堀元さんとゆる学徒のこと

今回、堀元さんとゆる学徒界隈が被った災難について、事件から一週間経ち、事態がようやく落ち着いたので、少し思ったことなどを書いていきたい。
「た」の回で興味を持ってファンになって2年、ゆる言語学ラジオをはじめ、ゆる学徒関連の動画は私の替えがきかない娯楽となっていたので、ここ数日は心の平穏を搔き乱されて生きた心地がしなかった。思ったことを書くと言ったが、大半はそれについての恨み節だ。

(事件の経緯や結末についてはもう振り返りたくもないので省略する。)

侵害される平穏

私が心底信じられないのが、平和な世界に急にやってきて、唐突に悪意を叩きつけて、平穏な空間を搔き乱すだけ搔き乱して去ってゆく人たちである。残念ながらインターネット上にはそうした人たちが多数生息していて、今回の件もそんな人たちの所為で引き起こされた。

彼らは例のK氏のファンだと言う。ファンだと言いながらK氏を傷つける行為に及んでいることがまず理解に苦しむ。なぜわざわざ知らせたのか。

結局それは、K氏を心配してのことではなく、特別な情報を知っている自分の存在をアピールしたかっただけなのだろう。ネット上にはこういう、自分の特殊性を誇示するためなら他人の心情など一切お構いなしの人たちがかなりの数いる。知り得た情報を振り回すだけ振り回して、平和なコミュニティーを混乱に陥れて、それで飽きれば知らぬ顔でどこかへ行ってしまう。

そういう人たちに目を付けられたくないから、堀元さんはわざわざNoteの有料コンテンツという閉じられた空間を発表の場として選び、丁寧に「記事内容を漏洩させるな」と注意文まで付けているのである。

と、ここまで書いて思ったが、どうせそういう人たちは、どれだけ目立つ場所に注意書きをしたところで読みはしないのだ。もっと言うなら、購入した記事本文だってちゃんと読んではいまい。彼らは書いてある文を自分の好きなように抜萃して読んでいる。「読了」という語を生涯使い得ない人たちなのだ。

ネット弱者の想像力

インターネット上に情報を発信すれば、それは瞬時に世界を駆け巡る。ネットで10年以上活躍している堀元さんはそれを骨身に沁みてわかっているからこそ、Noteの有料記事という堅固に守られた閉鎖空間を場として選んだ。だがそんな、窓に覆いをし、表札まで隠した家に、悪意ある者たちは鍵を無理やりこじ開けて侵入し、情報を抜き取っていった。そして結局、それは本人のもとに不幸な形で届いてしまった。

K氏のもとにその情報を届けた人は、それがここまでの騒動に発展すると僅かでも想定したうえで、行動を起こしたのだろうか。そんな不毛な想像をすると思わずため息が出る。インターネットの情報拡散力と到達力に想像が及ばない人間はインターネットを使うべきではない。

理の強要

「正論」を振りかざす人たちは、「正論」という強力な武器を持つがゆえに、何に対しても強く出がちである。圧倒的な自信が彼らを包んでいる。だが彼らが得意気に振り回すそれは、「世界にとって正しい論」ではなく、「自分たちの世界で正しい論」であることが多い。

自分たちは世の理のすべてを承知していて、ゆえに自分たちの輪の掟は理そのものであり、そこから外れた者は「理を理解しない愚か者」だと決めつけて排斥する。なんでそんな勝手に輪の内側で決められたルールに照らし合わされて、こちらが愚か者扱いされなければならないのか。そして、なんでそんな理不尽な行いに、こうまで賛同者が多いのか。人は群れると内省がきかなくなるらしい。

そんな内輪だけで成立するような正論などは、気の合う友人と居酒屋で好きなだけ語り合っていればいい。いちいちネット上に書き込むなと思う。まあ、そんな気の合う友人がいないからネットに書き込んでいるのだろうが。

賢の絶滅

大袈裟な物言いになるが、私は今回の件を通して、賢明な大人が絶滅に瀕していることを否応なく実感し、大変暗澹とした気持ちになった。

私は今YouTube上で教養を最も身近に最も面白く伝えられるコンテンツは「ゆる学徒」だと考えている。チャンネル登録者も、これを書いている時点で、ゆる言語学ラジオだけで30万人に届こうとしている。大人だけでなく、今まさに未来に向けて知識を吸収しようとしている子どもたちも多く視聴している。(この前のフェス会場の様子からもそれを強く感じた。)私は子どもに大人の情けない姿を見せるなとは言わない。むしろそれはいい教材になる。
だが害悪になるものは見せたくない。そして、「まがい物の正論」は成長中の子どもにとってこの上ない害悪となる。

YouTubeコメント欄やXでの「まがい物」の投稿など、大人の薄暗い嫌な側面を子どもたちに見せつけることに、彼らはなんの抵抗も感じないのだろうか。まあ、抵抗を感じないから平気で行うのだろう。
子どもに限らず、監修の先生方の目にこうした醜悪なやりとりが入ってしまったらと考えると、ぞっとするどころではない。

堀元さんも水野さんも、いや他のゆる学徒パーソナリティーたちも、「自分は賢い」などと嘯く人たちではないが、「愚かではありたくない」と考えている気質の人たちであろうと思う。そうした姿勢を明確に感じられるユーチューバーは、私が知る限り大変少なく貴重である。そんな彼らだからこそ、「学び」と「エンタメ」が絶妙に同居したコンテンツを生み出し得るのだ。

だから、そんな価値ある営みの邪魔を金輪際してくれるなと、私は思うわけである。

救い

今回、私という一人のゆる学徒ファンは、突然ネットの暴風を体感することとなった。古くからの堀元ファンからすればこんなものはそよ風程度に過ぎないのだろうが、こういう「炎上」というものを肌身に感じる経験が無かった私としては、気持ちの置き場に苦しむ一週間であった。

その間救いとなったのが、ゆる学徒ファン同士の連帯と一体感である。といって、私が何か具体的にやりとりに参加したわけではなかったが、動画に付けられた常連コメントやゆる学徒フェス関連の映像などを見て、ああ「味方」はこれだけいるのだから、私たちは大丈夫だと、心の支えにしたのである。

ファン層がファン層だけに、頼もしい味方が非常に多い。今回の件でも、多くの歴戦の猛者たちが飛び交う難癖に的確に対応し、結果早期に事態が収束して、私も長く気を煩わされずに済んだ。

明るい話も

書いているうちに、一旦は収まったと思った怒りが再燃してきて、しまりのない散漫な文章になってしまった。ただ、こうやって吐き出したことで幾分気は楽になった。

事が一段落したことだし、ここからは明るい話題でも書いて気持ちを切り替えたい。

(あ、遅ればせながら、ゆるコンピュータ科学ラジオ、10万人突破おめでとうございます!)

この前のフェスではクイズが大変盛り上がったし(”よしのぶ追い上げ”はすごかった!)、今後大々的なクイズ企画が増えてくれると、クイズ好きとしてはとてもうれしい。今回の件で縁もできたことだし、今後、某クイズ集団とコラボなんてこともあるかもしれない。

いろいろと期待や夢想をしつつ、この文はこれで終わりです。

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