Q. 公衆衛生大学院で学ぶことはどう臨床に役立つのか?

A. 分かりやすい点では、臨床で分からないことがあったときの疑問の調べ方の精度が上がったことと、Top journal(4大誌)へ目を通す習慣ができたこと。

文献評価法(+文献検索法)の履修を通して、印象に残ったこと
 文献検索法、文献評価法の履修を通して、自分が臨床を通して感じた疑問について科学的な評価を行うためには手間がかかり、疫学の知識と素養が必要であることが印象に残った。例えば、以前からPubMedを使用していたが、MeSH termを使用した検索式の作り方を学び、今までのフリーワードのみの検索では拾い上げることができない文献があったかもしれないことを学んだ。また、臨床ではシステマティックレビュー・メタアナリシスの結果や、診療ガイドラインの記載を頼りに治療方針を決めることが多かったが、決してメタアナリシスや診療ガイドラインも完全なものではなく、それらの質を評価する方法があることを知った。これまでは主にランダム化比較試験や観察研究におけるリスクオブバイアスの評価について学んできたが、それらを統合したメタアナリシスや診療ガイドラインにおいても、一次研究の質が低ければ当然結果の信頼性が低くなることが理解できた。
 今後の文献の読み方、評価法として以下の3つの方法を心掛けたい。1つ目は、自分が臨床で抱いた疑問をPECO(PICO)の形に構造化したうえで、狩猟的に(特異度の高い)検索を行い、関連性の高い論文を絞って論文を集め評価する方法である1。忙しい臨床の中で、網羅的に文献を検索することは時間的制約から現実的ではないため、診療ガイドラインやUp to Dateなどの二次文献も有効に活用したい。2つ目は、自分の専門にかかわらず定期的にトップジャーナルに掲載されている論文をピックアップして読む方法である。私の教室では定期的にジャーナルクラブが開催されており、最新のNew England Journal of Medicine, Lancet, BMJ, JAMAの論文を交代で紹介することになっている。自分が担当でないときも、少なくとも4大誌には目を通して、現在世界でどんなトピックが問題になっているのか、最新の研究手法にどのようなものがあるのか学び続けていきたい。3つ目は、自分の研究するテーマや専門領域について網羅的に(感度の高い)検索を行い、評価を行う方法である。講義で学んだアラート機能を用いて、現在の課題研究のテーマについて1週間に1回新しい論文をメールで通知してもらうサービスを利用しはじめた。また、被引用文献の検索なども用いて漏れのないように文献を収集したい。自分の研究仮説にとって都合の良い結果を掲載している論文の記載のみに引っ張られることがないように、講義で学んださまざまなバイアスの評価法を用いて客観的に因果をとらえることを訓練したい。

参考文献

  1. 片岡裕貴 (2019). 日常診療で臨床疑問に出会ったとき何をすべきかがわかる本 中外医学社

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