これから千刃花と出会う、すべての人へ

はじめに

わたしは現在とある作品(サークル)のファンクラブに入っている。
先日6月4日はそのファンクラブが設立されて1周年ということらしく、
お祝いの意も込めて こうして筆をとっている次第だ。

短い人生を振り返ってみると、今までそういった類の――例えばタレントやアーティストの――ファンクラブには興味すら抱いたことはなかった。
単純に面白いと思ったモノを手の届く範囲で追いかけているだけで十分に満たされていたし、ファンクラブに入っていなくともそのコンテンツに対する思い入れは誰にも負けていないという謎の自負もあった。
なんなら「ファンクラブなんて年会費を払うことでしか愛を示せない人たちが入るものだ」とか……いま思えばとんでもなく穿った見方をしていた時期があったことも、ここで懺悔しておきたい。

今でこそ特定のクリエイターをサブスクライブ(有料登録)する「推し活」の文化はサブカルチャーの垣根を越えて社会的に認知されつつある。それはひとえに時代の要求によって、クリエイターと作品を受け取る人の距離が縮まったからであろう。

時代が変われば、そこに息づく人の価値観も変わっていく。
筆者も遅ればせながら ようやく「推す」意味や価値が わかってきた。

エコオタクならぬ、逆不経済オタク(酷)だったワタシも、
ようやく「推せるコンテンツ」に出会ったというわけである。



千刃花〜帝国特務戦闘部隊〜作者:REN'sJackson
それは声劇という狭い界隈にあって、ひと際 異彩を放っている物語だった。



千刃花という作品に これから出会う人たちのために。
そして願わくば この記事を読んだ人が、
筆者と同じように この作品を「推したい」と思ってもらえるように。

今日は皆さんに、夢と未来の話をしようと思う。


概要 ― 目次

「このnoteを見ている人は、声劇がどういうモノかご存じであろう」
という前提のもと、
「千刃花の名前は知っている、興味はある、よくわからない」
といった、これから千刃花と出会うかもしれない、
これを読んでいるアナタの敷居をほんの少しでも下げられるように、

・声劇台本としての魅力
・物語としての魅力
・作者REN'sJacksonの魅力

この3つに焦点をあてて、千刃花の魅力を語っていこうと思う。

簡単に言えば……
明日やる台本を決めかねている劇人の皆さんに向けた、
ちょっとしたプレゼンだと思ってもらって差し支えない。


声劇台本としての魅力

魅力を語る前に(前書き)

これを読んでいるアナタは、
普段 どんな基準で演じる台本を選んでいるだろうか。

つける条件は数えればキリがないだろうが、
その根底にあるのは「参加者全員が満足感を得るため」のモノだ。

声劇という遊びは、原則的に他人を巻き込むエンターテインメントだ。
仮に1人劇や朗読であっても、その台本を書いた作者がいるはずだし
台本を書いたのが自分でも、聞いてくれるリスナーがいるかもしれない。

故にそこには「なるべく無難な選択をしたい」心理作用が働く。
例えば、参加者の1人が1時間以内に終わる台本を希望したら、
上演に1時間以上かかる台本は どんなに傑作でも候補から除外される。
すでにご存知だろうが それが声劇という世界のシビアなところだ。

さて、なんで唐突にこんな話をしたかというと。
まずこの作品の魅力を語る上で、声劇台本としての千刃花~帝国特務戦闘部隊~という作品は、どちらかと言えば「選ばれにくい台本」のカテゴリーに入るということを説明しなければいけないからだ。でなければプレゼンの効果は半減するだろうし、なによりここまで読んでくれたアナタに対してフェアではない、と感じたからだ。

千刃花が選ばれにくい要素は だいたい以下の通りではないだろうか

・50話を超える長編であること
 → 声劇として1話から通して演じていくのは困難を極める
 → 途中の話を単発でやっても世界についていけない

・上演時間の長さ
 → 短いモノもあるが平均して1時間以上の上演時間

・叫びセリフの多さ
    → 1人でも叫びNGだと候補から弾かれる

・厨二病な世界観
 → これは趣味嗜好の問題にもなるが、
  固有名詞や横文字の多さを苦手とする人もいる


さあ下ごしらえはここまで。
ようやく本題に入れる。1つ1つ覆していこう。
声劇界隈のちっぽけな常識を吹っ飛ばせるほどの魅力が、
この作品にはあるということを、存分に語っていこうじゃないか!


圧倒的に「見える」声劇台本

とはいえやはり、長期連載の台本を読んでいくのはパワーがいる。
世界やキャラクターをイメージするのも、逐一シーンを想像するのも、
連載が長ければ長いほど前提情報が増えて、不完全燃焼になる気持ちは
とても理解できる。ぶっちゃけ筆者も最初はそんな感じだった。

当たり前ではあるが、やはり前後を読んでいるのといないのでは
演じているときの充実感には雲泥の差があると思っている。
なんだやっぱり敷居高いじゃないか!と思うかもしれないが、

実は千刃花にはそのハードルを下げてくれる
他の台本にはない特徴があるのだ。(筆者の知る限り)
それは筆者が、千刃花にハマれたきっかけでもあるだろう。

それが作者自身が描くキャラクターイメージと挿絵の存在だ。

キャラのイラストや人物紹介は
本編の前ページにある「登場人物・専門用語 一覧」で確認できる
登場人物には花の名前がモチーフで使われる
背景や色彩などもキャラクターを表している
個性豊かなキャラクターがたくさん

このように登場人物には全員キャラクターイメージが描かれている。
長期連載になると登場人物も増えて、関係性も複雑にならざるを得ない。
そういった弱点をキャラの見た目を可視化することによって補い、演じる上でのとっかかりを作っている。初めて見た人でも「この見た目なら、きっとこんな感じのキャラかな?」と、ある程度イメージができると思う。

筆者の主観ではあるが、見た目の第一印象から実際のキャラクターが大きく外れていたことは今のところない。そのスゴさついても後で話そうと思う。

千刃花ほど「顔と名前と性格が一致する」声劇台本はそうないだろう。

各技に設定に基づいたアクションがある
ドラマを演出するワンシーンも

そして千刃花で唯一無二の特徴と言えば物語の挿絵だろう。
これをたった1人でやっている作品を、筆者は今のところ知らない。

異世界ファンタジーでバトル描写ありの長期連載など、
書いたことがある人にはわかるだろう。声劇台本にとって地獄の三重苦だ。
表現自体がとても難しいジャンルを描いているのは間違いないのだ。

それを高い次元で成立させているのは、先述したキャライラストと
作者の思い描いたイメージを一瞬でシェアできる挿絵の存在が大きい。
(日増しに上がっていく作者の画力を観察するのも面白い)

まるで映画やアニメを見ているかのような
直観的なわかりやさすさがあるのは、千刃花の魅力の一つだ。


役割は簡単に、感情は複雑に

見た目の第一印象から実際のキャラクターが大きく外れていたことは
今のところない、と先ほども述べたと思う。これは作品全体を見ても同じことが言える。つまりキャラクターの行動理念や役割がとてもシンプルで物語を通じて一貫性があるということだ。「ブレない」と言い換えてもいい。
故にキャラが読者の中で定着しやすく、演じやすさにも繋がっている。

表面的なわかりやすさとは対照的に、千刃花のキャラクターたちは内面に
複雑な感情を抱いている。ある者は故人への無念を、ある者は悲惨な出自を、ある者は己の無力さを……彼らがひた向きに自分らしく生きているのには、確かな背景とドラマがある。作者のREN'sJacksonは、そういう部分を一切うやむやにはしない男である。是非、気に入ったキャラいたらそのキャラの背景と行く末だけでも追ってみてほしい。きっとそうしている間に他のキャラも好きになってると思うから!

感情が希薄なクーワの象徴的なシーン


主人公不在の功名

千刃花には「主人公」と呼ばれるキャラクターがいない。
言うならば「千刃花」自体が主人公、というのは作者の談だ。

こと声劇台本において、主人公の扱いは難しい。
なぜなら大体の物語において主人公は一番多くセリフを喋るからだ。
つまりそれは、セリフバランスとキャラの重要性が大なり小なり偏ることを意味する。

千刃花の場合は少し違う。ほぼ全キャラクターにスポットライトがあたる。
主人公サイドである千刃花はもちろん、敵サイドのキャラクターにもだ。
どのキャラもメインキャラとして扱うためセリフバランスも破綻しづらく、どのキャラにも見せ場が用意されている。自分が主人公だと思ってやれる物語だからこそ、担当したキャラクターに愛着も湧きやすい。千刃花と声劇の相性が良いと思える理由はそこにある。

またお気に入りのキャラを見つけたら、本編とは別にあるサイドストーリーに名前がないか探してみることをおススメする。サイドストーリーは1人1人のキャラに焦点をあてた1話完結の物語になっている。本編へ繋がる重要な情報が隠されていたり、逆に伏線が回収されたりもする。厨二病バトルだけでなく、ヒューマンドラマを描くことが多いので、戦闘モノに慣れていない人でも比較的やりやすい台本になっているはずだ。


兄妹の絆


物語としての魅力

「異能力バトル作品」リスペクトの拡張性の高い世界観

NARUTOでいう「チャクラ」 ハンターハンターでいう「オーラ」
異能力を使うための燃料のようなモノはどんな作品にも存在する。
千刃花の世界では「刃汽」と呼ばれるこのエネルギーだが、
(作者の妄想を叶えるために)すさまじい拡張性を有している。

例えるならNARUTOの世界なのに魔法使いがいて、悪魔の実の能力者もいるし、念能力もスタンドも使えちゃう死神とボーボボとルパンが同居してるくらいの自由度だ。

こう言うと雑然としているように感じるかもしれないが、本編の中にそれができる根拠や説明がちゃんとされている。厨二病は設定が好きなのだ。

実際にどんなことができるのかは是非物語を読んでみてほしいが、
きっと週刊少年ジャンプやアメコミなどが好きならニヤリとしてしまう
設定やお約束が必ず出てくるのではないかと思う。


正義 vs 正義

いわゆる千刃花は勧善懲悪の物語ではない。
敵味方のどちらにも大切な人、守るべき信念、叶えたい野望がある。
どちらに感情移入しても、どちらかの正義は負けてしまう運命なのだ。
それはとてもやるせなく、ときに熱いドラマを生み出してくれる。

それはキャラクターたちの「人生」が伝わってくるからに違いない。
千刃花のキャラクターたちが個性的である由縁でもあるだろう。
メークドラマがとても上手な作者である。

最愛の人を殺されたラナンキュラスの慟哭


遊び心あるネーミングセンス

千刃花を語る上で欠かせないのが固有名詞のネーミングの良さだ。
バトル台本において派手でカッコいい技名は重要だが、千刃花で
特徴的なのは「字面的にも納得できる」オシャレな技名が多いことである。

一例を挙げると「美•美•美•美」と書いてヴォーグと読む技がある。
これがどんな技か、みなさんは想像できるだろうか?
実はこの技、なにを隠そうオカマが4人に分裂する技である。

バトル描写が渋滞しがちな声劇台本において、
字面だけでどんな技かを直観的に把握できるのは重要な要素だ。

「声に出して読みたくなる技名を意識している」と作者は語る。
実際に技名を叫んでみて、その語感の良さを感じてみてほしい。


千刃花のはじめかた(閑話)

さて、ここまでで千刃花に興味を持ってくれた人へ、
個人的におススメな千刃花のはじめかたを提案してみたい。
ちょっと思いついただけの無駄話なので、興味がない人は
この項目を飛ばしてくれて構わない。

下記URLに本編の章ごとに分けられた相関図がある。
まずは適当にページを開いてみて欲しい。
するとその章に登場するキャラクターが大体わかるはずだ。
そのなかで自分が気になるキャラ、もしくは
「あの人が演じたらカッコよさそう or 可愛くなりそう」
なキャラを、画像と相関図だけでざっくりと探してみて欲しい。


身近にいる気軽に誘える劇人で、良い感じにキャスティングできそうな章をみつけたら、今度は実際に台本ページで目的のキャラが出ている話を探してみよう。ボイドラサーチにも掲載されているので、比率で検索をかけてみても良い。

自分が好きそう!と思ったキャラのサイドストーリーがあったら、
それを読んでみても良いかもしれない。HPに登場キャラの一覧表あったら
いいんだけどね。プロダクションの皆さん、ご一考ください!

千刃花 台本一覧のURL

https://ncode.syosetu.com/n0164fq/


作者REN'sJacksonの魅力

凄まじい更新頻度とバイタリティ

千刃花は2022年 6月7日 現在で50本ちかくの台本が投稿されている。
ちなみに作者が第1章を投稿してから、まだ 2年9か月しか経っていない。
月1本以上のペースで休むことなく台本を更新し続けている。

しかも千刃花は台本だけではない、新キャラのイメージ画像や挿絵、
新作お披露目劇(通称ファーストテイク)の音響まで自身で手掛ける。
ある時はオリジナルで作曲とレコーディングまでしていたこともあった。

終いには作業のしすぎで腰や手首を壊してしまったほどだ。
好きでやっていることだとしても、なかなか真似できることではない。

作品にかける熱意

作者のREN'sJacksonは千刃花のために絵を描き始めたらしい。
実際に以前は現在と比べたら絵のクオリティも高くなかった(十分凄いが)
文章力も1話書くごとに精度が上がってきているように思える。
荒っぽいところがあっても、常にアップデート繰り返している。
完全無欠な形を目指すのではなく、今出せる100%に集中できる。
積み重ねる努力の天才だ。マルチな能力はその結果でしかないのだろう。

ステップアップ志向

やりながらステップアップしていけば良いというメンタリティは、
バンドマンの時代に培われたモノなのかなと、勝手に考察している。
バンドも最初はコピーから始まるはずだ。オリジナル楽曲を聞いてもらうためには、不完全な形を避けては通れない。当たり前のようで、とても勇気のあることだと筆者は思う。だからこそ周囲の人たちも応援したい気持ちになるのだろう。これからは敬意を表して「声劇界のサグラダファミリア」と呼ぶことにする。

夢と未来を

千刃花は現在7人の運営スタッフと共に活動している。
主に広報や宣伝用のラジオ番組、動画編集などのサポートなど。
誰もが千刃花を応援したくて集まったメンバーだ。

千刃花の最終的な目標は「アニメ化して自分で声をあてること」。
その夢と未来に向かって、突き進んでいる最中だ。
筆者はその夢はいつか叶うと思っている。
ファンクラブに入ったのも、その未来が見てみたいからだ。
そして千刃花が好きなすべての人が報われて欲しいからだ。

これからもっともっと盛り上がってくれることを期待している。


さいごに

長い記事を最後まで読んでくれたアナタへ。ありがとうございます。
そして もしこの記事をみて、少しでも千刃花に興味がわいたら、
チラッと台本を覗いてあげてください。
最近は読みやすいように小説版(戯曲のような形式)も投稿されている
ようなので、レビュ―なども書いてあげたら喜ぶと思います。

そしてどこかで、
アナタと一緒に千刃花の劇をご一緒できることを
心から楽しみしています!!


追伸:
プロダクションの皆さん、ファンクラブ1周年おめでとう!
2周年に向けて頑張ってね! 応援しておりますよー!

著:シュンタス・ルメ

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