柊野

お久しぶりです。
長編小説を考えるにあたって、ふと僕の地元のことを思い出したので書き記しておきます。

まず、みなさんは「田舎出身」と聞くと、どんな人を想像しますか?

明るくて優しくて純粋で穏やかな人ですか?

鼻をすする時に、鼻の下を指でこすって笑うような。そんな少年をイメージしますか?

僕の生まれた育った場所の名は、
「鹿児島県薩摩郡さつま町柊野(くきの)」

約85世帯 総人口 約130未満

柊野の総人口で、座・高円寺もユーロライブも埋まりません。

世間が5Gで盛り上がってる中、柊野は今年遂に光回線が通るかもしれないという話題でみんなハイタッチしてます。

僕が、中学生になる頃、町村合併でさつま町になりました。

それまでは、「鹿児島県薩摩郡宮之城町柊野」でした。
柊野は、宮之城町の飛び地と言われていました。

飛び地とは、宮之城町と繋がっていなくて別の町を挟んで柊野があるということです。

わかりにくい方もいるかと思うので例えると。

みんなで鳥貴族に呑みに行くとしましょう。
案内された席は、隣の魚民を通らないといけない席なのです。
鳥貴族のトイレに行く度に、1回「ごめんなさい。失礼します。」って言いながら、魚民を通らないといけないのです。
もう魚民じゃん。って何回も思い、何回も思うことをやめました。

近くのコンビニに行くのに、車で15分かかります。
スウェットでコンビニに行ったことがありません。
コンビニはお出かけです。

柊野には、信号機がありません。
横断歩道はあります。
小学生の時に、町で買い物するという授業があります。
その前日に、手をあげて横断歩道を渡る練習をするためです。

自動販売機が、小学5年生の時に初めて設置されました。
山を切り開いて石を採る採石の仕事の方々のためです。
柊野に、自動販売機のルーレットの数字が揃う音が鳴り響くたびに、柊野の山が禿げていきます。

冬になると家の庭に、6.7匹の鹿の家族が降りてきます。
僕は、父・母・3歳下の弟・10歳下の弟からなる5人家族です。
二世帯なら世帯主を鹿に奪われてもおかしくありません。

僕の地元の先輩は、原付で走っているところを山から走って降りてきた鹿に轢かれました。

猿の一団が、みんなの墓の墓石を投げ回ったことがあります。

僕の同級生は、女の子2人です。
僕の弟達は、両方同級生がいません。

僕の父は、小学校のPTA会長を7年連続でやりました。
3歳下の弟が小学校を卒業する時に、父はPTA会長をしていました。
10歳下の弟が小学校に入学してくるのは、再来年です。
来年は、小学校に自分の息子はいません。

ところが、どうせ息子が再来年入学してくるんだからという理由で、1年間自分の子供のいない小学校のPTA会長を勤めあげました。
周りの保護者も校長先生も教頭先生も用務員の先生も誰も疑うことなく。

僕が田舎出身と聞くと。
みんな口を揃えてこう言います。

「なんでそんな攻撃的な性格してるの?」
「なんでそんなひねくれてるの?」

はあ?

「なぜ田舎出身だと攻撃的な性格にならないの?」
「なぜ田舎出身だとひねくれないの?」

ここまでで穏やかになる要素ありましたか?
優しく純粋になりえる出来事がありましたか?

不便、開拓の寂しさ、野生の脅威以外に何がありましたか?

まだわからない人には。

次回、全校生徒13人の柊野小学校で田舎の苦労をお教えしましょう。




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