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ベルバレット

 この村がドルガン村と呼ばれるようになったのはもう二〇〇年以上も昔の話だ。一八七六年に廃刀令が出された後、多くの優秀な刀鍛冶がその役目を終えようとしていたその時、我が家の七代前の当主宗則は熱く熱した玉鋼に全く違う世界を見ていた。

 刀工は玉鋼から魂のこもった武器を打つことができる。それはどんなに時代が変わっても変わることはない。それが刀という一身に留まる必要がどこにあるというのだろうか。当家は代々に渡り生殺与奪のそれを作り続けてきた。今ここに魂のこもる武器をつくり続けることを改めて誓う。魂を込めるのは殺のためではなく護身する為と知れ。

 こうして三年の研究を経てようやく最初の試作機であるハガネ零号が完成する。最大装填数六発の回転式拳銃。刀を抜くように一瞬で抜き出せるようにするため、弾丸の射出口上部に在るはずのフロントサイト照準は存在しない。銃身に細く長い溝が掘られておりそこから対象を覗くようになっている。溝の先端には3つの穴の空いた薄い漆黒のプレートが差し込まれておりそこで照準の調整ができる。折れず、曲がらず、切断せしめる。血の滲むような研鑽によって何世代にも渡って刀を作り出してきたその血はこの世に唯一無二の銃を作り出した。村に残っていた他二つの刀鍛冶もこれに習い、それぞれ独自の趣向を凝らした回転式拳銃を作り出していく。こうして完全受注生産の手工回転式拳銃によってこの村には世界中のドルが集まるようになり、いつしかドルガン村と呼ばれるようになっていった。

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