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FM84.0MHz Radio City presents "Saramawashi.com -The Vinyl Paradise" 087:ブリンドルのメンバー特集

さらまわしどっとこむ -The Vinyl Paradise-
第87回(2023年5月26日(金)20時~
(再放送:5月28日(日)19時~)

清澄白河にあるカフェGINGER.TOKYOのオーナー高山聡(あきら)がお届けする音楽番組です。
全曲アナログ・レコードでお届けします。可能な限り7インチ盤で、しかもフルレングスでかけます。
サーフェスノイズにまみれた1時間、ぜひご一緒に。

今週はブリンドルのメンバーの特集です。4人のシンガー・ソングライター、ウェンディ・ウォルドマン、カーラ・ボノフ、アンドリュー・ゴールド、ケニー・エドワーズが1969年に結成した短命のバンドです。
ファースト・アルバムを制作するものの、レコード会社と折り合いがつかず、発売までこぎ着けることができずに解散してしまいました。それでも実力のある4人ですから、他のアーティストのバックアップに回りつつも徐々に頭角をあらわしてきまして、振り返ってみれば、西海岸のカントリーロック・シーンのかなり重要な位置を占める存在になっていたりします。1995年になって一度復活し、2枚のアルバムをリリースしてくれました。

1曲目
「Vaudeville Man」Maria Muldaur (1973)
2曲目
「Mad Mad Me」Maria Muldaur (1973)

3回ほど前にイーグルスとその周辺人脈を特集したとき、ランディ・マイズナーの「ワン・モア・ソング」というアルバムをご紹介しました。その次の回では、そのアルバムのA面全部がエリック・カズの書いた曲なんだということで、彼のバンド、アメリカン・フライヤーもご紹介しました。実はウェンディ・ウォルドマンはこのアルバムで4曲ほど共作者としてクレジットされております。私が思うに、ソングライターとしては西海岸の最重要人物の一人です。

そんなウェンディ・ウォルドマンの才能を見出し、重用したのがマリア・マルダ―でした。ファースト・アルバムでも2曲採用、その後もウェンディの曲を何度も取り上げます。ここではマリア・マルダ―のファースト・アルバムからウェンディ・ウォルドマン作の2曲をご紹介しました。

「ヴォードヴィル・マン」のピアノはドクター・ジョン、ベースは意外なところで、ビートルズ人脈として知られるクラウス・フォアマンです。ギターはブリンドルのお仲間、アンドリュー・ゴールドが弾いています。「マッド・マッド・ミー」の方はデイヴ・ホランドがベースを弾いているあたりが面白いかもしれません。

3曲目
「Long Hot Summer Nights」Wendy Waldman (1978)
4曲目
「Love Is The Only Goal」Wendy Waldman (1978)

ウェンディ・ウォルドマンは自己名義のアルバムもコンスタンスにリリースしますが、80年代に入った頃から作曲の方に軸足を移します。女性にしては珍しく、プロデューサーもやります。楽曲提供はヴァネッサ・ウィリアムス、マドンナ、セリーヌ・ディオン、アース・ウィンド&ファイヤーといったあたりが有名でしょうか。ここでは1978年の「ストレンジ・カンパニー」という自己名義のアルバムから2曲聴きました。ここでは高山が大好きなマーク・ゴールデンバーグがギターもキーボードもヴォーカルもとマルチにバックアップしております。スライドはクレイグ・ハルです。

5曲目
「Living In Hard Times」Wendy Waldman (1987)
6曲目
「Letter Home」Wendy Waldman (1987)

ウェンディ・ウォルドマンは1982年にナッシュビルに引っ越してしまいます。カントリーの世界では相当数の曲を作っているようですが、日本では限られた情報しか得られません。エミル―・ハリスとかドリー・パートンとかこのウェンディ・ウォルドマンあたりはロックとカントリー両方の世界を行き来する人たちといったイメージです。1982年の「フイッチ・ウェイ・トゥ・メイン・ストリート」というアルバムはピーター・フランプトンが全面的に参加していたりもします。1987年には「レター・ホーム」という、これまた素晴らしいアルバムを久々にリリースしてくれました。ここからも2曲聴きました。タイトル・チューンの「レター・ホーム」は、フォレスター・シスターズに提供された大ヒット曲の作者ヴァージョンです。

7曲目
「Lonely Boy」Andrew Gold (1977)

8曲目
「Thank You For Being A Friend」Andrew Gold (1978)

ブリンドルのメンバーの中で最も売れたのはアンドリュー・ゴールドです。彼はソロでも結構売れましたし、10ccのグレアム・グールドマンと一緒にやったWAXでも大ヒットがありますからね。他にバックアップでもリンダ・ロンシュタット他、いっぱいヒット曲に絡んでいる人です。ここでは彼のソロ名義のヒット曲を2つ聴きました。1977年の「ホワッツ・ロング・ウィズ・ディス・ピクチャー」という間違い探し・ジャケットのアルバムから「ロンリー・ボーイ」、そして翌年の「オール・ディス・アンド・ヘヴン・トゥ」から「サンキュー・フォー・ビーイング・ア・フレンド」をご紹介しました。

9曲目
「Different Drum」The Stone Poneys (1967)
10曲目
「Some Of Shelly’s Blues」The Stone Poneys (1968)

ケニー・エドワーズもリンダ・ロンシュタットやカーラ・ボノフのバックアップを長年やっていますから、大量のヒット曲に関わっています。そもそも、彼の場合はブリンドル結成前にリンダ・ロンシュタットとザ・ストーン・ポニーズというグループを結成しております。ストーン・ポニーズで3枚のアルバムをリリースしてからブリンドル結成に参画します。本人名義のアルバムは2002年と2009年にリリースしておりますが、それまでは他人様のバックアップで大忙しのベーシストでした。ストーン・ポニーズではリード・ギターを弾いています。ウィキによりますと、少なくとも235曲の作者としてクレジットされているらしいので、相当多作の人です。ここではストーン・ポニーズの2曲をご紹介しました。両方ともモンキーズのマイク・ネスミスが書いた曲です。

11曲目
「Lose Again」Linda Ronstadt (1976)

残るもう一人はカーラ・ボノフですが、まあこの人のライヴは忘れられません。2005年7月31日の日曜日に横浜ブリッツで開催されたライヴですが、とにかく最前列のど真ん中というとんでもないお席が手に入ってしまいまして、ステージもメチャクチャ近くて、しかももの凄い暑かったこともあって、カーラ・ボノフから「暑いね、大丈夫?」とか話しかけられながらスタートするということになりまして、忘れられるわけがありません。そしてケニー・エドワーズもしっかり同行しておりまして、実に素晴らしい内容でした。この時、初めてケニー・エドワーズという人物を間近で観ましたが、まあ真摯な職人的なミュージシャンです。ステージ全体に気配りしており、バンドの中心的存在はこの人だということが瞬時にわかるような方でした。彼のソロの曲も3曲やるようなセットリストでした。実に貴重なライヴでした。

カーラ・ボノフはリンダ・ロンシュタットが彼女の曲をいくつも取り上げてカヴァーしたことで有名になったようなところもありますから、ここではリンダ・ロンシュタットが歌ったカーラ・ボノフの曲を一つ聴きました。ベースはケニー・エドワーズ、コーラスはケニー・エドワーズとアンドリュー・ゴールドというメンツです。

12曲目
「Personally」Karla Bonoff (1982)

13曲目
「When You Walk in The Room」Karla Bonoff (1979)

ソングライターとしての知名度が先行してしまったカーラ・ボノフですが、やはり実力はあります。1977年のセルフ・タイトルのファーストにはリンダの「風にさらわれた恋」に収録されたカーラ・ボノフの3曲の作者ヴァージョンが収録されておりまして、評価は高かったものの売上には繋がりませんでした。1979年のセカンド「ささやく夜」は文句無しの名盤でヒットもしました。82年の「ワイルド・ハート・オブ・ザ・ヤング」も大名盤です。この辺のアルバムはケニー・エドワーズがプロデューサーです。

ここでも2曲ききましたが、「ホエン・ユー・ウォーク・イン・ザ・ルーム」はジャッキー・デシャノン作の名曲です。ジャッキー・デシャノンはキム・カーンズの「ベティ・デイヴィスの瞳」等の作者です。多作の人で、ロックンロールの時代の最初のシンガー・ソングライターの一人と言われております。ビートルズ人脈としても知られていますし、60年代の中ごろにジミー・ページと恋仲だった時期があり、レッド・ツェッペリンの研究家などは、サード・アルバムに収録されている「タンジェリン」は、ジャッキー・デシャノンの影響が見られると指摘していたりもします。

14曲目
「Trouble Again」Karla Bonoff (1979)

ラストは、カーラ・ボノフといえばこれ、「涙に染めて トラブル・アゲイン」でした。日本では特に人気がある有名曲です。

次回はライ・クーダー特集です。お楽しみに。
番組へのご意見やお便りをください。
voice@fm840.jp


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