枝豆が、憎い。
つるりとした光沢。
枝豆をつまみ上げ、これのよさが分からん、と私は思う。酒のつまみはもっと、塩っ辛い方がいいに決まってるだろう、とも。あるいは私の味覚が未熟なのか、いいや俺の舌は成熟している、等と自己肯定、自己否定を行ったり来たりする。
しかしそのかたわら、不味い不味いと繰り返すたびにかえって枝豆の虚像は鮮明になり、なにやら憎い憎い、と繰り返すうちに恋に落ちる往年のツンデレアニメヒロインのように(ところで私は、一度憎いと決めた相手には一生態度を変えまい、と誓っている)、枝豆のことが気になり始める。
つまり、今この目の前に枝豆なぞ存在しないのだけれど、恋しい。
想像する。枝豆を口に含み、歯で加工せずに飲み下す。あっ。噛みそびれた。
その瞬間、食物を誤って丸飲みしたときに感じる喉元の異物感、不快感、はなはだしく、前言撤回、やはり枝豆なぞに喰い物足る資格なし、とやつ当たる。
やつ当たるのはいいが、はっきりしない気持の悪さはみぞおちめがけて急転直下、わだかまりはここに極まり、堪えきれなくなった私は、嘔吐した。
くそ、なぜ私がこんな辛酸を嘗めなければならぬのか、しかもあの忌々しい糞豆助豆のせいで、等と言うあいだにも寄せては返すえづき相まって、泣けてくる。涙が、垂れてくる。くそ、くそ、くそ。
という夢を見た。
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