見出し画像

「金融財政政策雑感」no.9

  2022年第一四半期も折り返し点を過ぎた。景気回復の途上にある国際経済の焦点は2つある。景気回復と国際政治の問題が絡んで原油価格の上昇が止まらない中で、先進国経済では、一段と人手不足が加速して名目賃金が引き上げられている。物流コストも増加している。こうした要因を背景に、インフレ率の上昇ががどこまで加速していくかが焦点となっている。もう一つの焦点は金利の動向である。米国FRBは、年初からインフレ抑制のために、政策金利の引上げを柱とする金融引締政策のフォワードガイダンスを公表して、量的緩和の停止と金融引締政策に転換している。将来の資産規模縮小(テーパリング)も示唆している(米国経済のインフレ加速圧力は強い。したがって、インフレ率を目標値の近傍に、金融政策で抑え込むことができるかどうかは不確実である)。この影響を受けて市場では国債の長期金利が急騰している。ECBも、FRBに追従して政策金利引き上げを示唆し、英国イングランド銀行も金利引上げ政策を決めて、インフレ抑制に乗り出そうとしている(EU地域のインフレ加速圧力が、持続するかどうかは不確実である。したがって、逆転換は在り得る。)。日本はどうか。現在、日本銀行は、基本的には、長期金利0%近傍誘導目標付きの量的緩和政策を継続して現状維持のスタンスである。だが、日本でも、長期金利(通常、10年物国債金利を指す)以外の短中期の国債や超長期国債の金利が高騰し、イールドカーブの傾きを大きくしている。長期金利は、日銀が抑え込んでいるだけで、その上昇圧力となっていることは明らかである。こうしたインフレ加速と金利および名目賃金率の上昇は、基本的には、その相対関係である実質金利および実質賃金率に、そして、将来内外金利差の拡大予想を通じて為替相場に影響を与え、マクロ経済に影響を及ぼす。財政破綻とマクロ経済の不安定性の2つの方向から、その要諦を明らかにする。上記の3つの動向の経済に与える影響を、その相対関係の動向を入れずに分析することは、誤謬となる可能性が高い。

ここから先は

1,549字

¥ 500

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?