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壊し屋の矜持-Σリーグ1期ドラフトを終えて-

第1期Σリーグの怒涛のようなドラフト期間が終わった。初のリーダーの重責もさることながら、私にとってはドラフトを待つその日までの道のりが本当に険しかった。

初めて技術の責任を預かり、可能な限り人手を減らして応募から当日まで全ての工程を簡略化する大仕事。あくまで使う人を選ばずコストを掛けず、継続的に使えるものを作る、という視点でGoogleAPPやExcelマクロなど、サーバーを要しない、環境構築が不要なものを中心に組み立てる方針で進めた。

結果ドラフトレポートの牌譜屋データ自動キャプチャは執筆担当の皆さんになかなか追いつけず焦りを感じながらも、リリース寸前に組み上がりどうにか滑り込みセーフ。ドラフト当日の指名選手自動スライド反映は、ほんの一瞬だけ同期ズレで誤情報を映してしまうという点はあったものの、過去の記録を遥かに上回る度重なる競合抽選にも関わらず、運用に回った裏方の皆さんの手際の良い作業もあってほぼ滞りなく終えることが出来た。

私は今から開幕までの期間で成績反映のシステムを作るという宿題は残しているものの、とりあえず何があっても間に合わせなければいけない部分を大きなトラブル無く終えたことで、心理的には大きな山を越えた気持ちで今日を迎えている。

さて、振り返ってみれば、この役回りがやはり性分に合ってるな、というのが今の正直な心境だ。あまり自分の長所を自分で語る、ということ自体が性分に合っていないが、あえて聞かれた時は「問題点の本質を見つけることと、その具体的な解決策を生み出すこと」と答えることが多い。

陳腐な評論家になりたくない。これは仕事や趣味を問わず、ずっと自分の矜持として大事にしている価値観だ。

気に入らないものに文句を付けることは、簡単だ。Σリーグに関してだって、全然足りていない部分や未熟な部分、改良した方がいいだろう、と思うことはいくらでも見つかる。しかし具体的にそれを解決する策を出すこともなく文句だけを言い続けていたら、無限に自分の不満だけを垂れ流し、何も生みだすことのない人間になってしまいそうな気さえするのだ。

今回だって同じだ。人の練度に大きく依存したドラフトシステム。「多くの人の協力の下に」という言い方は一見美談にも見えるが、それは容易に組織のサイズの限界を決めてしまうことに繋がる。

だったら全部ぶっ壊してやろうじゃないか。全てのモチベーションの根源はここにある。言い出した限りは自分で壊す。ドラフト1回にも多くの人手が必要なら、伴う手間を減らせばいい。試合の運営にも多くの人手が必要なら、どれだけ組織が大きくなっても管理コストが変わらないような仕組みを生み出せばいい。自分の技術力の限界を、みんなが大事に育てて来た組織の限界にしてしまいたくない。この想いだけで、私にとっては充分な動機と呼べる動機が出来た。

少し話の時間を戻すが、そもそも私がこうして運営に関わっている経緯は、なかなかに奇跡的だ。るなすぺに初めて選出されたFリーグ4期のドラフト時、私は紛れもなく、ただの一介の麻雀打ちでしかなかった。雀魂の段位は雀聖2。麻雀が飛び抜けて強いわけでも配信者というわけでもなく、当時は麻雀に関するnoteを書いていたわけでもなかった。凸待ちなどの企画に出たこともなく、言ってしまえばまともに話が出来るかどうかもわからない謎の一般人を、当時のリーダー月音ゆきは指名したことになる。

ドラフトで選ぶ側に回った経験をした今なら分かる。これはなかなかに大きな賭けだったと思う。人間的にめちゃくちゃヤバい人ではないことは頑張ってテキストでアピールはしたつもりだが、「直接コミュニケーションしたことがほとんど無く、どんな人間か詳細はわからない」「声を聞いたことが無い」という不安は間違いなくあっただろうと私は今でも思っている。

しかしその不安があっても、月音ゆきは私に賭けてくれた。その恩義は今この立場になって、より強く感じるところとなった。

そして幸運にもリーグに参加することが叶い、せっかくならばと「るなすぺ楽屋裏」と題してチームで話しているネタを掘り下げて紹介するコンテンツをnoteで書き始めたところ、今度は当時広報の責任者だった穹憧るか現代表から広報記事に誘われた。それから先はみるみる知り合いも増え、一緒に活動する仲間も増え、紆余曲折を経て今期はチームリーダーと技術部と広報部を兼任させてもらっている。

ここまでの経緯を書けば伝わると思うが、私はゆきさんにもるかさんにも、本当に恩は尽きない。

だからこそ、今度は別の誰かにその恩を何倍にもして返したい。それが今、技術担当として、そしてチームリーダーの一人として感じる最も大きな感情である。

前置きが長くなったが、私はこの先のΣリーグでも、壁を壊し続けていきたい。そう再認識できたからこそ今回筆を執っている。

例えば今回のドラフトで、多くの天鳳の名の知れたプレイヤーが指名されたことで、少なからず興味を抱いてくれた天鳳プレイヤーはいるのではないか、と思っている。これも一つの壁を壊せた実績だと思うし、実際に次回の応募が増えてくれたらうれしい限りだ。

では次は、と言えば、恐らく議題に上がってくるのはそもそものリーグの規模だろう。運営負荷がチーム数増加の壁になっていた側面は少なからずある。実際にどういった形で運営していくかどうかはもちろん議論の余地のある話なので現行の体制を維持することもあるかもしれないが、いざ拡大しようとなった時に、出来る基盤を作るのは、自分の役目だ。

ここからは持論になるので、運営の一人の発言ではなく私個人の独り言くらいのつもりで読んでほしいのだが、私は、私自身が辿った道のように、「何でもない一般人」が選ばれる土壌をほんの少しでいいから残したい。それがリーグの規模なのかルールなのかはわからないが、少なくとも今回のドラフトにおいても、枠があるなら選ばれてほしい、選びたいと思う人は、配信者でもプロでもない応募者にもたくさん居た。しかしながらその枠は、実質的に本当に狭き門になってしまっているのは否定し難い事実でもある。それならば、リーグを拡大しチーム数が増えても耐えられる運用基盤の構築は、そうした人たちが参加出来る一助になるかもしれない、と思いながら今私は全体を設計している。

たくさんの人に観戦されながら、名の通った鉄強と、各プロ団体の猛者と、多くのファンを持つVtuberと戦うというチャンスを万人に。

何者でもない自分だからこそ、壁を壊して手を伸ばすのだ、という矜持と共に、気を引き締めて今期の残りタスク、そして来期への基盤作りへと向き合っていきたい。

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