星組公演「Ray ー星の光線ー」公演レポート
ずっと夜空を駆け抜ける彗星のよう。
光を放ち、駆け抜けた尾(痕跡)までも輝き続ける。
礼真琴と舞空瞳のダンスはソロとデュエット、どちらもそんな想像力が働きます。
「星の光線」に相応しい存在、パフォーマンスでした。
礼真琴のストイックに鍛え上げられた身体と心から放たれる温かく優しい表現にはいつも満たされていますが、半年ぶりの宝塚観劇で体感した時の至福は筆舌し難いものがありました。
礼真琴を背中を追いかけるだけでなく、並走を目指す。
舞空瞳も休演期間の鍛錬が伺えるパフォーマンスを魅せてくれました。
勢いの後に着実に力がついているので安心と次への期待が膨らみます。
星組の新トップコンビ、礼真琴と舞空瞳はこれから大きな壁にぶつかり、そしてきっと乗り越えてくれることでしょう。
それは当然で、正しき道だと思います。
なぜなら前に進む者、上を目指す者だけが壁にぶつかるのだから。
壁や試練は、自らやって来てくれるほど優しくはありません。
それは同時にチャンスなのですから。
ちなみに「精進」という言葉がありますが、「進」まぬ者たちは使えないはずです。
彼らは試練にもチャンスにも出会えず、したがって成長も期待できません。
若く勢いのある星組に必要な、色気ある骨太な存在。
愛月ひかるは特にこのショー作品において、堂々たる星組デビューを果たしたと思います。
ゴージャスなどっしり感、激しいダンスの場面でもバタバタしない大人の落ち着いたパフォーマンス。
濃い星組が、これからさらに濃くなる予感に心躍ります。
彼女でもっと観たいのは星組で攻めるような役や演出を通して発揮されるであろう激しさや跳躍力。
こちらも出会うのにさほど時間はかからないように思います。
こんなにも黒に誘われ、惑い、惚れてしまうことがあるのでしょうか。
瀬央ゆりあの黒髪に、ずっと、深く魅せられました。
輝き、艶めき、漲る黒。
どう考えても、髪だけの話ではないと確信しました。
そう、彼女は明らかに新たな実力と、オーラを纏ったのです。
それは抽象論としてのオーラではなく、実力に裏打ちされた科学的にも証明できそうなくらい確かなものなのです。
そんな彼女に金星の場面はピッタリでした。
金星に降り立ち、歌い踊る瀬央ゆりあのスケールの大きさに、この物語の先に「彼女自身が金星という輝ける星になる結末」を想像しました。
愛月ひかると瀬央ゆりあの並びが素敵でした。
2人は互いに奪い合い、失うのではなく、共に高め合い、それぞれ新たな何かを得ている関係に映りました。
2人がその未来においても、それぞれ掴み取れることを願います。
You Are My Sunshine.
何度観ても、この楽曲が華形ひかるのために捧げられたように思えてなりません。
彼女の宝塚人生が、そしてこのショーにおける存在がまさにそのものだったから。
芳醇な色気、揺るがぬ貫禄、愛さずにはいられない愛嬌、その全てをこのショーで惜しみ無く出し切ってくれました。
彼女が築いた男役像は、宝塚の歴史に確かに刻まれています。
もちろん私の魂にも。
ですので今、退団して2ヶ月経ったとは思えません。
間違いなく永遠です。
惚れたのは髪だけではなく、神にも。
星組の強さを象徴した場面の一つが、天寿光希と音波みのりの「神々」によるデュエットでした。
星組の至芸であり、組の土台、根底を支える存在でありながら牽引も出来る。
自由で逞しく、変幻自在の魅力に満ちていてこれからも目が離せません。
組子全員、全力で歌い、全力で踊る。
全員仲間、全員良きライバル。
一人として和(輪、環)から外れる者はいない。
星組の歴史と伝統が、礼真琴と舞空瞳の新生星組でも引き締まった造形で迫ってきた素晴らしいショー作品だったと思います。
全国ツアーもライブビューイングで観たかったのですが、月組東京公演の観劇とちょうど重なってしまいました。
全ツの成功と出演者の安全、健康を心から願っています。
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