見出し画像

ICONIC 番外編③ 「TECHNO KAISER社」紹介

 みなさんこんにちは。日本で世界最初のクローン開発が始まり、それが海外に広がり、そして世界的な産業として根付いてはや三十年。22世紀ももう目前にまで近づいてきましたね。さて、クローン開発も歴史が深くなりつつある昨今、海外でも様々な新興企業が名を挙げ始めています。それでもなお、クローン開発業界でトップに君臨し続ける、かの有名な「GorldEdge社」に肩を並べる我らが帝王、「TECHNO KAISER社」を、今回はご紹介いたします。


 TECHNO KAISER社は2068年に神奈川県で創業しました。2063年ごろから政府が新しい労働力としてクローンを活用することを勧告したため、同社は労働力の不足していた東京都への出荷を目的としてクローン開発を行いました。
 政府の要望に応え、低価格で大量生産が可能、それでいて精度の高いクローン制作を実行し、「GorldEdge社」よりも一足早く、世界で四機種目となるクローンをリリースしました。
 まだクローン開発も始まったばかりで、当時は政府の突きつけた無理難題を実現するのは非常に困難なことでした。しかし同社は東京大学および大学院で遺伝子工学の研究をしていた研究員が卒業後そのまま会社を作り上げたという形をとっていたため、ほかの企業よりもクローン研究が非常に進んでいました。そのため起業からわずか2年で作り上げたクローンは類を見ないものとなっていたのです。
 今でこそ当たり前の高速成長技術ですが、当時は成長後に脳などに異常をきたしたり、体の一部が成長しきらないなど様々な問題がありました。しかし同社はこの技術を実用性あるものにし、異例の開発期間・成長期間を経てのリリースでも不評がまるで見られなかったのです。


 その後、世界中でクローン生産が行われる中同社はついにTHT開発を決定しました。同社は当初、政府にクローンを提供しつつ、市販のクローンの開発も行なう予定だったのですが、政府の命令により同社は一般販売用クローン人間の研究を禁止されていました。2070年中頃にようやく許可がおりましたが、既に日本では「GorldEdge社」が幅を利かせており、世界的にもあまり有名でなかった同社は、THT開発で心機一転を図ろうとしたのです。


 同社の研究員たちの飽くなき探究心と、その凄まじい技術力によって、2080年には神経系・記憶処理系・身体系の全ての分野で世界一のTHTをリリースし終えました。こうして積み上げたキャリアの上に、同社はついに伝説と呼ばれるクローンを開発・リリースをします。
 「GorldEdge社」の活躍により、高性能なクローンは非常に高価であるという考え方が一般だった世界に激震が入ります。『NEXUS』…言わずと知れた世界最高峰のクローンにして伝説と謳われる機種。それがついにリリースされたのです。世界中の如何なるTHTとの相性も非常によく、同社のTHTとの相性は「とても良い」という言葉では表現しきれないほど。価格も低く、大量生産が可能な上に、かつての政府の命令によって培われた技術力のおかげでその精度は凄まじいものでした。その後も「カイザーシリーズ」と呼ばれるクローンの開発を続け、わずか5年で世界的に有名なクローン開発企業として名を轟かせました。


 そんなTECHNO KAISER社は現在、META-Brain社と協力し、新たな軍用クローンの開発を進めています。META-Brain社はGigaHead社という神経系のTHTを開発する企業から独立したため、神経系のTHT関連はもちろん、その他のTHTとクローンを接続する技術に優れています。そしてTECHNO KAISER社は世界有数の高性能THTの開発企業であるため、その二社が共同開発しているクローンはTHT界隈で非常に注目が集まっているのです。
 最新の経過報告書によると、新型軍用クローン『Rip-And-Tear』は「戦線での敵クローンの大量破壊および対クローン兵器への反撃」を目的に製作されているようです。軍隊のみが購入可能とし、10個体1億円からとなっています。
 現在発表されている標準装備THTは以下の通り。

META-Brain社

・神経加速器官「Time  Dominator」
・腕型四肢拡張THT「阿修羅」
・THT制御補助装置「真珠」

TECHNO KAISER社

・脳機能拡張THT「OnceMore」
・THT機能拡張装置「NEXUS Minds/typeⅧ」

Hell Dogs社

・内蔵型超音波カッター「蟷螂」
・腕型THT換装用機関銃「SLAYER」
・対砲撃衝撃緩和機構「A.B.S.M²」
・特殊皮下装甲「鎧」
・脚型THT(OverDrive専用)「飛脚」

 現時点では二年後の夏頃に完成を予定しており、我々ヴァールハイト誌も続報が出次第すぐに取材するつもりです。


 今月のヴァールハイト誌は「TECHNO KAISER社」についてでした。日本が誇るクローン開発企業とだけあって、現在もクローン開発において最前線をゆくその姿は非常に尊敬します。我々ヴァールハイト誌もクローン情報誌として最前線を行けるよう、努力していきます。

編集:元木記者

注)この作品はフィクションです。それっぽく書いてますが、おそらく日本に“ヴァールハイト”という名前の雑誌はありません。多分。あったらすみません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?