#1【CMソングコラム：もうひとつのJ-POPたち】🎶きっと君は来ない🎶

まもなく、令和”初”のクリスマスがやってきます。「あなたのフェバリット・クリスマスソングは？」と聞かれて、どんな曲が浮かびますか。

やっぱり、クリスマスは、ココロときめく

古くは、ビング・クロスビーの歌で有名な「ホワイトクリスマス」やジョンレノンの「ハッピークリスマス」、ボクの世代だとワムの「ラストクリスマス」なんかも泣けてきます。J-POP系だと竹内まりやの「すてきなホリディ」やB’zの「いつかのメリークリスマス」をあげる方も多いのではないでしょうか。そういえば、夏のイメージの強いサザンオールスターズにも、「白い恋人達」とか、「クリスマス・ラブ（涙の後には白い雪が降る）なんかもありますね。

今年も、街中は様々にデコレーションされ、イルミネーションも増えました。やっぱり、昔も今も、ココロときめくムードが漂います。そんな世の中を演出する要素として、今年も聞こえてくるのがこの名曲。
いま聞いても、オンエアされた当時の甘酸っぱい思い出が脳裏を走り、また、”キラキラしたクリスマス感”が醸し出されますよね。

ということで、＃1コラムのテーマは、今でも僕らの心をときめかせる年末の風物詩と言える　このCM音楽をふりかえります。

「クリスマス・エクスプレス」という名のXマスプレゼント

先日他界された中曽根総理時に実現した日本国有鉄道民営化（当時、国鉄と呼んでました）に伴い、１９８７年に誕生したJR東海。それを機に、ドル箱路線であった「東海道新幹線」自体を「人と人をつなぐコミュニケーションメディア」と捉え、さまざまな出会いと別れを叙情的に描いたCM展開「エクスプレス」シリーズがはじまりました。「ファイト！エクスプレス」「ハックルベリー・エクスプレス」「マイコのエクスプレス」など、グラフィック広告も含め、秀作揃いでした。

そんな中、もうすぐ平成になろうとする1988年冬、「HOME-TOWN EXPRESS」キャンペーンのクリスマス特別バージョン（X'mas編）として、当時15歳の深津絵里さんを主演に起用しオンエア。キャッチコピーは「会うのが、いちばん。」。ナレーションコピー「帰ってくるあなたが最高のプレゼント」。
当然、スマホなんか無かったこの時代。フジテレビ月９に代表されるトレンディードラマなどでも描かれていた「遠距離恋愛」をテーマとして、若者を中心に大きな反響をよびました。スマホも、ケイタイも無い時代、“相手の声を聞く”、“実際に会う”、ということがどれほど貴重な時代だったか。メールやSNSが当たり前になった今だって、やっぱり、直接会うことが大切ですよね。「会えば、わかる」じゃないですが、伝わるものが違いますからね。

翌1989年からは、CMシリーズタイトルも「クリスマス・エクスプレス」へと変更。以降、牧瀬里穂さん（1989）、高橋リナさん（1990）、溝渕美穂さん（1991）、吉本多香美さん（1992）といった面々がこのCMから大きく飛躍してゆきます。初回も含め、「クリスマス・エクスプレス」シリーズが展開された5年間は、ちょうど日本経済のバブル絶頂から崩壊までの時期とぴったり重なります。私ごとで恐縮ですが、当時、担当していたクライアントさんから、あんなCMをお願い、とよく言われて、困ったことを思い出します。

さて、本題のCM音楽は、ご存じ、山下達郎さんの「クリスマス・イブ」。1983年にアルバム「MELODIES」からシングルカットされた１曲。（当時は、CDではありません。あくまでのレコードです。）このCMに使用されたことがきっかけで飛躍的に認知が高まり、翌1989年には発売から6年6ヶ月目にしてオリコンシングルチャート1位を獲得。これは当時の最長記録でした。1987年以来、実に３０年連続オリコンTOP100入りという記録を更新。今でも、この曲が聞こえると、柱の陰に隠れた牧瀬里穂さんの、嬉し恥ずかしいような表情・演技を思い出しますが、私だけでしょうか。以下に、歌詞の一部を引用しておきます。

＜楽曲＞歌：山下達郎　作詞：山下達郎　作曲：山下達郎
＜タイトル＞クリスマス・イヴ

雨は夜更け過ぎに　雪へと変わるだろう
Silent night、Holy night
きっと君は来ない　ひとりきりのクリスマス・イヴ
Silent night、Holy night

CM音楽は、CMプランのために書き下ろしたオリジナル曲だけではなく、CMの世界観を広げ、印象づけるような、こうした既存楽曲との出会いも大切ですね。     また、次回をお楽しみに。

【参考書籍】
●ACC「CM 殿堂」（出版：宣伝会議）
●クリスマス・エクスプレスの頃（出版：日経BP）
●Wikipedia ほか

　　　　　　　　　　＃1【不定期連載】僕らの何％かは、CMソングでできている