「マイナー」について改めて思ったこと。

最近疑問に思ったことがある。

例えば、ポケモンのランクバトルで30位圏外のポケモンしか使わないという縛りを自身に課しているプレイヤーは、上位のポケモンの御膳立てを必要とするマイナーポケモンは使用しないのだろうか。

これは一例だが、例えば「スカーレット/バイオレット」では、特性「あめふらし」のポケモンは一般ポケモンの中ではペリッパーしか存在しない。
もしシングルバトルでペリッパーの使用率が一桁だった場合(実際は違うがあくまで例えとして)、フローゼルカマスジョーのような雨天候を必要とするマイナーポケモンは一切使用しないのだろうか。もしくは本人に「あまいごい」という技を搭載して自力で展開するのか、そもそも雨というギミックを使用しないのだろうか。

本人に「あまごい」を搭載するのであれば、無起点でこの技を使用しても返り討ちに遭うだけなので、相手が確実に交代するような有利対面でしか展開できず、そうなると安全にあまごいを使用するために別のポケモンの御膳立てを必要とする。これではペリッパーを使うのと何も変わらないどころかむしろ余計な手間になってしまう。それに、技のスペースを一つ割くため当然ポケモンとしてのパワーも落ちてしまう。

雨のギミックに組み込まないとなると、素直に雨パに入れたほうが強いポケモンは大きくパワーが落ちることになってしまう。「からをやぶる」を習得したカジリガメや別の天候特性を持つツンベアーのように他の型でも使用できるポケモンならまだしも、先述したフローゼルやカマスジョーはシングルにおいては発揮できる強みがほぼ雨しかないため、ペリッパーと組ませたそれらの下位互換になってしまう。

話をわかりやすくするためにありえない状況設定をしたが、実際このように上位のポケモンのサポートがあってこそ力を発揮できるマイナーポケモンというのは一定数存在するため、マイナーという縛りを設けると彼らの大半はパワーが落ちてしまい、中にはそもそも使えなくなってしまうポケモンも存在する。マイナーに拘るあまりにマイナーの力を殺してしまうのでは本末転倒ではないか。

というのが、以前書いた記事の内容である。

ここまでは前置きとして、今回はそれに付け足すような形で、いろんな切り口からマイナーについての考察をしていきたい。
個人的に感じたことを事実を交えながら書き連ねていく。

「経験」と「知識」

こんな検証結果が存在する。

とあるTCGにおいて、普段ファンデッキ(勝つために構築されたデッキではなく趣味で組まれたデッキのこと)で遊んでいるエンジョイプレイヤーと、環境デッキをガンガン使って大会で結果を残しているプレイヤーに同じ条件でマイナーなカードを中心としたデッキを組ませたところ、勝率が高かったのは後者のプレイヤーだという。
実際「ファンデッキしか使わない人のファンデッキより、普段ガチデッキ使って勝率上げてる人が作ったファンデッキの方が強い」という教えはTCGの世界でしばしば聞くことができる。

これはなぜかというと(私個人の見解だが)、
プレイヤーとしての知識と経験の差だと考えられる。

そもそも大会で何度も結果を上げている構築というのは、それだけ勝つための合理性が詰まっている構築であり、勝つための道筋やそれを再現するための動きがきちんと考えられており、環境に対する回答もしっかり見られる。

ポケモンのランクバトルも同様で、(私の主観だが)マイナー使いを名乗っている実況者たちよりも、普段無難なパーティを使ってレート2000を達成している有名実況者の方がマイナーなポケモンを使いこなせているし、何よりそういったポケモンの強みと弱み、相性補完(誰と組ませれば強いか)などをしっかり把握できているといった印象である。

つまり、そういった上位の構築を使っていくと、自然と構築のセオリーが身についていき、そこで得た知識や感覚はマイナーを使う際にも活かされるということではないだろうか。

つまり、それらを経験しないということは、いかにして合理的なデッキが作られるかという構築のセオリーを学ばないということであり、それを経ていないプレイヤーが自力でデッキを作っても再現性の低い無茶な構築が出来上がってしまう。メジャーなカードを使ったデッキでもそうなってしまうだろうし、ましてマイナーなデッキで合理的な構築を組めるはずもない。

実際何人かのそういったプレイヤーを見てきたが、TCGなら明らかに鬼要求値で回らないデッキを作っていたり、ポケモンのランクバトルならポケモンの耐久値や火力を考慮できていない積み技構築が出来上がったりといった光景が多かった。

受験に例えるなら、教科書の例題や基礎問題集を解かずに入試問題に挑戦するようなものであり、スポーツで例えるなら基礎練をろくにせずにプロのやっている難解な技を習得しようとしているようなものである。

漫画『スラムダンク』において序盤に桜木花道がバスケ初心者でありながら「スラムダンクがやりたい」と駄々をこねるシーンがあるが、あれに近い状況とでもいうだろうか。

マイナーポケモンを長く使っていればマイナーポケモンの使い方が上手くなるということはない。大事なのは「基礎」であり、上述した構築のセオリーが身について初めてそういったポケモンを使いこなせるようになる。
テニスの錦織圭選手がキャリア初期に披露していた「エアK」というジャンプしながらチャンスボールを打ち込む難解なショットがあるが、初心者がエアKだけひたすら練習すればエアKを打てるようになるだろうか。

もちろん中には上位を目指すことを目的としないプレイヤーも存在する。しかし、「マイナー使い」を名乗る人たちも基本的には「勝つ」という目的は持っているし、勝てれば喜ぶ、勝てなければ悔しがり機嫌を悪くするといった光景は多く見られる。勝つことを目的とするにせよしないにせよ、ゲームは勝ってこそ喜びが得られるものであることには変わりない。
勝つことを少しでも目指すのなら、一度ゲームに対する入口を変えてみるのも、新たな楽しみを見出すきっかけになるのではないかと思う。

なぜ「マイナー」たるか

マイナーとは基本的にあまり使われないキャラクターやカードのことを指すが、ではなぜ使われないのだろうか?

そもそも彼らも最初から使われなかったわけではない。発売直後に、いろんなプレイヤーによっていろんなカードが使われる。
当然好成績を上げている上級者プレイヤーもそういったカードを一度は使ってみることが多いし、中にはあまり強くなさそうなカードを進んで使う物好きなプレイヤーもいる。実際ポケモンでも、有名な高順位系実況者が発売直後にマイナーそうなポケモンを使う光景はよく見られる。

つまり、マイナーポケモンがマイナーたる所以は、多くのプレイヤーの試行錯誤の末「使えない」と認定されたからである。残酷だがこれが現実。

もちろん、まだ誰も発見していないそのポケモンの強みやギミックが残されている可能性はあるし、そういったものがかなり時間が経ってから発見される場合もある。また、対戦環境とは常に絶えず変化しているものであり、環境のトップに新たに躍り出たポケモンに対して有利を取れることで突然役割を得るマイナーポケモンもいる。

しかし(これは一個上の項目の話にも通じるが)、上級者でも発見できなかった隠れた強みを、まだ成績も残せていないプレイヤーが果たして発見できるだろうか。

もちろんそういった隠れた才能を模索するのもポケモン…というよりキャラクターゲームの醍醐味ではあるが、そう簡単にいくものではないのも現実。
そういったポケモンに活路を見出してやるために、自身がそれ相応のプレイヤーに成長することを目指すのも、一つの楽しみ方ではないだろうか。

「採用理由」について

これは以前の記事でも話したかもしれないが、マイナーにポケモンを縛るということは「ポケモンの採用理由が使用率順位になる」ということである。

そうなると、そのポケモンの強みや環境に対する機能、構築の中での役割は後付けということになり、役割の曖昧なポケモンを採用することになってしまう。

2014年の世界大会でセジュン氏がそれまで誰も見向きもしなかったパチリスというポケモンを使って優勝したというエピソードは有名だが、セジュン氏はパチリスが好きだったわけでもなく、変わったポケモンを使いたかったわけでもない。パチリスが彼の構築の最適解だったというだけの話である。具体的には、当時猛威を振るっていたファイアローのブレイブバードを「このゆびとまれ」で誘いつつ半減で受けられるポケモンを捜したところ該当するのがパチリスだけだったという。

シングルでも、ランクバトルで使用率圏外の変わったポケモンを構築に組み込んで高順位を達成するプレイヤーは定期的に現れるが、彼らはそのポケモンの使用率など一ミリも気にしておらず、ただ単に彼らの構築の足りない穴を埋めるピースとしてそのポケモンがぴったりハマったから採用した、というだけである。

使用率の低いポケモンというのはそれだけ活躍できる構築や環境が限られるため、わざわざ使おうとしても活躍は見込めない。彼らが力を発揮するのは「偶然そのポケモンの力が必要になった時」である。

構築の中での役割、環境に対する機能やきちんとした他のポケモンとの補完があってこそポケモンの力は発揮されるのであり、使用率を理由にポケモンを選ぶと、そういった役割は後付けで曖昧なものになってしまう。これは強いポケモンだろうがマイナーポケモンだろうが同じで、高使用率のポケモンを「順位高くて強そうだから」という理由でなんとなく選んでも(ポケモン自体のパワーがあるので一定の働きはするだろうが)きちんと合理的に選ばれた構築より弱いのは明白である。

パーティを組む際、基本的に構築の中核を担うポケモンを最初に決めるため、そういったポケモンは各々好きな理由で選べばいいだろう。しかし、そのポケモンの穴を埋めてくれるポケモンは、きちんとポケモン自体の強みと相性、そしてパーティに欠けている要素、それらと相談して決めたほうが、(マイナーなポケモンであっても)強い働きができるはずである。

「差別化」

マイナーを好むプレイヤーが陥りやすい罠が「差別化」。

これは何かというと、AというポケモンとBというポケモンを比較した際、Aの方がステータスや技などが総合的に勝っているが、BはAにはない強みを持っているからBを採用する理由がある!と主張するものであり、そのBの持つ強みを「差別点」と呼んだりする。

有名なのが某YouTuberが過去に動画でネタにしていた「レアコイルはジバコイルより素早さが高い」というものだが、ここで注意したいのは、レアコイルとジバコイルの素早さの違いはあくまで「違い」でしかなく、「優劣」ではないということ。(理由としては、ポケモン対戦では必ずしも素早さが高い方が強いとは限らないことと、そもそも素早さが求められない場面も数多く存在するということが挙げられる)

パーティにレアコイルかジバコイルを採用することになった場合、その枠に何が求められているかで最適解は変わる。
例えば、カプ・コケコやクロバットのようなS種族値130のポケモンが構築単位で重く、それらに対して有利でかつ先制できるポケモンが必要な場合は、こだわりスカーフを搭載したレアコイルを入れるのが最適解となる。しかし、単にこの枠に電気タイプもしくは鋼タイプのポケモンが求められているだけで、特に素早さが求められているわけではないなら、ジバコイルの方が最適解となってしまう。(とりわけ鋼タイプは耐久力を求められることが多いので、耐久が高く火力もあるジバコイルの方が最適解になる場面の方が多いし、なんなら彼らは「アナライズ」という低い素早さが有利に働く特性も持っている)
その場合、この枠にレアコイルを入れてもジバコイルの劣化にしかならないのは明白だろう。

あくまで「差別点」は「違い」でしかなく、これが「利点」になるかどうかは構築に依存するのである。しかし、マイナーを好むプレイヤーはこの「差別点」を、パーティでの役割を考慮せずに勝手に「長所」と読み替えて採用してしまうことが多いのではないだろうか。

まとめ

いかがだっただろうか。
この記事を読んでくれた皆さんも、ついやってしまうことがあるかもしれないし、私自身も無意識にやっていることはあるかもしれない。

なかなか見向きもされないポケモンに活躍の場を与えてやるためにも私自身も努力は重ねていくつもりだし、皆さんももしそういったポケモンの力を引き出したいなら、そのためにこれからも頑張ってほしいと思っている。

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