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「自分も使えば勝てる」という罠
先日ポケモンカードのCL宮城があり、マスターカテゴリで優勝したミライドンexが流行している。
ミライドンexはそこまで高度な計算や思考が求められる構築ではなく、初心者にも気軽に勧められるデッキタイプであると言える。
実際優勝したイナゲタ選手の構築はジバコイルVSTARが採用されている以外は至ってシンプルなものであった。
しかし、全ての優勝デッキがそうだというわけではない。
中には、「真似することをあまりお勧めできない構築」も存在する。
2016年のポケカの世界大会で優勝者したイトウシンタロウ選手を例に挙げると分かりやすいのだが、彼は同大会の直前のシティリーグで「とーしんロスト」という構築を流行らせている。
簡単に説明するとこだわりベルトを多投したロストリザードンなのだが、これはかがやくアマージョなどによる回復やHP280のVSTARに対応するために編み出されたもの。この構築は構造自体はシンプルで、初心者にも扱えるものだと言えるだろう。
しかし、彼はそうではないデッキでも結果を残している。
例えば、彼が2019年頃にチャンピオンズリーグで使用し流行させた「カエループ」という構築。
![](https://assets.st-note.com/img/1681330260085-qv1ObDe2dM.jpg?width=800)
早熟ハーブとパワードローを繰り返し、超ブーストエネルギーでおぼろぎりを繰り返し打つというかなり変わった構築なのだが、イトウ選手とあむ選手はこれを使用し、イトウ選手に関してはベスト16という成績を収めている。
その後、この構築を真似して使用していたプレイヤーは一定数いたが、上手く回すことができない人が多かった印象で、それ以降目立った成績はない。実際(早熟ハーブを使用していたとはいえ)2進化ポケモンを3体立てる、1枚しか入っていないエネルギーで技を打つというかなり難易度の高い構築だと言える。
これはこの構築が上級者ならではの構築であり、付け焼刃の練度で使用できるものではないことが原因として挙げられる。
複数のデッキを使い構築の論理や戦術性を磨き上げ、さらにそのデッキを何十回も回した結果この成績に至ったわけであり、真似をすれば誰でも勝てるというものではない。
一つの経験として試しに使ってみるのはいいことだが、「使えば自分でも勝てる」と安易に思ってしまうと罠に嵌ってしまうことになるだろう。
もう一つの例として、イトウ選手はその後ラフレシアのデッキを使用し、話題になったことがある。
![](https://assets.st-note.com/img/1681332465429-4yeLkV97jm.jpg?width=800)
ご覧の通りたねポケモン主体のデッキをを封殺するカードなのだが、これは当時流行していたTAGチーム(主にピカチュウ&ゼクロムGX)や、技「アサルトサンダー」を持つサンダー、ウルトラネクロズマGXに対するメタとして使用されていたものである。
(当時はアタッカーがたねポケモンのみのこの3デッキが3強だったため)
このデッキでもイトウ選手は上位成績を収めている。
このカードはその後特に流行った様子もなく、使用している選手は(筆者個人の観測ではあるが)目撃しなかったため、ほとんどのプレイヤーは当たっても事故として割り切っていたのかもしれないが、もしこのデッキを真似するプレイヤーが大勢現れたらどうなっていたか。
そもそもこのデッキが成績を収めることになったのは、このラフレシアの認知度の低さ故である。
そもそもこのカードの存在を知らなかった人も多く、ベンチにナゾノクサが出されても何をしてくるのかわからなかったプレイヤーも多いだろう。
しかし、このラフレシアが一度話題になり認知度が上がってしまった場合、構築・プレイング段階でこのカードをケアされてしまうことになりかねない。
ポケカの話ではないのだが、もっとわかりやすい例が、本家ゲームのポケモン対戦で倉本蘭氏が使用したチョボマキであり、「ウーラオスがチョボマキを突破できない」ことを他のプレイヤーが知らなかった故にあのような成績を収めることができたが、あの後氏の構築は話題になり、瞬く間に広まっていった。
しかし、一度この事実が認知されてしまうと、対戦相手はそれを分かった上で動いてくるため、ウーラオスでチョボマキに突っ込んでくることはなくなる(もしくは飛行技「アクロバット」を搭載したウーラオスであればそのままダイマックスして突っ込んできたかもしれない)。
いわばこういった初見殺しのカードで成績を収めることは先駆者特権であり、一度誰かが結果を残して認知度が上がった瞬間にそのカードは腐ってしまい、役割を失ってしまうことになる。
このように、有名な選手が結果を収めたデッキは、「誰が使っても強い」ものと、「誰が使っても強いわけではない」もの(上級者ならではの構築、あるいは認知度の低さを武器にした初見殺しの構築)が存在する。
真似をする前に、どちらなのかを見極める必要があるだろう。
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