【ショートショート】旅立ちの日
田舎の駅のホーム。
僕はこれから片道切符で電車に乗る。夢を叶えるまで実家には帰らない。
「行ってきます」
「元気で頑張ってね」
そう言って僕を見送る母は、目に涙を溜めている。父はいつもと変わらず寡黙だが、今日は優しい目をしている。僕は両親の息子で本当に良かった。暖かい愛情をたくさん感じられた。決して裕福な家ではなかったが、いつも僕のやりたい事をやらせてくれた。
母が、父から見えないようにこっそりと僕に封筒を渡してきた。
「どうしても困った時には、この封筒を開けてね」