PSAってなんでしょう・・高いと前立腺癌??

PSA(Prostate Specific Antigen 前立腺特異抗原)って聞いたことありますか?恐らく50代に差し掛かってきた男性だと知っている方もいるかも知れません。

前立腺に特異的な抗原ですが、前立腺に関わる採血数値と考えてもらえれば十分です。ある程度の年齢に差し掛かると人間ドックや住民検診などで項目に入ってくるかもしれません。
採血するだけで調べられ、手軽な前立腺癌の腫瘍マーカーとして使用されています。

泌尿器科外来をやっていると、検診でPSA異常といわれ受診する方がいらっしゃいますが、初めて聞く項目だし、ちょっと調べると前立腺癌の可能性とか書いているし、と不安を抱いて来る方が多いです。

しっかり学んで、検診結果を癌の早期発見に有効活用していきましょう!

そもそも前立腺ってなんなの?

精液を作るのに関わっている臓器で、男性にしかありません。膀胱に溜まった尿が外に出るときに通る尿道は前立腺を貫くように走っていて、射精のときにはこの部分から精子の混じった精液が尿道に送り込まれます。

普段生活していて前立腺を意識することはほとんどありませんが、年齢とともに前立腺は徐々に大きくなり尿道を押しつぶすことで、加齢による排尿困難の原因になっていることがあります。

PSAってなんなの?

前立腺の細胞から分泌される蛋白で、精液を液状化させて中の精子の運動を活発にする作用があります。一部は血液中に入りこむため、採血すると血中PSA値として知ることができます。検診で調べるのはこの数値です。

血中PSA値は前立腺に異常があるときに高くなることがあります。前立腺癌になったときにも高くなることが知られており、前立腺癌検診で使用されているのです。

PSA高値だから胃がんとか大腸がんとか他の癌腫に罹患している可能性を心配する必要は全くありませんが、たまたまPSAが高い方がそれらの癌にも罹患していた!という可能性はありますので、他の癌の検査がいらないわけではありません。

前立腺癌早期発見のための腫瘍マーカーとして、
早期前立腺癌を注意深く観察するときの指標として、
または前立腺癌治療後の再発を調べる指標として使用されています。

検診でPSAを調べるメリットは?

前立腺癌を採血という手軽な手段で発見できる可能性があることです。多くの癌がそうであるように、前立腺癌も早期発見のメリットがとても大きな疾患です。

前立腺癌は症状が出にくいため、気づいたときには治療できないくらい進行していることが多い癌でした。検診PSAが始まってからは早期癌を見つけられるようになり、進行癌の比率が減っています。

早く見つけると完治の可能性が高く、治療方法も様々な選択肢から選べるためリスク・合併症を踏まえた治療を受けることができます。

PSA検診のデメリットはあるの?

検診で使用されてはいますが、PSAは腫瘍マーカーとして決して優れているわけではありません。

例えば異常数値が出たら100%悪性腫瘍、正常だったら0%という検査を完璧な検査だとすると、PSAは異常高値でも前立腺癌ではない可能性がありますし、正常な数値の方の中にも前立腺癌が隠れていることがあります。

検診でPSA高値となった場合は泌尿器科へ紹介され、精密検査を受けるのですが、精密検査で行う追加採血項目・触診・MEIなどの追加検査にも癌を確信できるものはありません。最終的に疑わしい場合は前立腺の組織をとってきて顕微鏡でがん細胞を探す前立腺針生検を行うことになります。

前立腺癌には進行の極めて遅いもの、ほうっておいても命には関わらないものだった可能性がありえますが、このような場合は見つけて検査して治療して・・ということが逆に負担になるかもしれません。

検診でPSA高値になってしまった場合はどうする?

まずは泌尿器科外来を受診します。泌尿器科医は検診のPSAの数値を年齢やご家族歴(親や兄弟に前立腺癌があったかどうか)など、総合的に判断して癌のリスクが有るかどうかを判断します。

PSAが高い場合前立腺になにか異常がある、とは言いましたが、例えば前立腺肥大症や前立腺の炎症で数値が高くなることもあります。

癌のリスクがあると判断したら、前立腺の触診やMRI、超音波などの検査を行い、必要に応じて前立腺の針生検を考えます。

精密検査で癌の疑いが低そうなとき、または生検を行って癌が見つからなかった場合はとりあえず一安心です。
担当した泌尿器科医がその後の癌のリスクを踏まえて、検診フォローにもどしてくれたり、場合によってはその泌尿器科医の外来で検診よりも頻回な検診を行ってくれます。

結語

住民検診は50歳や60歳くらいから行われると思います。これは前立腺癌になる方の多くがその年令に差し掛かってからとういことがあります。

しかし最近では40歳代でのPSA基礎値、という考え方も出てきました。

PSAは絶対値で観た場合に低くても癌がいるし、高くても癌じゃない方もいる不完全な検査、と言いました。
しかし若い頃の基礎値からどのくらい上がったのか?という相対値としての見方が有用ではないか、もしくは若い頃の数値が高いか低いかが、その後前立腺癌になるかどうかのリスクを反映するのではないか?という考え方です。

若いときのPSA採血は住民検診ではなく人間ドックで有料オプションですが、メリットがあるかもしれません。
もしも機会があって若いときにドックで採血した場合にはその結果は残しておき、その後の検診の時に泌尿器科医に見せるととてもよい判断材料になりそうです。

人間ドックや検診で腫瘍マーカーが引っかかるのはかなり大きなストレスだと思います。
しかし検診は癌の可能性のある方を広く引っ掛けるやり方です。その後の精密検査で、必ずしも生検が必要にはなりませんし、生検しても癌が見つからない方も多いです。

そして採血で症状のない前立腺癌を早期に見つけられるというメリットもあります。

PSAが高いと言われてもすぐには不安にならず、お気軽に泌尿器科医に相談してみてください。

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