ハラキリレポ 2

続きです

 次の病院ではババーンと通されました!分娩室!!


 マジで 分娩室
 足開く椅子あんの そこに寝かされんの
 かつ、なんか看護師さんがいっぱいいるの 囲まれてるの オセロだったら外側に私を一人置いたら全員私になるなって感じで 取り囲まれてる
 じゃあ診察していきますねーって アッハイって ナチュラルに足をあの、開くところに導かれるわけですよ
 マジで?
「じゃあ膣か肛門にエコー入れていくんですが」
 マジで???
「じゃっ肛門にしましょうかー」
 マッ

 マジで?????????

 なんか先生がエコーの器具らしき棒を持ってはるんですがいやあのそのあの 太っ
 いえ私もねこんな身なりとはいえそれなりの歳のそれなりの女、そんじょそこらのセルフプレジャーグッズを見た程度では癒される程度でおののくなんてそんないやそんないやいやいやいや待って待ってせめてキシロカインゼリー(エロ同人の為に得た知識)を
「じゃあ入れて行きますね……アレ、キシロカインゼリーは?」
「先生、アレ廃止になったんですよー」
「ショック出ちゃうからって通知あったじゃないですか」
「えー、不便だねー」
 私の始めてはそんなゆるい雑談と共に!!!!!!!!!

 脳裏に過ったのは自室にあまたある無理やり系シチュの同人誌たちでした
 ごめんな、私の可愛い受け達よ…
 ちょっと苦しんでる顔が良いよね!とか言って前置きもそこそこに攻めのアレとかそれなりの器具、触手などを挿入してしまって……
 普通にヤバイね……痛いね……
 
「ウグオアーーー!!!」みたいな声を挙げつつ、内部エコー(?)を済ませ、腹の上からゴロゴログリグリするタイプのエコーも済ませ、採血(二回ぐらいされた)も済ませ、少し待っていてくださいね、と放置される私 in 分娩室
 すげぇな……分娩室に平静で放置されることってそうそうないでしょ……いや知らんけど……
 そんな事を考えていましたら母も通されまして
「分娩室やん……」
「分娩室やんなここ……」
「アンタ何産むの……?」
「……ピノコ……?」

 しかもこの放置時間が割と長いわけです
 稀に看護師さんが様子を見にきてくださるものの割と元気なので(分娩台に)普通に寝そべって母と冷蔵庫の話とかしている私を見ると「ちょっとこの部屋寒いよねー布団着る?」「わーありがとうございますー」とか言うてすごいカジュアル
 今思えばこの放置時間、平静を保てたおかげで母と冷蔵庫の中身の話(夜に開催予定だった一人生姜焼きパーティーのための豚細切れ肉の処遇等)や入院生活に必要であろう物の相談、職場への一時的な連絡が出来たのは本当に幸いでした
 何をおいても入院になりますと個室にまた担架でガラララーーーー
 歩けますよー!私歩けるんですよー!と主張することもままならないまま個室に通されまして、落ち着いているようですしと先生からご説明を賜るわけなんですが、このあたりで私の腹部にてオヤオヤ?と
 オヤオヤオヤ?
 なんか……お腹、痛くない……?

 それまで何か寝転がってるのも変やなと布団に座りながら話を聞いていたんですが、一旦ストップを掛けまして、寝転がらせていただいたあたりでおやおや?がオラオラ?に変身しておりまして
 杉下右京の後ろにクレイジーダイヤモンドが見え隠れしているんですよ
 杉下右京は紅茶を高い位置で淹れたりなんかしておやおや?って優雅なんですが、私がちょっと意識を逸らすとサッとクレイジーダイヤモンドが現れる訳です いやいやいやいやって杉下右京を見ると杉下右京は杉下右京でおやおや?って素知らぬ顔で紅茶を淹れていて今オラついた?オラついたよね?いえいえなんのお話ですかっていやもうほんとなんの話やねん
 そんなことを考えていたら先生が説明してくださっていた手術方法や病状について、また手術後の妊孕性についてほぼほぼまるっと聞き逃しました いやしょうがない 杉下右京がね(相棒あんまり知らない)
 とにかく手術はすぐにという話ではなく、明日一日諸々の検査を済ませた後、明後日に腹腔鏡下で執刀!ということでした
 しかしまだまだ予断は許されず、今後の状況によっては緊急開腹手術もありえますので、と何度か強調されたのは覚えております 何せその為に木曜日まで食事は控えて下さいねと 死かよって思った いや病状がではなく、絶食が


 ちなみに腹腔鏡とはなんぞやといいますと、これまた私も詳しくはないのですが、とにかく小さな穴をいくつかおなかに空けて、差し込んだ細い機械を操作することによって手術をする技術なのだそうです 開腹手術に比べて傷が小さくて済むため予後の回復が早く、また傷跡が残りづらいことも利点の一つとして挙げられそうですね


 まぁなんかそんな感じの手術をしますよとご説明を戴き、お、おう…みたいな感じを出しつつ一旦解散となりまして、母も諸々の準備がある為、迎えに来た父と共に帰って行きました
 病室に一人残された私はといいますとまだ腹部の杉下右京と戦っている訳です
 とりあえず上司に暫く出勤できないだろう旨と詳しい休みについては後々詰める件について話し、Twitterでハラキリ報告などこなしつつ、杉下右京とジャブを交わしておりますとね、段々杉下右京も化けの皮が剥がれてくる訳で 杉下右京とクレイジーダイヤモンドかと思いきやとんだ山の翁な訳で ザバーニーヤな訳で 心臓じゃなくて卵巣を捻ってくる
 私選手もこれには堪らずナースコール セコンド!みたいなノリで押しました
 看護師さんたちも基本私の事を夕方ケロッとした顔で救急車で運ばれてきた女として認識しているので「どうしましたか~」って朗らかに入室してくださるんですが私の腹は今まさにクライマックス 決まったー!フライングン捻転アタック!ありがとう!感動をありがとう!汚い顔の天使たち!みたいな状況な訳です
 セコンド!タオル!みたいな感じで鎮痛剤を点滴していただきまして
 凄いですね鎮痛剤って 点滴されると腕がスッて冷たくなるんですよ 面白かった いや当時は面白いとか言ってる場合じゃなかったけど
 この点滴もまた効いてくるまでに一時間くらいかかるんですが、ついでに言うと効きもあまりよろしく無く、いえ無論鎮痛剤が良くないと言いたいわけではないんですよ 若干痛みのポテンシャルが高かったというか、想像以上の伸びを出したところがあって
 とは言え私も昼過ぎからほとんど半日延々腹痛で苦しんでいて体力の消耗が否めない都合上、微かに鎮痛剤が効いて痛みが引いたところで半ば力尽きるように眠り、鎮痛剤が切れては苦しんでナースコール、みたいな事を都合五回ほど繰り返しました
 もうわんこそばみたいなノリで鎮痛剤を投与されてましたからね 最終的には女将!もういっちょ!あいよ!みたいなテンポの良さで、私がナースコールを押した時点でそのまま鎮痛剤のパックが伴われ迅速に点滴のところにぶらさげられてましたからね
 あまりに騒いだせいかいつのまにやら主治医のお医者さんまで呼び出されており(多分夜中だったのでめっちゃ申し訳なかった)、私は私で痛すぎてお医者さんがいることは認識しつつも何の対話もできずに唸る獣と化し、そんなこんなで発症一日目の夜は明けていったのでしたとさ! ちなみに最後は半分くらい失神しつつ寝ました


 翌朝!
 流れるように朝イチ鎮痛剤キメつつ、いやなんやかんや言うてお腹減ったな…昨日ベーグル食べて終わりやもんな…でも明後日までメシ抜きか……とか朦朧と考えておりました
 そしたら入室してきた主治医のお医者さん(重複表現)がいう訳です
「あの、あんまり放置して大丈夫そうじゃないんで、今日手術しましょうか」
「はひ……?????」
 今日???
 とぅ、とぅでい……???
 聞くところによると昨日伝えられた明後日の日程だとやはり人手の都合が難しく、私の様子が良さそうならば週末まで手術を延期しようという予定だったらしいのです
 が、そこにきて昨夜のわんこ鎮痛剤 五、六杯のかけそば食べ放題状態を目の当たりにして、「いやこれはあかんわ」という判断が下されたようでした
「え、えっとじゃあMRIとかは」
「もう繰り上げ繰り上げでやってきますね。三十分後に検査始めます」
 おっおう~……ホンマか~……
 患者の痛みに応える柔軟でスピーディーな対応最高かよ~~……
 とりあえず母に「手術今日になった」とだけメールを入れる間にあれよあれよとMRIの検査が始まりました
 ちなみにこの時点から移動はおおむね車椅子だったんですが、車椅子って人に押させるのすげー申し訳ないですねアレ…移動してる間五分に一回くらい重くてすみませんって謝ってしまって逆にうざかったと思います あの時の看護師さんすみません
 CTが初めてだった私がMRIを経験したことがあるわけがなく、勿論初体験な訳なのですが、金属類を持ち込むとMRIに突き刺さるとか刺青してると出来ないとか色々聞いていたのでどんなもんかとなんとなくワクワクしながら入って、
「べ、ベイマックスみてぇ……」
 とかうっかり呟いてしまい検査の技師のかたの大笑いを戴いたのは良かったなと思います
 何か曲線感とか白くてでかいのとかがベイマックスみてぇだなと思ったんです ベイマックス見た事ないけど
 そんなこんなでMRI
 何か台の上に固定されて、「おなか痛いだろうけど我慢してね」となんかでかくて重いビート板みたいなものを体の上に載せられるのですが
 おなかは、痛くない(鎮痛剤が効いてるから)
 お腹はいたくないけど、板が
 板のなんか、足(?)部分が
 右乳首をジャストで抉ってる
 言いたい 右乳首痛いんでちょっとずらしてくださいって言いたい 言いたいけどこの技師の方父親くらいの年のころの男性で一番あのそういう事を!言いづらい!言いづらい!
 今思えば「ちょっと苦しいんで」とかマイルドな言いようあったなという感じなのですが、如何せん技師の方も私の腹に負担を掛けまいという配慮か、そもそもそんな時間をかける工程ではないのか、ささーっと準備を済ませて、ちょっとうるさいですからねーっつってヘッドフォンを私の頭にそっと装着して退室なさってしまいまして
 ヘッドフォンから流れる久石譲 私の脳裏には「MRIが久石譲で殴ってくる」という謎ワードが飛来
 後はもう久石譲に殴られながら右乳首を気にする私と穴あきベイマックスが残されているばかりです
 じゃあうごかしまーすグイーーンつってベイマックスの腹に吸い込まれながら、いや言うて長くても五分くらいやろ…我慢しろ乳首が取れるわけじゃあるめえ……と思っていたんですが
 ベイマックスが突然の騒音
 工事か?! 突然腹の上で道路工事でも始まったのか?!
 私を殴っていた久石譲がベイマックスの道路工事で殴られるという状況 突然の仲間割れ 止めてベイマックス!譲はアンタの仲間じゃなかったの?!
 昨日看護師さんも「MRIはうるさいですよー」って朗らかに言ってらっしゃったけどえーマジでうるせぇ! びっくりした! 右乳首のことなどぶっ飛びました いや右乳首が飛んだわけではなくね
 しかも長い 五分ぐらいじゃろとか思ってた私が甘かったんですけど余裕で十五分ぐらいやった
 十五分も経ちますとね、段々朝イチでキメた鎮痛剤にもこう、若干のかげりがね?見えてくるわけです
 また例の杉下右京が顔をだすわけです
 知ってんだよ!もうお前の本性は知ってんだ!そう思うものの、ここで検査を中断しても変に予定が伸びるだけなので耐える私 チラチラと現れては消える杉下右京 ベイマックスと道路工事と久石譲と右乳首と杉下右京と私
 MRIが終わった!乳首も無事だ!とりあえずベッドでちょっと寝られる!かと思いきや
「ハシゴで悪いけどこのまま呼気検査(?)と足の血管のエコーも行くからね~」
 フゥウウ~~~…術前のスケジュールのスピード感の尋常じゃなさ……緊急感が手に取るように感じられる……テトリスのように予定を詰め込んできやがるぜ……
 呼吸器の検査は風邪気味だったこともあってしばし難航、足の血管のエコー(?)は担当の技師さんがめちゃくちゃ美人でなんかいやらしいエステみたいな気持ちになりました(疲労感で記憶があいまいな顔)
 その他もろもろ手術のための検査を済ませ、やっと個室のベッドで横になれる!かと思いきや
「一時に手術室だから、十分前には出られるようにしておいてね~」
 フゥウ~~……スピード感あるゥ~~……(現在時刻十二時半過ぎ)

 じゃあ出ますよーと声を掛けられまして、車椅子移動かなーとか思いきやがらがらーーと部屋に入れられる担架(的なあのキャスターついたベッド)
 き、昨日の記憶が鮮やかー!
 またお前か……みたいな顔をしつつも横たわりまして、一応手術前には間に合った母に見送られつつ手術室にわーって わーいってきまーすっつって
のちの母は「遠足かよっておもった」と証言していますが、うちの家系は伝統的に手術室に入る前の一言が遠足みたいになりがちなので仕方がないですね
 我が家の病弱大怪我列伝~死ぬこと以外は掠り傷~は置いておきまして、担架から何か硬い板のベッドに移動させられて、そこからまたがらがらーーーっと移動しました


 ババーン!手術室!

(もうちょっとだけ続きます)

ハラキリレポ 3|あしたり|note(ノート)https://note.mu/gimgimgimgim/n/nb200722244e4

回る寿司を食べに行きます