VB12欠乏による神経障害で、葉酸欠乏を合併している場合に葉酸補充の適応は?



1940-50年代の症例報告/ケースシリーズで、葉酸補充後に神経障害が増悪した例が報告されている(文献1)。
葉酸補充で血液学的異常が改善するため、"マスク"されてしまい、ビタミンB12欠乏が分かりづらくなる懸念や、葉酸が神経障害を増悪させる可能性、ビタミンB12の貯蔵が低下する可能性が考えられている。また、葉酸の投与期間が長いほど、増悪しやすかったようだ。
しかし、葉酸補充vs.Placeboで効果を比較したランダム化比較試験が行われておらず、葉酸補充が悪さをしたのか、ビタミンB12神経障害が増悪した経過をみているだけなのか区別ができず、本当のところはわからない(文献2)。葉酸補充で神経障害が増悪すること自体を疑っている立場もある(文献1)。実際、最近の症例報告でTTPと鑑別を要した葉酸+VB12の両者欠乏例(文献3)では葉酸(経口)・VB12(筋注)を両方補充していた。(それぞれの補充時期の明確な記載はなかった。)
しかし、文献2では、開始時期によらず、長期の葉酸補充を推奨していない。


文献1. Lancet Neurol 2006; 5: 949–60
文献2. Baillieres Clin Haematol. 1995 Sep;8(3):657-78.
文献3. J R Coll Physicians Edinb 2020; 50: 144–7

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