バトル・オブ・カスミガセキ #11,12日目

7月2日,3日 接触禁止期間



僕は東 大生、東京大学法学部の4年生だ。
先月20日に国家公務員総合職試験に合格したので、現在キャリア官僚になるべく官庁訪問をしている。
といっても今日明日は土日(接触禁止期間)な上、僕が訪問している省は第4クールまで残れば内定が約束されたようなものなので、何もやることがない。
宿舎で同室のめりあちゃんは第4クールでの選別に備えるべく朝から自習室に籠って準備をしている。なんともご苦労なことだ。
めりあちゃんは中学受験をせず高校も地元の公立、大学も地方では名の知れたものといったところだろうか。聞いた話によると留学どころか生まれてこの方海外に行ったことがないらしい。一方の僕は名門私立に中高と通い、大学は天下の東京大学。親が"エリート"だったこともあり留学など慣れたものだ。
官庁訪問では多様な経歴の人間たちが同じ試験を通過し、これまでの二十数年をかけて殴り合うために集まる。ほとんどが今まで"1番"しか取ったことのない者ばかりだ。
昔のように東大にあらずんば人にあらずという風潮は(未だ消えたとは言わないが)薄くはなっており、学歴や経歴ではなく"実力"で評価される流れが大きくなった。

「・・・めりあちゃん、夜ごはん食べに行こうよ」
「?  いいけど・・・」

少し乗り気ではないらしいが、無理もない。X庁は第2クール以降も志望者を受け入れているという都合上、第4クールでも普通に"選別"が行われる。
最後の土日は準備にあてたいというのは当然だ。
しかし・・・・

「このお肉おいしい〜!!なにで見つけたの?」
「こないだ東大の同期に教えてもらったんだよ、中々いけるでしょ」

2週間も同じ部屋で寝たというのにこのまま別れてしまうというのも残念だ。初めは部屋に戻って準備をしたいという気持ちが表情に滲んでいたが、今やすっかり消えてしまったらしい。

「ところで、なんで急にごはんに?」
「まともに一緒にいられる最後の土日だからねぇ〜、やっぱり縁は大事にしたいよ。」
「官庁訪問終わってからじゃだめなの?」
「だってそれだとめりあちゃんが次で切られたら流れるじゃん」
「死ね」


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