店長が現金を個人負担。
会社側は店長間で勝手にやっていたこととしていましたが、社長名で「保険選手権大会に関して」という、メールが発信されていた事実が発覚。
ビッグモーターの不祥事に関して、YouTubeで発信している元社員の中野優作氏は、店長時代に数百万円の罰金を払っていたとの事。

5 なぜ不正行為が横行したのか

5-1 厳しいノルマ制度

経営陣から、車両修理1件あたりの代金、車両パーツの粗利益の平均額を上げるようにノルマが課せられていた。
平均値が低い工場では、会議の場で問い詰められたり、降格させられたりするなど、厳しい処分が下されていた。
そうした中、保険金の不正請求行為も、ノルマ達成のための慣行として横行していた。

5-2 従業員を過度に委縮させ経営陣に盲従し、付度する歪な企業風土

現場から意見を言える環境でなく、経営陣に伝えるにも、自身の降格や職を失う危険があるため経営陣に盲従する形になってしまった。
給与制度
また、中古車業界同業他社と比較するとビックモーター社は店長クラスの幹部候補でインセンティブを含めると年収が高く、同業他社への転職も考えられない状況下であった事。

6 さいごに

調べれば調べるほど、出るは出るはの不正のオンパレードであった。
現代社会では考えられない不正ではあると思うが、氷山の一角ではないか?とも考えられる。
利益至上主義がもたらした結果、不正に手を染めた事は明確ではあるがこのような状況が明るみになった現在、ビックモーターで中古車を購入したいと思う方がどれだけの方がいるのか・・・
今後もビックモーター社の動向が気になります。





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