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平凡

白いキャンバスの網の目と網の目が交差するその中にその小さな未来は息づいていた。青い珊瑚礁の海の底、誰にも見られることのない地獄のような美しさが横たわっていた。そんな文章を書いたことがある。

吐く息を押し殺しながら深夜に文章を書いている。書いていることは嘘ばかり。なのに一切の卑下も呵責もなくただ目の前の白いエディターに文字が打たれているのを確かめている。ハイボールを片手に次にどんな文字が打たれるのかを待っている。まともじゃない。正気じゃない。そのくせしばらく経って読み返したときにどこのどなたがこんな自分好みの文章を書いてくれたのかとびっくりするような文章にお目にかかることがある。もちろん駄文だ。けれどなんだかそれが良い。美しい文章を書く人など星の数ほどいるのだから。

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390字
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アバラ通信

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