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真風涼帆の退団に捧ぐ


2023年6月11日、宝塚歌劇団宙組トップスター 真風涼帆が退団します。


究極の男役が、その歩みを止めることなく究極の先を目指し続けて迎えた日。

真風涼帆という男役の型、トップスターの型が宝塚の歴史に永遠に刻み込まれる日。


安蘭けい、柚希礼音、紅ゆずる、朝夏まなと・・・真風涼帆の舞台には彼女たちの宝塚に対する愛や哲学のようなものを感じることがあります。
(もちろん影響を受けたスターは彼女達だけではありませんが)

受け継ごうという強い意志だけでなく、無意識のうちに受け継がれたDNAのようなものも感じます。

それは先達の真似や模倣ではなく、真風涼帆の型となって表れていました。


私は真風涼帆にしかない成熟した大人の男役の色気、落ち着き、包容力を芸術だと思っています。そしてこの芸術を愛しています。

観ているだけで心が穏やかになります。
それでいて何故か、どこか、キケンなムードがあって心地よく揺さぶられる。


大きな転機はいつだったのでしょうか。


私の中では「あの日のこの瞬間」という具体的な感覚はないのですが、大きく変わり始めたのは2015年星組公演「黒豹の如く/Dear DIAMOND!!」だと思います。

新しい組に異動した後のようないい意味での気負いと、覚悟、腹を括ったオーラが強く伝わってきたのを記憶しています。

宙組に異動してから変わったのではなく、異動前から決定的に変わり始めていたように思います。


どっしりと構えているようで、実は常に一歩先を踏み締めている。

焦って飛び出すのではなく、たとえ転んだとしても起き上がれるような確かな一歩。

先達のスーパースター達の華やかな部分だけでなく、努力や苦労、葛藤を比較的近くで見てきたからこそ、自身も挑戦の仕方を工夫できたのかもしれません。


トップスターに就任し、予測できない不安の時代に入ってからは特に観客やファンに寄り添い、共感しながら支えてくれる頼もしい存在に。

冷静で落ち着いているだけでなく、温かく心を寄せてくれたその姿勢にどれだけ救われたことでしょう。


星風まどかとのコンビ、潤花とのコンビ、いずれもそれぞれの全く異なる魅力があり、尊いです。

比較の議論は不要で、これからも振り返り、噛み締めるたびに味わい深いトップコンビになると思います。


芹香斗亜とは史上最高のトップ、2番手の並び、コンビの一組だと確信します。

絆という言葉では表現しきれない関係性、それぞれが全く異なる役や役割を完璧に全うすることで生まれた新たな組の在り方、作品や舞台の魅力。

次代が芹香斗亜であること、真風涼帆から引き継がれることを心から嬉しく思います。



無事に幕が上がり、下りることを祈り、願います。

真風涼帆が歩み、築いた宝塚歌劇の歴史はあまりにも大き過ぎて、その本当の偉大さを実感できるのは明日以降、もしかするとかなり時間がかかるかもしれません。

実感することに少し怖さがあります。

ただ、たとえ明日以降、どんな気持ち、状態になろうとも真風涼帆の今までと今日の大千穐楽を全力で愛し、楽しみます。

その感覚だけは永遠であり、確かに掴めるものだと信じて。


卒業おめでとう。

卒業後のイメージが全く湧かないというのは、きっと究極の男役のその先に辿り着き、真風涼帆の型が完成した証拠です。

明日のことは考えようもなく、今日という日を永遠に輝かせることに集中します。



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