連続短編小説集[int i;]
【10:告白病】
「告白病……?」
「そう。医学部を卒業する際に卒業論文を書くことが義務付けられているんですけど、それに関して気になる記事がありまして……」
告白病と言っても不完全な物であり、病気としては認知されていない症候群に値するのであるが、ある程度の条件を満たすとそれが誘発されることがわかった。
告白病、別名先天性終末性昏睡症候群。
最も最愛と思われる人に一定回数の告白などを行うと昏睡状態に陥り、 最終的には永眠してしまうという何とも恐ろしい症状だった。
しかも、恐ろしいことに回復率が0パーセントという不治の病に該当するという点だ。
俺はその意味のわからない病気を調べることにした。
しかし調べても何もわからないとう状態が永久的に続く。
考えこみすぎて他の先生に心配されるほどになっしまった。
「……っていう感じのものがあるんですけど、何一つとしていい成果が得られていない状態ですね」
たはは、と苦笑いをする。
「なかなかに難しい病気を勉強しているんだね……」
春さんは何か考え込んで、「むずかしいね」と苦笑いをした。
そして春さんは一つ提案をした。
「じゃあさ、私で何かわかることがないかを実験していいよ」
「!!!???」
春さんはとんでもないことを言い出した。
「私を非検体にしていいよ」との宣言。
流石に昔からの知り合いを非検体にすることはできない。
「え、でも、そんな簡単に非検体にすることなんてできないよ」
「もう、いいから。非検体にさせて」
「何をそこまでやる気にさせるんだ……」
すると春さんはひっそりと近づき、耳打ちしてきた。
「こうすれば、いつでも狼くんのそばにいられるでしょう?」
「!!!!!!!」
この人は本当に卑怯だと思う。
そんなせこいような方法を取るなんて、拒否権がないみたいじゃないか。
「もしかいして、拒否権なんてものは……」
「もちろんありません」
「…………」
思わず絶句した。
言葉が出てこないとはこのことなのだろう。
こうして、非検体が一人完成してしまった。
「これからよろしくね♡」
「…………」
これから俺と春さんの生活は、どうなってしまうのだろうか。
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