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ツンドク?読んどく ⑬

料理本ばかり読んで過ごす 2021/05/23

バラにわくわくしていたらもう終わりで、梅雨に入ろうとする季節には紫陽花。
花追いオバチャンの花暦。花追いでこころはニュートラル。
卯月皐月の読書 note といってもほぼ料理本。

もう20年近く前に読んだ岩手のフリーペーパーの記事をずっと取っている。
シェ・ジャニーの故春田光治さんのインタビュー記事
山菜料理についての技~山菜はオイルで炒めればアク抜き不要~にフムフムそうなんだと学びがあったこともあり、そのころ安比高原にあったお店に行きたいと思いながらもチャンスがなく、安比高原には二度も行っているというのに、ずっと気になっていた存在が春田光治さん。
4月。
ふと思い立って春田光治さんについてネット検索。
な、なんですと!盛岡にお店を移転されていたとは!
そして2020年7月にお亡くなりになっていらっしゃったとは・・・。
もっと早く春田シェフについて検索していたら、盛岡のお店を訪れていたし、去年コロナ禍で料理のお取り寄せメニューの発送もしていらっしゃったようで、絶対に注文していた。
すごく後悔。

著書を調べて見て、驚いた。
旧知のフリーライターの赤坂環さんが2018年1月に自費出版されていた。
シェ・ジャニー 春田光治の12か月』
すぐにネット注文。
早速赤坂さんからメールが来て、プレゼントさせてくださいとおっしゃる。
こんなに本を待ち遠しく感じたのは久しぶりだった。

本の撮影は許可を取っています

本が届くまでに春田氏の著書を二冊図書館で借りて読み、特にシェフシリーズ 4『春田光治の魅惑の南仏料理~専門家の味をあなたの食卓に~』は今もフランス料理書として高評価であるという理由がよくわかる名著だと思った。1981年発行、当時まだ南仏料理に特化~それも高級レストランのレシピではなく普通のフランス人のいつもの食事であったりハレの食事であったりする所謂日常のフランス料理のレシピが、南仏の文化までも紹介しながら丁寧に一冊の本としてまとめられている当時としては稀有な料理本。

1940年生まれの春田光治氏は、容貌経歴ともにキラ星の如き人物。
渋谷のNHKのそばの瀟洒な洋館(ご自宅)に、フランス人が日常食べている料理を提供するシェ・ジャニー Chez Johnny が誕生したのが1969年。
高校生のころどうしてもフランス料理が食べてみたいからとフランス料理の原書を辞書片手に読んで料理していたというエピソードを持つ春田氏は、慶應大学卒業後ボルドーで修業、その後ジュネーブの大使館とベトナムの大使館公邸で青木盛夫大使の公邸料理人を務め帰国、1969年シェ・ジャニーをオープン。
マスコミでも取り上げられ、多くの文化人も訪れる大人気レストランとなる。
80年代のフランス料理ブーム、グルメブーム到来、そのさなかに閉店、1986年安比高原に移住。趣味の世界に遊び、家族の食事を毎食ていねいに整える暮らしを10年近く続け、友人の要望に応えて1997年、敷地の一角に増築した部屋を改装してシェ・ジャニーを再開。
ここまでが20年前に知っていた私の情報。
「春田さん自身がブログでもレシピを公開されているんですけど、私はどうしても春田さんの料理の世界を紙で、本で残したかったんです。残しておくべきだと思ったので、自費出版することにしたんです」と赤坂さん。
「赤坂さん、ほんとうに素晴らしい本を残されましたね」。

『シェ・ジャニー 春田光治の12か月』は、よくあるように家庭で作りやすい分量に書き換えたレシピではなく、春田シェフが仕込みの時にずっと使われていたであろう分量のレシピ~南仏修業のころ身につけられた丁寧で理由のある料理法にのっとったレシピなのだろうと推測~が記されている。
他にも氏のアレンジされたエスニック料理のレシピもいくつかあって、時間のあるときに、じっくりと春田ワールドを作ってみるつもり。

おいしい料理を作るコツは、おいしい料理を食べること。同じ料理でも常に「もっとおいしくなる方法があるのではないか」と考え、挑戦しています。

著書帯より
撮影は許可を取っています

料理って、ネットでぱぱっと調べたり、動画を見るのもそれは便利だったりするけれど、私は料理本を読むのがやはり好きだ。
といっても、これはすごい!と思える本はそうそうないのが現実。
素晴らしい本に出会えた春だった。

『天国と地獄のレシピ』ってどんなレシピ本?

いや、レシピ本じゃありません。
タイトルを見て、わかる人はわかるだろうな、という山田宏巳シェフの自叙伝。
私は山田シェフは料理界のエリートコースを歩み、華々しく時代の寵児ともてはやされ、その中で事故と事件を起こし地獄を二度体験した方なのかと思っていたら、かなりの苦労人。

”誰にでも物語がいっぱい詰まった人生があるように、ボクにもコックとして歩んできた人生がある。一人のコックとして、いろんな人と出会い、親身になってボクに寄り添ってくれた人のことを聞いて欲しいなって思って”まとめられた自叙伝であり、
”先の見えなかった修業時代から恩人たちとの出会い、イタリア留学、どん底に落ちた不遇時代など、起伏の激しい山田氏の半生と料理の冒険譚を余すところなく紹介” した本。日本のイタリアンの創成期ともいえる時代の空気感など、とても興味深く読めた。
ただ、本の表紙のサブタイトル「イタリアンの王様 山田宏巳」ではなく「イタリアンの傑物」とでもしてほしかった。

Chapter 4恩人の蜘蛛の糸「僕が見た山田宏巳の人間像」見城徹
が読み応えあり。

山田は還暦を迎えているし、若いときのひらめきだけじゃだめでしょう。だから僕は今ものすごく複雑な想いをしてしていて、そんなことを考えていると身が引き裂かれるようです。向こうは迷惑かもしれないけど、もうちょっと山田に僕の時間を割いて、あいつのために昔みたいに動こうかと思ったり、いやいやまた裏切られるからここまでの方がいいのかと思ったり。だけど、あの才能を放っておくことを僕はできないという予感はあります(笑)。

見城徹さん。
”アクを丁寧にとった” 自叙伝じゃなくて、見城さん発掘のノンフィクションライターで、見城さんプロデュースの「天国と地獄」本をぜひ、出版してください。
そう思った一冊。

やっぱりすごいシェフだと思う。
リストランテ・ヒロソフィー 銀座/RISTORANTE HiRosofi Ginza では二度ほどランチ。山田シェフ自らが腕を振るわれる料理はどれも唸るおいしさで、かといって凝り過ぎた料理ではなく、旬の食材を最上の料理に仕上げたライブ感のあるランチ。子どものように素直に感動させてもらった。
(追記:現在閉店して新店舗オープン)


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