急性膀胱炎!女性なら経験ある方も多い!油断すると重症化することも・・・

急性膀胱炎って特に女性は聞いたことがあるのではないでしょうか?
半数以上の女性が1度は罹患すると言われている、極めてポピュラーな疾患です。

水をたくさん飲めば治るの??
一回かかったら癖になるの??
予防はどうすればいいの??

外来では不安になった女性から上記のような質問を受けることがあります。

なぜ女性の多くが経験するのに男性では少ないのか?これは生まれ持った特徴が関わっていて、完全に防ぐことは難しいのです。

それではどうするか?敵をしっかり知り、対応を覚えましょう!かかることを防ぐことは難しくても、治療方法がわかっていれば怖くありません。

いつも男性向けの記事ですが、悩む方が多い疾患なので今回は取り上げることにしました!では始めましょう!!

膀胱ってなんですか?

身体の外に尿を捨てる前に、一時貯蔵しておく袋状の組織です。
尿は腎臓で作られます。体内で余った水分の中に、生きるのに不要な残骸であるアンモニアやクレアチン・余った電解質などを混ぜ込むのが腎臓の仕事で、混ぜ込まれて出来上がった水分が尿です。

尿は腎臓から尿管という細い管を通って下腹部の膀胱という袋に貯められていきます。膀胱がある程度膨らんでくると、脳は尿意を感じ始めるのでトイレに行きたくなってくるのです。

もしも腎臓が悪くなると水分が捨てられず手足がどんどんむくんできたり、不要な残骸が体内に溜まって尿毒症という命に関わる状態になってしまいます。

一時的な貯蔵庫である膀胱も生活を営むためには重要です。

腎臓で作られた尿を一時的に貯めることができないと、常に尿は垂れ流しながら生活をするか、5分おきにトイレに行かなければならないかもしれません。仕事や勉強を落ち着いてできるのは膀胱のおかげなんです。

膀胱炎ってなんですか?

膀胱の壁に細菌が悪さをして、炎症を起こしている状態です。炎症って例えば蜂に腕を刺されると、赤く腫れ上がって痛くて大変ですよね。あれはハチ毒という異物が体内に入ったので免疫が働いておこる、皮膚の炎症です。

そんな炎症が膀胱壁に起こるとどうなるか??

①尿が溜まって膨らむことができなくなります。
②炎症を起こしている壁が収縮すると痛みます。
③炎症を起こした粘膜は脆いので、すぐ出血します。

膀胱炎の代表的な3大症状は
①頻尿(トイレが近い)。ひどいときは5分おき!トイレから出られません。
②排尿時痛
③血尿

①は膀胱が膨らめないので、ちょっと膀胱に尿がたまると強い尿意を感じてしまいます。トイレは近いし、1回ごとの排尿量は少ないのが特徴です。

②は排尿すると膀胱が縮むので痛い!特に排尿の最後に痛みが強いのが特徴です。

③の血尿は様々で、真っ赤な尿が出て驚くことも、ほとんど見ただけではわからない程度に僅かなこともあります。

このような症状が突然出てくるのが急性膀胱炎です。若い女性の膀胱炎の多くはこの状態です。

膀胱炎の原因は?

若い女性の膀胱炎の多くは腸内細菌という、ご自身の大腸の中の細菌が悪さをすることが多いです。腸内細菌(代表的なのは大腸菌)は消化器官の大腸では悪さをしないのに、尿路器官に入り込むととたんに病原微生物になります。

若い男性ではまずかかりません。この性別による頻度の違いは、生殖器の特徴によるのです。
・男性はペニスがあるため、尿道の出口(外尿道口)から膀胱までが約18cmととても長いのですが、女性は約3cm程度と短いため菌が侵入しやすいです
・腸内細菌の本来生息する直腸の出口、肛門と尿道口が女性はとても近いです

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この形態の特徴から女性は膀胱炎にかかりやすいのです。

セックスと膀胱炎の関係を聞かれることもありますが、実はあながち関係がないわけではありません。セックスでは肛門と尿道の間接的な接触がありますので、尿道口付近に腸内細菌が付着しやすく、膀胱への侵入の原因になります。
オーラルセックスも含めてセックスは膀胱炎のリスクの一つです。

ただしセックスしていなくても膀胱炎にはかかります。先程示した生殖器の特徴が十分リスクということです。

若い女性・若い男性と言っていますが、若くない女性・男性はどうなのでしょうか?それは何歳になるのでしょうか??

女性は閉経の前後・男性は45歳前後で分けることがあります。

男性も45歳をすぎると急性膀胱炎を起こすことが出てきます。理由は前立腺肥大症・神経因性膀胱など、尿路のトラブルが増えてくるからです。
女性も同様、年齢とともに神経因性膀胱などのトラブルが増えること、また女性ホルモンのバランスが変わってくると生殖器の自浄作用が弱くなり、細菌感染のリスクが上がりますので、増える細菌の種類が変わってきます。

前立腺肥大症や神経因性膀胱などの尿路のトラブルの特徴の一つに、残尿があります。排尿し終わっても膀胱内の尿を出し切ることができないことですが、体内の尿は人肌に温かくて栄養たっぷり。細菌にとっては増殖の天国です。入り込んだ細菌がわずかでも、残尿が常に膀胱内にあると大増殖して悪さをすることがあるのです。

膀胱炎の治療は?

病院を受診してください。抗菌薬治療一択です。

軽症の膀胱炎の場合、水を沢山のんでどんどん排尿することで改善する場合もありますが、悪化するケースも多いです。経験した方はわかると思いますが、何日も膀胱炎症状を我慢するのはとても辛いことです。

辛抱強く我慢していると、膀胱内で増えた細菌は尿管を登って腎臓内にたどり着きます。腎臓内で細菌が炎症を起こすと39度を超える発熱と悪寒戦慄が出現します。腎盂腎炎になってしまったのですが、腎盂腎炎は命に関わることもある怖い疾患ですのでその前に叩いてしまいたいです。

膀胱は炎症を起こしても熱は出ず、生命の危機にはなりにくいです。

ほとんどは外来の飲み薬で改善しますし、内服期間も2〜7日程度です。年齢・性別により増えているだろう細菌を想定でき、最も治療できる可能性のある抗菌薬は世界のガイドラインでまとめられています。
どの病院でもそのガイドラインに従った治療を受けることができます。

膀胱炎治療時の注意点は?

決められた日数の抗菌薬は飲み切るようにしてください。例えば7日内服するように出された抗菌薬でも、内服すると1日や2日で症状が改善すると思います。そこで安心して抗菌薬を止めてしまう方がいます。

症状がおちついても、原因細菌がすべて死に絶えているわけではありません。殺し切る前に抗菌薬を止めると、また居心地のいい膀胱内で細菌は増殖してきます。抗菌薬治療後に増えてきた菌の一部は耐性化といって、治療した抗菌薬が効かない菌になっていることがあり、その後の2次治療に手こずることがあります。

もらった抗菌薬を使用してもいけません。実際に聞いた話ですが、上記のように途中で内服を止めて薬を余らせて持ち歩いている女性もいます。膀胱炎になったときにすぐ治療したいと思うので気持ちはわかるのですが、中途半端な日数の治療では耐性化のリスクを上げる可能性があります。

それだけではありません。病院で薬を貰う前に、医師から妊娠の可能性を聞かれることは多くないでしょうか?妊娠している場合、内服薬が胎児に悪影響を及ぼすことがありますが、膀胱炎で使われる抗菌薬の一部にもその可能性があります。

医師は妊娠可能年齢の患者さんには妊娠の可能性を確認し、それも踏まえた内服薬を処方しています。薬をゆずってくれた友人は妊娠していないために、胎児に影響を及ぼす抗菌薬をもらっているのかもしれません。もらって飲んだときに自分が妊娠していたら大変です。

近年では細菌の抗菌薬耐性化も進んでいます。最初の内服薬で効果が出ないこともありますので、その後の治療の可能性も考えて医療機関で治療を受けることが重要です。

膀胱炎の予防は?

女性の膀胱炎を完全に防ぐことはできません。それでもその可能性を減らすことはできます。

①水分はしっかり摂りましょう。水を多く飲むとその分作られる尿が増えます。尿道が短くて膀胱内に細菌が入りやすくても、細菌が増殖する前に排尿して出してしまえば炎症を起こすリスクは下がります。
②厳密に効果を示した論文を見つけることはできませんでしたが、前の陰部洗浄・セックス後すぐの排尿も推奨されます。原因で述べたことを考えると、個人的にも事前に洗って腸内細菌を減らす・セックス後に排尿して膀胱内の尿を空にするのは有意義だとおもいます。
③クランベリージュースがリスクを減らすと言われています。よく膀胱炎にかかる方は試す価値があるかもしれません。
④残尿感・頻尿・尿失禁など排尿の悩みが出てきたときには泌尿器科に相談するのがいいです。今は内服治療もとても進んでいます。治療で尿路トラブルを改善できれば、膀胱炎の罹患リスクを減らせます。

結語

男性専門クリニックを開いていますが、一般病院でも外来をやっているため今でも急性膀胱炎の方を診察することは多いです。

一度かかったからといって癖になると聞いて不安に思っている方もいらっしゃいますが、もともとかかりやすいと理解してください。

急性膀胱炎は我慢する必要はありません。
生活の質を低下させる嫌な症状が強く、しかし病院ですぐに解決できる疾患です。

我慢する時間がもったいないですね!気軽にご近所の泌尿器科を受診してください!!


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