「マイナー」はなぜ生まれてくるか

私の周りには、使用率の低いマイナーなポケモンで対戦を楽しんでいる、またはそれらで勝とうと努力している人が一定数いる。読者の皆様の周囲にもいるかもしれない。

私もどうすればそれができるのか、常にいろんな可能性を模索しているのだが、その中でも特に記憶に残っている言葉がある。

「一部のポケモンでしか戦えない環境はつまらない。全てのポケモンで対戦を楽しみたい」「対戦で活躍できないポケモンを好きになったプレイヤーはどんな気持ちでプレイすればいいのか」

感情論ではあるが、当時私も彼らの言いたいことはごもっともだと共感した。それ以来この言葉に対する回答を自分なりに考え続けたのだが、今回それを言語化してみた。

感情論を抜きにした客観的な切り口からの回答になってしまうが、それでもよければご覧いただきたい。

そもそも「マイナーポケモン」の定義

そもそも「マイナーポケモン」とは何を指すのか。

一言で言ってしまえば、「使用率下位数10%の、対戦で使われにくいポケモン」を指す言葉である。

つまるところ「メジャー」「マイナー」は相対的な評価でしかなく、どんなプール、どんな環境であろうと必ずポケモンはこの二つに分かれることになる。

つまり、極端な話、例えば下位50%のポケモンを「マイナー」と定義するなら、彼らのデータをゲームから消去したとしても、残ったポケモンの下位50%が「マイナー」になるだけである。
もちろんプール内のポケモンの種類が少なくなればなるほど「勝ちやすい構築(4世代などで見られたいわゆる「結論パ」)」というのが決まりやすく、ポケモンの数を減らしていけばいずれ対戦で使われるポケモンはほぼ6匹に固定され、それ以外はマイナーどころか全く使われない、(対戦においては)存在しないも同然となるだろう。

結論としては、「マイナー」の存在しない環境というのは存在しえない。
対戦で活躍できないポケモンがたくさんいる状況を受け入れられないプレイヤーは数多くいるだろうが、彼らの望む環境は永遠に実現し得ないことになる。

「マイナー」とは相対的な評価に過ぎず、どんなプールであっても一定数存在する概念であることは理解すべきではないだろうか。

ゲームバランス的観点

「対戦で活躍できるポケモンが大勢いる現状はゲームバランスが悪い」という意見は頻繁に耳にするが、果たしてそうであろうか。

そもそも、彼らが望むように、全てのポケモンに上位ポケモンに匹敵するスペックを与えた場合、どうなるだろうか。

当然彼ら全員が対戦環境で活躍することになるわけだが、そうなると、選択肢となるポケモンが多い分構築の数も多くなる。そうなると、考慮しなくてはならない構築タイプがあまりに多く、当然6匹のポケモンでは対応しきれない。(使われるポケモンがある程度限られている現状でさえ全対面対応できる構築を作るのはほぼ不可能といっていい)
環境で頻繁に見る構築タイプがある程度限られていれば、多少不利な構築に対してもメタを仕込むことで対処が可能だが、構築タイプが多ければ多いほどそれらは無意味なものとなり、単純に構築のパワーだけを上げた尖った構築が最適解となり、勝てる構築に勝ち、勝てない構築は即投了、に近いゲームになる。
そうなれば、当然構築単位で勝てない構築の数も増えるため、いかにバランスのいい構築を作るかというより、勝てない構築にいかにマッチングしないかで成績が決まるゲームとなるだろう。
もちろん、それでも構築が多い環境の方が楽しい、その方がいいと主張するプレイヤーもいるだろうし、そう言われればそれまでではあるが、あくまで構築力、戦術性の高さを競う競技としては不適切ということになるだろう。

また、問題はそれだけではない。もし、それだけ数多くのポケモンに平等に高いスペックが与えられ環境に参加した結果、頭一つ抜けて強い構築が生まれたらどうなるだろうか。当然一強環境になってしまえばキャラクターゲームが破綻するため、その構築を押さえるために公式側が何かしらの対処を施すわけだが、それだけ環境で使われるポケモンの数が多いと、環境に手を加えた結果別の壊れ構築が誕生したり、一部のポケモンが極端にパワーを落とされ使い物にならなくなってしまう、といったことが起こるかもしれない。
要するに、環境の構造が複雑になればなるほど、公式側のバランス調整が難しく、テコ入れした際に何が起こるかわからなくなってしまうということである。

そうなればもうマイナーどうこう言っていられる場合ではなくなってしまう。

多くのキャラクターが環境レベルのスペックを持つと(本来そんなことは起こり得ないが)、環境の構造が複雑化し、バランス調整や戦術性など多方面に弊害が出るため、対戦ゲームは基本的に環境で見られる構築タイプはある程度限定されるように調整される。
つまり、対戦で活躍できないポケモンはあえてそのままにされているということになる。(あまりに何もできない悲惨なポケモンには多少救済処置を施すことも珍しくないが、それでもそれによって環境レベルにのし上がることは稀であるので、このことからも上記のことが伺える)

商業的な視点

ここからはポケモンのゲームというよりポケモンカードに限った話になるのだが、ポケモンカードにおいても、対戦で使われるカードはごく一握りであり、拡張パックひとつとっても、ほとんどのアンコモン以下のカードは対戦では使われずに店のストレージに行くし、排出率の低い強カード(ex、V、GX、EXなどサイドを二枚とられるポケモンのカードが主に該当する)であっても半分以上は対戦ではあまり見ないカードとなる。

これに関しては、商業的な事情が絡んでいる。

まず、TCGの商品には、商品の目玉となるレアカードというのが2~3種類収録されるのがほとんどである。(とりわけポケカにおいてはここ数年でその傾向が強くなっている)。そのようなカードが存在することによって、消費者の購買意欲を掻き立てる、またそのような高額カードが店に並ぶことによってコンテンツ自体が栄えている雰囲気を出すなどの効果がある。

つまり、相対的に目玉カードの排出率を下げ、相対的に希少価値を高めるためにあえてそういった使われない(使われにくい)カードを作り、収録しているのである。
そういったカードは存在する意味がないのでは?と思われるかもしれないが、そんなことはない。
もちろん初心者や小学生が遊ぶためのカードとしては使えるし、何よりそういったカードが収録されなければ目玉カードの排出率は上がってしまうので希少価値が落ちることになる。そういう意味では使われていない有象無象のカードも役割を果たしているのである。

ゲームのポケモンにも似たようなことが言える。
2番目の項目でも触れたように、ポケモンの種類が少なければ少ないほど構築は固定されやすくなるので使用率下位のポケモンもそういう意味では役に立っているし、環境によっては思わぬ形で対戦で役割を果たすことがある(セジュン氏のパチリスなどが代表例)ため対戦においても全く不要な存在ではないし、何よりポケモンは対戦だけではなく、グッズやアニメなどいろんな形でメディア展開されているため、そういった方面でマイナーポケモンも(場合によっては対戦で強いポケモン以上に)必要な存在となる。対戦での強さはないがキャラクターとしての人気があるピカチュウやブイズなどがそうだろう。
彼らもそういった意味で、ポケモンというコンテンツには必要な存在である。

まとめ

いかがだっただろうか。

感情論は排除した上での考察であるため非常な内容も含まれたかもしれないが、活躍できないポケモンが多数いる環境に不満を持っていた方が少しでも納得してくれたら幸いである。

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