「大型大会に向いているデッキ」って何?

今年も1か月が経過し、2024年に馴染んできた頃と思う。
2月中旬にはCL福岡が控えているわけだが、ここでまた一つ、昨年の一年を通して私が学んだことをなんとなく書き綴ってみようと思う。

それは、「大型大会に向いているデッキと、向いていないデッキ」とは何かということである。
先に言っておくと、昨年書いた記事に「素直に練度の高いデッキを選ぶべきだった」と書いたが、それは今回は考慮しないものとする。

そもそもこのテーマで記事を書こうと思ったきっかけだが、「ロストギラティナが大型大会にあまり向いていない」と複数名の知り合いが言っていたことである。

私はこの言葉の意味が当時よくわかっておらず、CL京都にロストギラティナのデッキを持っていったのだが、そこでの試合を通して感じたのが、「大会の勝率において、メンタルが重要な因子となる」ことである。
要するにどの相手にどうプレイすれば勝てるかといった理論以上に、平常心でプレイができることが大切だということである。理想のプレイングさえできれば完璧デッキであっても、精神面が乱れてしまうとその「理想のプレイング」ができないので意味がない。
デッキ選択の際に理論値ばかりで考えてその辺りを度外視し、結果的に「プレミして負けた」を経験した方も多いのではないだろうか。

以上のことを念頭に置いて、私が大型大会に適性があると考えているデッキの特徴は

①明確な有利対面が環境に存在する
②先に殴って制圧するスピード重視型
③殴り出すまでの要求値が低い
④緻密な計算を必要とせず、頭をあまり使わない

の4つである。(もちろん全てを満たしている必要はないと思う)

それぞれの理由を説明していくと、

①について。皆さんも有利対面を踏んだ時、バトル場のポケモンをめくった際に

「あ、これ勝ったわ。」

と思うこともあるだろう。その「勝った」という確信が何より大切だと思う。勝ちを確信することによって緊張が解け、平常心でプレイしやすくなる。(もちろん気を抜いていいわけではなく、有利対面だからこそ絶対に負けないように丁寧にプレイする必要があるのだが)

次に②について、どうしてスピードに寄せたデッキタイプが向いていると感じるかだが、それは「相手が事故った時に楽に勝てるから」。相手の手札が悪くて展開が遅れた際、立ち上がりの遅いデッキやサイドをあえて取らせるカウンター系のデッキよりも殴り始めの早いスピードデッキの方がどんどん相手の盤面の主要ポケモンの数を減らしてサイド差をつけ、サイドレースで追いつけないようにしていくことができる。これがもし殴り始めの遅いデッキだった場合相手に1ターン猶予を与えて態勢を立て直される可能性があるし、カウンター系のデッキだった場合はサイドを先に取ってしまったことが逆に仇となる可能性がある(後述でも触れる)。

③はもはや説明するまでもない。というより大型大会に限ったことではなく、殴るまでの盤面要求値の高いデッキは失敗のリスクが高い。まして試合数の多い大会となると数回失敗してもおかしくないため、規模の大きい大会ほどそういうデッキは相応しくないと言えるだろう。9試合を勝ち抜くためには安定感が重要となる。
とはいえ成功した時の爆発力が桁違いであることが多いため、試合数の少ない店舗大会などには向いていなくもないかもしれない。

最後に④についてだが、以前CLの配信チャット欄にて「頭を使わないデッキを選択するのも戦略の一つだ」というコメントが見受けられた。試合数が多い大会となると、途中から脳の疲労によってプレイングミスを誘発することも多い。ましてプレイングの選択・分岐の多いデッキタイプともなるとそういったプレイングミスが多発するので、余程集中力の強い人でなければ9試合を戦い抜くのは困難だろう。考える要素が少ないデッキの方が終盤まで脳が持つ、ということである。もちろん適度に糖分を摂取する、空腹などの集中力を乱す要素を作らないといった配慮も重要である。


ここまで長々と書いたが、一言で言ってしまえば

楽に勝てる試合が多い方がいい

という言葉に集約される。楽に勝てる試合があると緊張が解けてメンタルが安定するという単純な話である。

ここまでそれぞれの理由を書き連ねたが、では具体例を見ていきたい。

・ミュウVMAX(レギュ落ち済み)
大型大会向きのデッキタイプとして個人的に最も典型的な代表例がこれだと思っている(向いているというより単にデッキそのものが強過ぎるだけという考え方もできるが)。上記の①~④をすべて満たしており、CL2022愛知準優勝、JCS2023マスターカテゴリ優勝、CL2024京都ベスト4など、長い間大型大会で安定して上位に食い込んでいたという印象。環境に有利な相手がそれなりにおり、かといって苦手な相手も少なく、その苦手な相手に関してもジャッジマンや雪道などを絡めて相性をひっくり返すことすらできる。ダブルターボ1枚で手軽に殴ることができ、大量ドローによって必要札を引き寄せることが可能、やることが単純故ジャッジマンなどの手札干渉も遠慮なく打つことができる。最速後攻1ターン目から殴り始めるため、相手は1ターンの遅れが命取りになる。

・ルギアVSTAR
こちらもレギュ変更で現在は数を減らしたが、『古代の咆哮/未来の一閃』発売前まではそれなりに活躍していたデッキ。一度アッセンブルスターを宣言してしまえば攻撃の手が止まることがないため、こちらも相手が下振れてしまえばそのまま一方的に制圧できる。条件さえ満たしてしまえば殴り始めも最速2ターン目で可能。実際CL横浜2024でこのデッキを持ち込んだ知人が数人いたが、そのうち一名を除いて全員が6勝以上を達成している。

・ミライドンex
意外に思われるかもしれないが、個人的に向いているのではと思ったので抜粋。エレキジェネレーターでの運用素が絡むためあまり向いていないと思われがちだが、ミュウVMAX同様最速後攻1ターン目から高火力を出すことも可能で、かなりスピードに寄ったデッキとなり、一度殴り始めてしまえばそのままストレートに制圧することが可能。実際昨年1年間でCLを2度も制しているのが何よりの証拠と言えよう。
現在はレギュ変更で多少パワーが落ちたが、テツノカイナexを取り入れてからはスピードや制圧力にさらに磨きがかかり、一度波に乗ると手が付けられないデッキとなった。

マッハサーチ型リザードンex
あくまで同じデッキタイプ内での相対的な評価になるが、重要だと思ったので抜粋。
昨年の年末からリザードンexが急増。初めはエヴォリューション型が主流だったが、後からピジョットexと組んだ型の方が主流となった(現在はレギュ変更によりビーダル型が増加傾向にあるが)。使用率が逆転した理由はやはり上述した②を満たしているからではないかと思う。じゃんけんに勝った時に先攻を積極的に取るため先に殴り出しやすく、一度盤面が完成してしまえば好きに動けるため、少しでも出遅れた相手を一方的に叩くことができる。エヴォリューション型の場合はあえてサイドを取らせて捲るタイプのため相手に時間的猶予を与えやすい、特定の動きを要するため失敗のリスクがあるなどの欠点が目立ち始めていた。(無論こちらにしかない長所もあるのだが)

ここまで、「大型大会に向いている」デッキを紹介したが、では原点に帰り、なぜロストギラティナが大型大会に向いていないと言われたのか、その理由を説明していきたい。

①'環境に明確な有利対面が存在せず基本的にすべての体面に対してあいこなため、全ての試合で慎重にプレイしなければならない

②'殴り始めが遅いスロウスタートなデッキのため、相手に時間的猶予を与えやすく、下振れた相手を狩りづらい

③'ギラティナが殴り出すまでにロストを溜めた上でデッキにエネルギーを確保しミラージュゲートを引くというそれなりに要求値の高い下準備が必要となるので、失敗のリスクもそれなりにある。

④'はなえらび一回一回に頭を使わされ、選択を一度誤るだけで終盤リソース不足に陥るリスクがあるため、毎試合かなり緻'密な計算を要求される。

⑤'終盤の手札干渉に極端に弱いため、サイドを先攻したことが逆に仇となる可能性があり、事故った相手に対して無暗に攻めることができない

これらからわかるように、ロストギラティナというデッキは上述した①~④の全てと真逆の性質を持っている。

明確な有利対面が存在しないということは、全ての対面が己との戦いになってしまうということでもある。
となると楽に勝てそうな試合は「相手が事故った試合」くらいのものということになるのだが、ロストギラティナ…というよりロストデッキ全般は殴り始めが遅い+終盤の手札干渉に非常に弱いという性質を持つため、基本的に相手にあえてサイドを先行させてこちらから先に手札干渉をして逆転するという側面が強い。もちろんそういう戦術は相手が手札干渉を乗り越えた際にそのまま負けるリスクがあるのは言うまでもないが、相手が仮に手札事故を起こしたとしても、こちらが無暗に攻めてしまうと終盤に手札干渉で一気に逆転される可能性もある。(実際にロストバレット対面でサイド6枚ー2枚まで追い詰められた後にナンジャモを打ったらそのままサイドを1枚も取られずに勝利したこともある)
また、ロストデッキの場合ロストに置いたカードは二度と使えないという性質上リソースの管理が非常に大切であり、もし間違えてしまうと、相手を追い詰めたと思ったらエネルギーが足りず技が打てなくなるということも起こり得る(特にロストに慣れていない人の場合)

以上から、ロストギラティナは「楽に勝てる試合」というものが特に少ないデッキであり、1試合1試合頭を使って慎重にプレイしなければならないため、常に緊張感との戦いになる。
大型大会にはあまり向いていないデッキと言えるのではないか。

また、私はさっき「ロスト全般」と書いたが、ロストのデッキ全てがCLに不向きだとは言い切れない。現に昨年1年間ではマスターカテゴリでギラティナがほとんど上位に上がれなかった一方、ロストバレットは2回も優勝している。
ではロストギラティナとロストバレットの違いは何か。

まず1つ目の違いとして、ロストバレットはギラティナに比べると序盤の下準備の要求値が低い。最悪先攻最初のターンはキュワワーを2~3匹並べるだけでいいし、後1でもキュワー2体とウッウだけで攻撃が可能。ギラティナの場合はキュワワー1~2体(対面によっては3体)+ギラティナVを1~2体(後攻なら2体は必要)と、盤面に準備しなければならないポケモンが多い。

2つめとして、ロストバレットはギラティナと比べるとスピードが速い。ギラティナはよほど上振れない限り先行2ターン目でミラージュゲートを使用することはできないが、ロストバレットの場合ギラティナと比べてベンチの枠に余裕があり置けるキュワワーの数が多いため、先2でミラージュゲートまで行きやすい。また、はなえらびとアクロマ以外でロストを溜める手段がギラティナの場合はアビスシークのため技を打たなければならないが、バレットの場合はスターアルケミー→ロストスイーパーなので、技を打たずともロストを2枚増やすことができる。そのため先2ミラージュゲート、後2ロストマインまで到達することも容易である。

PJCS2023シニア部門の決勝では先2月光手裏剣で相手のテッポウオを全滅させて一方的に盤面を破壊するという展開が見られたが、バレットではなくギラティナだったらあのプレイングは恐らくできなかっただろう。

先2で月光手裏剣まで行ければ相手の盤面を破壊して大幅に相手の展開を遅らせることもできるし(場合によっては月光手裏剣を打っただけで投了を貰える場合もある)、ベンチの枠やリソースに余裕があるためヤミラミを2体立てて手札干渉が来ても殴り続けられるように盤面を作ることもできるのがギラティナにないロストバレットの強みである。
またロストバレットはすごいつりざおなどのサルベージ系のカードを多めに投入することができるのに対し、ギラティナは枠の都合上2枚が限界だったりする。そのため花選びですごいつりざおを1枚ロストに置くだけでも命取りになってしまう。これもギラティナのリソース管理が難しい所以である。

実際ポケカ四天王をはじめとした強豪プレイヤーがCLやJCSにロストギラティナを持ち込むところはあまり見られなかった。(イトウシンタロウ選手がCL2024横浜の予選で使用していたのがおそらく最後。この時はギラティナでのDay2進出者が知人にも多かったため比較的動きやすい環境ではあったようだが)
彼らはこのデッキの弱点を理解していたからこそ選択していなかったのではないだろうか。

以上から、ロストのデッキを大型大会に持っていく場合、ギラティナではなくロストバレットを推奨したいと個人的には思う。

これらが、昨年1年を通して学んだことである。
大型大会では結果を残せなかったが、かなり有意義な1年になったので、デッキ選びに悩んでいる方がいれば、ぜひ一つの考え方として参考にしていただければと思う。

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