Mendelian Randomization勉強日記 4. 因果推論の仮定


mendelian randomization
methods for causal inference using genetic variants chapter 3より

観察研究と因果関係

ことわざ
“association is not causation”
疫学のコンテクストでは、因果は決定論的ではなく確率論的なのでさらにややこしい。例えば、タバコは肺がんのリスクを上げるが、喫煙すれば100%肺がんになるわけではない。

操作の結果としての因果

ことわざ
“no causation without manipulation”
変えられないもので因果を論じることはできない。
観察されたXの違いとYの関連ではなく、X=xと操作したときのYの関連が因果を表す。Pearl先生のdo演算法を用いて表記するとY|do(X=x)

反事実と比較しての因果

アダムが頭痛で目が覚めた。
アスピリンを飲んだ場合、仮に飲まなかったときの世界と比較して痛みが和らいだかどうかをみる。
反事実は観測することができないため、本質的に因果推論は困難である。
“fundamental problem of causal inference”

Y(x)の潜在アウトカムと、操作して得られた結果Y|do(X=x)が同じものか?ということについては議論があるが、同一のものとして扱う。

グラフィカルモデルを用いた因果

DAGについての記載であり、割愛する。

多変量を調整した因果

バックドア基準を満たした共変量調整で因果推論を行う
未測定交絡があるのでは?という問題から逃れられない。

適切な操作変数を探す

操作変数の仮定
1. 暴露と関連
2. アウトカムとは交絡を介した経路で関連することはない
3. アウトカムに直接関連することはなく、暴露を介して間接的に関連する

遺伝子のとき
1. の仮定
暴露との関連が弱い場合→weak instrument
対処方法: データをもっと集める

2.の仮定
比較がフェアか?
暴露以外の背景因子がグループ間で似通っているか
遺伝子の変数とアウトカムの間にbackdoor pathがないか

3.の仮定
2.と一見似ているが、違いは
2.が操作変数の分布がどうなっているかということなのに対して
3.は因果経路に関する仮定であること

操作変数の妥当性

RCT 交換可能性の仮定を満たす。平均因果効果をみれる。
観察研究 背景因子が異なるので交換可能性の仮定を満たさない。
MR(mendelian randomization)では操作変数のサブグループがリスク因子と独立して背景が似通っている=交換可能性があるという仮定が重要。

操作変数の仮定のViolation

pleiotropy

遺伝的バリアントが複数のリスク因子と関連すること(操作変数の仮定の2.か3.に反する)
horizontal pleiotropy (暴露と独立した共変量と関連)ともいう。
vertical pleiotropy (暴露→共変量という媒介変数と関連)は大丈夫。


FTO遺伝子→満腹感→BMIと関連するならFTO遺伝子を用いてBMIとアウトカムの関連を調べるのは妥当
しかし、FTO遺伝子が高血圧にも関連していたらinvalid

生物学的メカニズムがよくわかっている遺伝的バリアントを用いることで、pleiotropyへの心配は軽減される

Canalization

遺伝的変異に適応して個人が適応すること
ノックアウトマウスでよくわかっている
MRにおいて個人間でcanalizationできる程度が違うと問題となる
ある意味、canalizationは操作変数仮定のviolationではなく、結果に過ぎない。ただしMRでみたいのは遺伝的変化とアウトカムの関連ではなく、暴露とアウトカムの関連なので問題になりうる。

連鎖不平衡

近くにあるバリアントは関連するので、本当に因果を引き起こすバリアントと関連した測定されているバリアントで見てしまっているかもしれない。
連鎖不平衡によって関連するバリアントが交絡因子や違う経路でアウトカムと関連するなど2. 3.の仮定に反するかもしれない。
→バリアントと共変量の関連がどれくらいあるか確認することで軽減される。

effect modification

アルコールと食道がんの例
男性しか飲もうとしないので、遺伝的関連は男性で見られるが女性で見られない
→必ずしもviolationではなく、女性はあたかもcontrol groupのように働く

population stratification

遺伝的バリアントの分布が人種や民族によって異なる
→同じ民族に限定してMRする

ascertainment effects

遺伝的バリアントが研究の組入基準に影響すること
一般集団ではあまり起こらないが、例えば妊婦を対象とする場合、遺伝的バリアントが出生率に影響するなら問題となる
特定の遺伝的関連のある疾患を対象とするときも、遺伝的変異のある人はリクルートメントまでに生存している確率がない人より低いため、サンプリングにバイアスがしょうじるかのうせいがある。

操作変数の統計的評価

1.遺伝的バリアントと交絡因子の関連を調べる
課題:関連があったときに仮定の違反なのか、mediationで問題ないのかはわからない。また未測定交絡との関連は評価できない。

2.遺伝的バリアントとアウトカムの関連が暴露を調整すると弱められることを確認する

理想的には操作変数には統計的データによる裏付けよりも、生物学的に裏付けられる根拠があった方がよい。cf. Hillの基準


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