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いるはずのないきみがいた

仕事の帰り。

サンドイッチを片手にチャリをこいでおりますと、

前方、民家の前に子猫らしき影。

ジッとして動かない影。



子猫にしては、私のチャリンコが今まさに差し迫っているのに警戒してる雰囲気もなく全く動かない。



あと二メートル!




というのに動かないその影。






怪我してる猫なのかなあ、、、

と思いながら、その影の真横を通り過ぎた。

それでも微動だにしない影の正体を見て、

私は食べていたサンドイッチを吹き出した。




そして急ブレーキで止まり振り返った。



私は我が目を疑った。


眉をひそめて、その物体に近付いた。



間違いない、、、、


こ、これは…






ウサギ!!!!







ウサギがジッと道路にいる!!






『う、うわあああ………』



なぜか軽く引いている私。




チャリンコをおりて、サンドイッチをモグモグしながら近付いてみる。



逃げない…




ウサギの真横に立って、これみよがしにサンドイッチを食べてみる。


逃げない…




しゃがんでみる。




逃げない…




モグモグしながら撫でてみる。



逃げない…


わお。



サンドイッチは食べるかしら。



いや、ウサギは草食だ。


犬や猫のように欲しがり屋さんとは訳が違う。



見つけてしまったものの、

ど、どうしよ?



感情が全く読めないウサギにちょっと恐怖心。



すると、突然の殺気!!!



バッ!!と、くノ一並みに俊敏に振り向くと、



後ろの車の下から太った白い猫がめっちゃ見ていた。




怖い…めっちゃ見てる。




顔にかかった陰が、猫の顔面を暴力的に映し出している。


そんな猫も私と気持ちは同じだろう。


『コイツはなんなんだ、どっから来て、なんでここにいるんだ』




お互い妙なアクシデントに遭遇しているという事で、なんとなくシンパシー。


私『あんた面倒見てやってくれないか。』と猫に助けを求める。


『バカ言うなよ。』

猫の顔面はそう言った。



うううう〜ん

家から締め出されたのか。


脱走したは良いが、外の世界はコンクリートジャングルだという事実にうちひしがれていた最中だろうか。



ウサギがいる後ろの家にいちかばちかでピンポンしてみるか。

連れて帰りますか。


いや…うちはペット不可。

いや、鳴かなさそうだからバレないか。



ううううん…

なんとなく立ち上がり、目を向けた先には、

犬を散歩中のお兄さんがこちらに向かって歩いて来ている。


ヤバい!犬だ!ウサギを守らねば!



と、オタオタ思ったら、


散歩中の犬とお兄さんの横を、兎が猛ダッシュで駆け抜けて行った。



お兄さん、猫か犬かと思ったか、走るラビッシュをほんわか顔で見る。


が!


走る姿の異様さに違和感を抱いて、兄さん目を見開き二度見!!!


私と兎を、交互に見る。


兎は幻のように闇夜に溶けてった。


さらに何事もなかったように自転車に乗る私を見て、


兄さんと犬の散歩に不穏な空気が流れているのを背中に感じた。


明日、兄さんは会社で謎の兎と謎の女の謎なシチュエーションに遭遇したことを誰かに話すのだろう。

どんなふうに話すのだろう。



そしてわたしは、明後日の方へとチャリをこぎだしたのだった。

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