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出会った時にはもう、ここにいなかった人ー「地球交響曲第三番」



星野道夫を
初めて知ったのも
誰かの言葉からだった



彼の死を伝えるニュース
熊の写真を撮りに行った先で
熊に襲われて死んだカメラマン

その伝えかたに
ものすごく違和感を覚えたのを
覚えてる



そうして 次に彼を観たのは
亡くなった彼を追う映画
「地球交響曲第三番」だった




星野道夫という人は
写真家として知られているけれど

この映画のおかげで 私は
彼の写真よりも
彼の言葉に
より多く反応してきた



そのファインダーを覗き続けた眼が
捉えたアラスカを
言葉でもって知らせてくれる
その彼の言葉に



ネット上に
たくさんの情報が転がってることは知ってる

それらすべてが
見た人の聞いた人の語る人の
フィルターを通しているってことも

そう書いている私だって
フィルターかけて
彼を観ているってことも



ただもう 私はもう
“ミチオ”のことを
悲しさや寂しさでもって
受け止めたくないんだな



だから
またこのタイミングで
何度でも 彼の言葉に出くわすんだ




彼が 森の生き物の中で一番
熊に惹かれていたこと


熊が人を襲うニュースに触れて
どこかホッとするという
その感覚




クリンギット・インディアンの長老から
熊と人間の間の子を差す
「カーツ」という名を授かり

その名の通りに
死んで熊になったのは

私には 仕合わせてるとしか思えない

他の誰かから見たら
“熊に襲われて死んだカメラマン”
だとしてもね。

この映画に出てくる人は皆
大切な人を失う痛みを知ってる。

自分ひとりの世界の
時間の流れと同じに

宇宙サイズの時間の流れを
(無意識か意識的かはわからないけど)
感じている人ばかりだ。


親友の山での遭難を通して、人間の一生がいかに短いものなのか、そしてある日突然断ち切られるものなのかをぼくは感じとった。私たちは、カレンダーや時計の針で刻まれた時間に生きているのではなく、もっと漠然として、脆い、それぞれの生命の時間を生きていることを教えてくれた。
「旅をする木」星野道夫


出会った時にはもう
ここにはいなかった人。

そのことが
本当に沢山のことを
教えてくれた

ありがとうなんて言葉じゃ
どこにも足りないくらいに
沢山のことを。



(2023.1.2 龍村仁監督のご冥福をお祈りいたします)
※画像はwebよりお借りしました

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