週刊: 追憶

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最近の記事

ねえ、レイラ

愛し方、というのを教えてくれたのは昔の恋人だった。 愛というものと親しくしてこられなかったからか、成人しても人の愛し方というのがよくわからずにいた。そんな中、はじめて明確に、誠実に愛というものを唱えてくれたのは、21歳の頃に付き合っていた恋人だったと思う。 彼は砂糖を煮詰めて、さらにその上から練乳をかけるような、そういう愛し方をする人だった。 思い返すと、女の子の欲しいものは全て揃った生活だったと思う。 風体のいい男、4LDKのマンション、右の薬指を縛る宝石、ロックの

    • 献立の幸福

      私の1日のエネルギーの大半は、「夫に何を食べさせるか」を考える事に費やされている。 冷蔵庫の中身を、正しく、綺麗に、使い切るのは至難の業だ。この日までには豚肉を使い切らなくちゃ、あぁ、でも鶏肉もそろそろ使い切らないと…、やだ、レタスもキャベツもダメになりかけてる…、だとか出不精の私は、色々なものをいっぺんに買うので、自ずと色々なものの賞味期限も重なってきてしまう。何度、使いかけのネギを干からびさせてしまったのかわからない。 だから、献立選びは重要だ。 うちは作り置きという

      • 花束とスイートな思い出について

        夫に初めてもらった花束は、黄色いバラと青いデルフィニウムだった。 ときに、夫はあまりロマンティックなタイプではない。 デートはラーメン屋さんだとか、回転寿司だとかそういうところばかりで、フレンチのコース料理や雰囲気のいいイタリアンなどは、2人で行ったことがないと思う。 出会い初めの頃でさえ、居酒屋で飲んでばかりだった。渋谷だったり、新宿だったりで朝まで飲んで何時間も話をして。私もそういうデートは嫌いではないので、不満というわけではないのだけれど、たまにはうっとりするような

        • 憂鬱さえ、愛せたら

          小学生の頃、母の本棚からよく本を盗み読んでいた。開けてはいけないと言われていた本棚には、ELLEやVOGUE、CHANELのコレクション本が並んでいて、それは実に魅力的だった。母はおしゃれな人だった。矢沢あいの「ご近所物語」もその一つだ。 私にはとてもとても刺激的で、今の仕事をするきっかけの一つになっている。 主人公の、幸田実果子は服飾学生で才のある人だ。とてもキュートで、いつも厚底の靴を履いている。だから、というわけではないけれど私も仕事の時には厚底の、メリージェーンを

        ねえ、レイラ

          愛ゆえに

          「愛してさえいなければ。」と何度も思う。 例えば、この世の終わりかと思われるような、烈しい言い争いをしている時、「この人を愛してさえいなければ。」と思う。_____この人を愛してさえいなければ_____今すぐに別れて自由に暮らすのに。 夫を愛してさえいなければ、私は嫉妬することも、小さなことに気を揉むこともなくなって、夫の前でもっと気のいい女でいられるのに。小うるさい事を言うこともなく、全ての時間を機嫌よく過ごすことができるのに。そうすればきっと_____私たちはもっとう

          レモンパイ、或いは喧嘩の顛末

          生活の中でしばしば、「夫は私の何を知っているんだろう」と思うときがある。 例えば__それはそれは凄まじい__2度としたくないといつも思う___嵐のような喧嘩をしている最中に、反論のために夫が私のことを何もかもわかりきったように物を言ってくるとき。 激しい怒りの中で度々思う、「私のことを何も知らないくせに」と。 私は夫についてのほとんどのことがわかる。 嬉しい時も、話を聞いていない時も、悲しい時も、やましい事がある時も、夫の顔を見ればすぐにわかる。わかりたくなくても、一目

          レモンパイ、或いは喧嘩の顛末

          夫との時間について

          ブログを始めてみることにしました。 取るに足らないですが、暇つぶしにでも。 夫と私はまるで違う種類の人間なのだと、最近ふと気がついた。 気がつくまでもなく___みるからにそうなのだが___「この人と私は今まで同じ世界にいたのに、全く違うものを見てきたのだな」というごく当たり前のことに気づき、少しの驚きと感動を覚えたのだった。 生活を共にしているので、大抵の時間は一緒にいる。 時間というのは誰にとっても平等に決められたものなのに、その使い方は人によってまるで違う。 夫が

          夫との時間について