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「物価と名目賃金の循環構造」no.25

   物価上昇と名目賃金率上昇の好循環モデルを、総需要による生産量(=実質所得)決定モデルで分析できることを示すことは、この問題対する基本的な問題の中の一部にしか過ぎない。総需要決定モデルは、同時に雇用決定モデルでもある。総需要・総供給モデルが模索されてから久しい。短期および中期の政策の面からは、インフレ抑制政策もデフレを阻止することを目的としたリフレ政策もいずれも、総需要サイドへの作用を通じて政策目標を達成することを目指している。依然として供給サイドへの影響はブラックボックスであり、総需要政策が、供給面にも良い影響を与えて、その効果がシナジーとなることを期待するのみである。従来の総需要による生産量(=実質所得)の決定モデルは、実質賃金率が一定のモデルである。実質賃金率の決定を取り上げることは、供給サイドを取り上げること、つまり企業部門の生産量決定態度を明確にすることになる。だが、総需要決定モデルでも、供給態度の問題は不問にして、実質賃金率の総需要への影響を明らかにして、前述の好循環・悪循環モデルを分析することは可能である。今回は、この論点を明らかにする。
 
 

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