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分からない、を感じる。違う言葉、同じ言葉 ー「アズールとアスマール」




兄弟が違う道を歩むのは
物語じゃよくあること

兄弟とて、違う人
兄弟のように育っても
違う人。


☆☆☆☆★



ミッシェル・オスロ監督の作品は
2011年「夜のとばりの物語」から入りましたが
こちらはさらに前、2006年の作品。
そうは思えないくらい、影絵とはまた違って
美しい!


アラビア人の乳母ジェナヌの子守歌で、まるで兄弟のように育った、青い瞳のアズールと黒い瞳のアスマール。
大きくなり、乳母の歌っていた子守歌の国を訪ねるため、アズールは遠く海を渡る。しかし、この国の人たちはみんなが黒い瞳で、アズールの青い瞳は、不吉の“呪われた目”だった──。

公式サイト http://www.ghibli-museum.jp/azur/introduction/



瞳の色が違い
肌の色が違い
話す言葉が違う二人の子

同じ母(乳母)に育てられ
同じ子守唄を聴いて育った二人は
ある日突然、引き離される

成長したアズールは
乳母の子守唄を忘れず
遠い異国へと旅をする






よくある冒険もの、として観るのは簡単。
ただ、それだけではありません。



青い瞳の子、アズールが旅する異国は
育ての乳母と同じ言葉が飛び交う

聞こえるけれど、よく聞き取れない世界。
自分と同じ言葉を話す人はいない




…外国映画といえば、字幕や吹替で観ますよね。
この作品は「よく聞き取れない世界」の言葉を、字幕もつけなきゃ吹き替えもつけない。
わからないままにしてる。

そこが最高なの。
“わからない”を体験させてくれる。
“異国”を、こんな風に表現するなんて素敵♪



アズールは
片言で、ぼんやりとしか分からない言葉の中を
目を閉じ“盲人となって進みます



そして、使えるものは何でも使う。
不吉だ!と老人が投げた杖を持ち、
近づいてくる者は、嘘をつく道化師でも受け入れる。
自身の持てるものを、全部出さない(彼の場合は視覚を捨てた)



彼が、盲人として振る舞い進んだからこそ
二つの鍵を見つけ、懐かしい乳母の声も見つけたの



一方、アスマールは
幼い頃、アズールに別れも言えずに引き離されたこと
母共々、アズールの父から追い払われたことに
恨みを持っています
乳母を見つけたアズールとの再会にも
喜ぶどころか、彼を浮浪者扱い。



そんな姿に
母(乳母)は失望しますが

道を違えて進んでも、我が身を呈してアスマールを助けるアズールを
アスマールは、アズールの国の言葉で助けます。
一緒に、探しものを見つける二人。


この話、冒険譚は正直どうでも(?)よくて。
兄弟や親子のいざこざにも話が向いてない。ただ




この世界は、「違い」がとかく
拒絶や差別、迫害の始まりになるけれど

違いを受け入れた上でも
共に進めるし、共に
欲しいものも手に入れられるし
共に幸せにもなれるよ。という話。



違う言葉も
違い受け入れ、共に進む時には
同じ言葉になるのだね。

(画像はお借りしました)

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