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【東京六大学野球】FIPで見るプロ入りに必要な成績(投手・2023年版)【ドラフト】

 こんにちは、宜野座パーラーです。(もはやオフシーズンとはいえない時期になりましたが)今オフシーズン2本目の記事です。

 ここでは2022年版に引き続き、「FIP」という指標に着目し、東京六大学の投手がプロ入りするためにはどの程度の成績が必要なのか、についてまとめました。2023年ドラフトの結果を受けたアップデート版の記事となります。

1.2022年版と変わらず、「FIP3.5未満」がプロ入りの目安

 2023年ドラフトは大学生投手が豊作と言われ、現にドラフト1位で8人もの大学生投手が指名されました。特に、東都大学連盟から7投手がドラフト1位指名され、「東都7人衆」として話題を集めました。

 東京六大学の投手も、他連盟の投手に負けず劣らずの実力者が揃いましたが、全般的に高レベルのドラフト候補が多かったこともあり、結果的には石原勇輝(明大ー2023年ヤクルト3位)と村田賢一(明大ー2023年ソフトバンク4位)の2投手のみの指名にとどまりました(図表1)。

図表1:2023年ドラフト結果(投手)

 図表2はFIPを0.5区切りにしたプロ入り率の推移です。2023年は前述の通り、東京六大学の投手にとって厳しい環境ではありましたが、その結果を踏まえたとしても、プロ入りの目安が「FIP3.5未満」という結論は変わらないでしょう。

図表2:プロ志望届提出人数とプロ入り率(投手)

 図表3はNPB入りした投手のFIPのランキングです。石原が2.37で9位、村田が2.56で15位に位置しています。指名漏れした投手に着目するとFIPはそれぞれ、蒔田稔(明大ーJFE東日本[予定])が2.44、加藤孝太郎(早大ーJFE東日本[予定])が3.16、池田陽佑(立大ー三菱重工East[予定])が3.29、尾﨑完太(法大ーセガサミー[予定])が3.43と、これら4投手はNPB入りしてもおかしくない成績を残しながらの指名漏れとなり、やはり大学生投手が豊作だった影響がうかがえます。

図表3:NPB入り投手FIPランキング(赤字は2023年指名投手)

2.FIPとは

 この記事で取り上げている「FIP」という指標ですが、野手編と同様、2022年の記事で取り上げているので割愛させていただきます。詳しくは以下の記事の「2.下準備:FIPとは」をご覧ください。

3.リリーフ左腕・石原、精密機械・村田がNPBへ

 ここからは、2023年にプロ志望届を提出した(2024年卒業予定の)投手の成績を振り返ります(図表4)。

図表4:2024年卒業投手

 各大学のエースの名前が並ぶなか、主にリリーフ登板で安定した成績を残し、NPB入りを決めたのが明大・石原です。140キロ台後半の直球と変化球のコンビネーションで三振を奪える左腕で、特に短いイニングを任されたときの安定感は随一でした。通算の奪三振率は8.60ながら、リリーフ登板時に限ると10.54と、図表3に挙げた投手の中では大石達也(早大ー西武)の12.60、木澤尚文(慶大ーヤクルト)の11.35、早川隆久(早大ー楽天)の11.32、柳裕也(明大ー中日)の10.55に次ぐ好成績でした。

 残りの5投手は先発起用が中心のエース格の投手でしたが、NPB入りしたのは明大・村田のみという結果になりました。村田の特徴は何といっても精密機械ばりのコントロールでしょう。直球の球速こそ140キロそこそこですが、通算の与四死球率は1.80と、1試合(9イニング)で2個も四死球を与えないというほどの優れた制球力の持ち主です。ちなみに、図表3に挙げた投手でこれを上回るのは野村祐輔(明大ー広島)の1.68のみです。

 指名漏れの4投手については、いずれもFIPこそ3.50を切っており、NPB入りしてもおかしくない成績でしたが、その一方で大きな武器がなかったのも事実でしょう。例えば、明大・蒔田のFIPは2.44と村田よりも好成績でしたが、その内訳で見ると、奪三振率8.03、与四死球率2.99、被本塁打率0.37といずれもNPB入り投手の平均並みでした。総合力の高さは確かでしたが、他の候補に負けない武器をアピールできなかったとも言えそうです。

4.社会人経由では指名解禁済みの中﨑・竹田に注目

 最後に、大学時代には指名漏れとなりながらも社会人経由でNPB入りが期待される投手を紹介します。社会人2年目以降(2023年以降卒業)の投手が2024年ドラフトの候補になります。

 図表5に挙げた投手の中で唯一、社会人2年目でいわゆる指名解禁を迎えるのが左腕・宮海土(立大ーNTT東日本)です。立大では通算45試合すべてでリリーフ登板し、奪三振率9.99と高い奪三振能力を見せました。一方、与四死球率は5.81と安定感に欠いたこともあってか、悔しい指名漏れとなりました。社会人1年目の昨年は公式戦での登板がほとんどありませんでしたが、貴重な左腕リリーフタイプとして、夏の都市対抗などで猛アピールに成功すれば一躍ドラフト候補となるでしょう。

図表5:2021年以降卒業の主な指名漏れ投手

 社会人3年目以降で要注目の1人は、中﨑響介(立大ー明治安田生命)です。明治安田生命に入社後はリリーフとして活躍し、特に去年は絶対的守護神としてのポジションを確立しました。最速150キロ超でキレのある直球を武器に、パワーピッチで打者をねじ伏せる投球が魅力です。今年で社会人4年目ですが、補強ポイントとマッチすればまだチャンスがある投手だと思っています。

 同じく社会人3年目以降では、先発タイプの社会人3年目・竹田祐(明大ー三菱重工West)にも注目です。社会人1年目から先発の柱として登板を続け、社会人1年目は都市対抗本選と日本選手権で4登板(3先発)し、わずか3失点と抜群の安定感を示しました。一方、ドラフト解禁の昨年は都市対抗本選初戦のJR東日本戦の先発投手に抜擢されるも、4回途中5失点で敗戦投手となり、大舞台でのアピールに失敗しました。今年は全国大会で再度アピールし、NPB入りに期待です。

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