【漫画感想】僕の心のヤバイやつ Karte.51 僕には難しい

作品へのリンクは以下。
https://mangacross.jp/comics/yabai/55

○作品の流れに合わせて思ったこと
-1ページ目-
「ど......どうも......」
市川姉に挨拶する山田。
前回の最終コマ高解像度版ですね。
「ちゃんと服を着といてよかったね」という気持ちと、「もしかして山田って超絶美少女なのでは?」という疑惑に襲われる。
山田は山田という生物で、女の子だという認識が薄かった。
アホ毛がピンと跳ねて、眼鏡の中で目はぐるぐる。口はあわあわ。手は服をぐいっと。おお、これは文句なしに美少女。

スマホに映る山田を見るおねえ。ぽかん、って感じ。
この時点では「弟が美少女のキャスを見ている」という認識なんだよな。
「あー京ちゃんもそういうのに興味が......」みたいな感情だろうか。

「き...... 切ってしまった...」
完全に反射的な行動。
切って『しまった』という言葉から、
「よくわからないけれど、手が勝手に動いた」が近そう。
追い詰められた市川は、手が動く速度が速い。
Karte.30『僕は溶かした』でお菓子に本を被せ、手を握りこんだのと同じスピード感。

-2ページ目-
「えと...... クラスの女子...っていうか...」
「えっ 配信者かと思ったのに」
市川らしいの墓穴の掘り方。
こういう相手の質問や想定を一段深読みした事故こそ市川。
ツイヤバの『好きな髪型は?』や『なんかいいニオイする』あたりが代表的。
(好きな髪型は?
https://twitter.com/lovely_pig328/status/1075335280817631232
なんかいいニオイする
https://twitter.com/lovely_pig328/status/1255075158361956352 )

「めちゃめちゃ...可愛かった......」
というのはおねえの言。
解釈は2つあって、
1.山田はマジで目黒区最強の美人
2.市川母のDNAが、山田の顔をめっちゃ好んでいる
両方だろうな。うん。

「異性の...友達くらい...いるだろ...おねえだって...」
「いないが?」
いないの!?
まぁ、クリスマスに同性と渋谷でショッピングしていたしなぁ......。
そう思うも、ここでおねえの軽音部設定を思い出す。
(https://media.comicspace.jp/archives/15665/2 )
え、大学で軽音サークルに入っていて、異性の友達がいないんですか......?
ちょっと違和感。
軽音ってバンド間で交流できるし、ライブの打ち上げとかあるだろうし、おねえはかなり社交性がありそうなので、異性の友達いそうだけれど......。
ぱっと思い浮かぶ可能性は4つ。
1. バンド=身内で遊ぶ手段 で、バンド外の交流はどうでもいい (クリスマス渋谷で遊んでいたのはバンド仲間?)
2. バンドマンが好みじゃない (市川家のDNAがバンドマン好きそうじゃない)
3. 音楽馬鹿 (帰省に楽器持参するくらい)
4. 女子大 (だとしたら京太郎の投げかけがエグい)

「異性の...友達くらい...いるだろ...おねえだって...」
のとこ。おねえが可愛い。
これは「めっちゃ可愛かった」山田を脳裏で再確認しているポーズ。

「まぁ...友達......なのかな...わからん...友達...」
ここ、今回のすれ違いポイント①です。
市川 : 『友達』という言葉に気恥ずかしさがある
おねえ : あっ、これ好きな子で恥ずかしがってるやつや……
別におねえ解釈が間違っているわけではないが......
ただ、このタイミングで市川の感情は『友達』という言葉にある。

過去、市川の『友達』に対する言及はKarte.39『僕は夢を見た』に見られる。
ここで市川はおねえの「友達来てたの?」という問いかけに
「...う......うんまあ...」と返すものの、そこには『友達......』というモノローグがある。
おねえの言葉に相槌を打つも、どこか『友達』という言葉に引っかかりがある状態。
対し今回の市川は、自発的に山田を『友達』だと説明している。

ちなみに市川には「山田は自分のことを、少なくとも友達だとは思っている」という認識はある。
Karte.49『僕はモヤモヤする』にて、濁川くん(イマジナリー京太郎)に対して、
「山田は(中略)僕とは女友達と同じ感覚で接しているのかもしれん」
と説明している。そして、濁川くんもこれに同調している。
山田から少なくとも友達だと思われている自覚はある。
(いやここまできてその自覚が無かったら流石におかしいんだが)

……市川の『友達』に対するハードルの高さはどこから来るんだ。
語られていない過去に、闇を感じて怖い。
でも未来、そこに光を当てるのが山田なんだろうな。
多分その話のタイトルは『僕は溶かされた』
になると思うんだ。
(友人: タイトルで回収する系大好きだよなお前
僕: そだねぇ……)

-3ページ目-
おねえ、フリーズ。
事態を真面目に受け止め、『姉として』どうあるべきかを考えている。
とりあえず、おねえにも整理の時間が必要。
山田からは、ねこカマキリ。
Karte.31『僕はLINEをやっている』を思い返すと、このスタンプですらちょっと感慨深い。ねこカマキリ、本当に山田のツボなんだな。
スタンプの感情は微怒。

-4ページ目-
ちゃんと第一声に「ごめん」から入る市川。
「姉はウザイタイプなので」という市川に対し、リアル山田は黙り込む。
多分「こっちが通話をかけて迷惑をかけちゃったかな」なんて思っている。山田はこういうのをかなり気にするし、背負いこむタイプ。山田は優しいからな。(Karte.40市川談)
だから「私が話そうか?」と市川に投げかける。

ここの山田のポーズと「私が話そうか?」に関しては解釈に難儀したけれど、友人と考えて出た結論は以下。

市川は姉に「ウザイ」ことをされている。
山田はそういった迷惑をかけたことに責任を感じている。
「ウザイ」姉の対処は市川には難しいであろうことを察している。
(市川がどんなに弁明しようとも、前ページのおねえ想像図のようになるため)
だから自分が市川姉に対して直接「これは違うんです」という説明をしなければならない。
しかしその説明とは、頑張って縮めた市川との距離を自分から離す行為に他ならない。

そういったジレンマが、この1コマかなと。

だから山田は「もうなんとかしたので問題ない」という市川に対して、
「なんて言ったの」かが気になってしまう。
市川が自分を遠い距離に置いてしまうのは、これまで育んだものが無くなるに等しい。
改めて見るとこのコマの表情、すごく心配げだ。

その後、市川のカットインが入った後(大事)に
「友達」
「とりあえず」
「今は」

-5ページ目-
山田の想いとは遠いところ、
市川は『友達』という言葉と向き合っている。
すれ違いポイント②である。
山田は距離が遠くなることを恐れ、市川はこの距離を『友達』と認めていいのかに悩んでいた。
だから市川は、山田にこう伝える。
(確信を持ててはいないけれど、僕はこの関係を)
「友達」
「とりあえず今は、そう呼んだ」

それに対して山田サイド。
「"今はまだ友達関係"の女の子だ」って姉に伝えました。
市川にそう告げられた。(誤解です)
安堵と、市川がちゃんと自分を近くに認識してくれている喜び。
「私達はちゃんと"その道の途中"にいるって、そう思っていいんだよね」
と、ねこカマキリで返す。
ここで山田の認識する「とりあえず、今は」は、
Karte.40『僕は練習台になった』と同じ文脈。
「観られる...よう、善処する」と同義。

結果はハッピーエンドだが、珍しく山田が独り相撲をしている回だ。
似たようなのはツイヤバの『サボっちゃう?』の後くらいか?
(『サボっちゃう?』その後
https://twitter.com/lovely_pig328/status/1284090964953292800?s=21)

……ん?山田これ、履いてなくない?
え、この女、もしかして履かずに市川にビデオ通話をかけ……
ああ、いや、大丈夫だ。
8ページ目ではしっかり履いている。ビデオ判定の結果、セーフです。

-6ページ目-
楽器を担ぐおねえ。
おねえはベース担当であってほしい。
ベースを弾く女はいいし、いい女はベースを弾く。(偏見)
そもそも帰省に楽器持参は凄いやる気。
年明けにライブや演奏会でもあるのかな。

-7ページ目-
「あ する!!」
これ、山田とお揃いって解釈であってる?
何か思いついたような描写だし、
しかしそこから、
「友達だし、土産くらい買ってもいいだろう」
に繋がるのにはやや違和感がある。
お揃いのストラップをつけられる自己評価も、市川の中にはまだ無さそうだし。
(友人:
これは姉に対して「買う」という意思表示。 
「つか 買う」の方が本質。
いつも通り「は?するわけ...」って言っちゃうと、山田にお土産買えないからね。
僕: なるほどなぁ)

山田を『友達』と定義することで土産を買いやすくなるのは面白い。
山田にお土産を買ったんじゃない。友達にお土産を買ったんだ。

京ちゃんに軽く引くおねえ。
ああ、そうなんだ。
「やったー!京ちゃんとお揃いー!」となるタイプのブラコンではないのね。
「いつもと違う反応で調子狂うなぁ」みたいな反応。
なんかおねえ......普通に普通に姉だな......。
やたらおねえ解像度が上がる。

車の中。
「弟よ、顔が良い女はチヤホヤされ馴れていて男をとっかえひっかえするから、やめとけ」
遠回しに伝えるおねえ。女子大生的無常観。
空返事をする市川父。まったりした人だなぁ。
この父母から、グロ小説愛好家の京太郎が産まれるのは面白い。
「いやいや、中二病だから」と言ってもいいけれど、ツイヤバの節分回を思うと京太郎の趣味は先天的なため......。
(節分回: https://twitter.com/lovely_pig328/status/1224306886796660736)

-8,9,10ページ目-
「手に届かないものなら、傷つく前に早く諦めろ」
おねえ......もしかしてお前......『姉』なのか?
なんか京太郎がおねえポジ……兄として、妹に対するパターンの同シチュも見てみたいな。

「ーーでも、今の僕には難しい」
「山田が頭から離れない」
ここ、今回のタイトル。
『僕には難しい』
ぐえー。
ここまでド直球な対山田感情に溢れたタイトル、これまであったか。
遡る。あった。
1巻Karte.15『僕は抱きしめたい』
これくらいじゃないかな。
ん?Karte.15で山田の手に渡ったティッシュがキーとなり、Karte.43『僕は山田が嫌い』で市川は山田に抱きしめられるんですか!?
そんな伏線回収を今になって気付いたりして。

今回の話に戻る。
市川が読んでいるLINEの内容。
「この前のコーデ、インスタにあげたよー」
「みた??はやくみて」
聞いているか、諸君。君たちが見ているインスタ、あの娘の新コーデは彼氏に「似合っている」と言われ購入した服で、彼氏に見せるためにインスタに投げてるだけだからな?
あ、失礼。彼氏ではなく『友達』でした。とりあえず今は。

話は進み、見舞いに来たのが山田だとバレる。
おねえよく覚えてんな。
「京ちゃんにも見舞いに来てくれる友人がしっかりいるんだ。名前は山田君ね。ふーん」みたいに覚えていそう。

おねえ、情報整理。思考。
おねえは元女子中学生だ。
おねえにはわかる。
女子中学生が家に一人でお見舞いに来て、手紙を残すその意味が。
「あるんじゃない?脈」
おねえ安心。
安心して、『姉』から『おねえ』になった。

○通しての感想
市川-山田がこじれる話になると想像していた。
三人の会話というのは難しい。
一番ありそうだったのが、おねえが茶化し、焦った市川が間違った言葉を選んでしまい、山田が傷つくルート。これをだいぶ恐れていた。心が弱いオタクのため。(でもこれ見てみたい)

いやそうか。市川は通話を切ればいいのか。正直、盲点だった。
LINEに馴染みが薄い世代ゆえの、想像力不足。

しかし、かなり濃い回だったな......。
今回は市川、山田、おねえが全員独立した感情変化をしているので、
掘り下げるのが凄く楽しかった。

次回はまだ年内のエピソードかな。
市川と山田の年越しは描くと思うし、なにより
「良いお年を」
をまだ言えていない。
多分マフラーを返す話になると思うんだ。
そこで初詣の約束も、出来るといいね。

以上。

共著:ふぇけ

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