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海外展開は、“競争”ではなく“共闘”。他国プレイヤーと「1+1=3」を築く、ギフティM&A担当の戦略

現在、国内マーケットだけでなく、マレーシアやベトナム、インドネシアとASEAN3カ国に現地法人を開設し、eギフトサービスを展開しているギフティ。そうした海外事業推進の一翼を担っているのが、2020年にギフティにジョインした水谷圭佑さんです。

コーポレートファイナンスとして、M&Aや出資案件の実行、予算策定・管理など経営企画に携わるかたわら、海外事業にも従事しています。
「現地に赴き、現地の生活を知る」
このことをモットーに、その国その国のギフト文化を肌で体感するという水谷さん。仕事の際に意識していること、また現在チャレンジしていることなどについて、インタビューを通じて話を伺いました。

〈プロフィール 水谷 圭佑(みずたに けいすけ)〉
上智大学経済学部卒。大手電子部品メーカーである村田製作所に新卒入社後、経営企画部に配属。予実管理、海外案件を含むM&Aやベンチャー投資業務を経験後、2020年4月にギフティにジョイン。ギフティ入社後はM&A・出資案件の実行/全社予算策定・管理/ファイナンス/コーポレート特命案件(東証1部市場変更など)といった、CFO(最高財務責任者)直下で守備範囲広くコーポレート業務に従事。


現地で戦っている企業には、まずリスペクトを。「双方向にメリットのある関係を築いていく」

──水谷さんの具体的なポジション、業務内容を教えてください。

CFO直下のコーポレートファイナンスという部署で、マネージャーをやっています。メンバーは僕を入れて4人。主な業務は3つありまして、1つはM&Aの検討から実行、もう1つは全社の予算策定やファイナンスなどの経営企画業務、そしてもう1つが海外展開の戦略づくり、M&Aの検討です。

海外事業は、ここ1年くらいで徐々に比重が大きくなってきました。5年ほど前にマレーシアを立ち上げて、3年前にベトナム、2年前にインドネシア。この3か国に展開しています。
 
現在はそれぞれの国が立ち上がりのフェーズなので、どうやって大きくしていくのか、パートナーと組むのか、あるいはM&Aを活用していくのか、を考えている。未進出の国についても、単独で向かっていくのか、現地のパートナーと組んでいくのか、そういったことも考えています。

──ASEAN各国など、すでに他国プレイヤーが進出しているマーケットの中で、ギフティはどのように展開していくのでしょうか。


まずギフティの強みというのを考えたときに、それはたくさんあります。eギフトを生成できる仕組みを持っていることや、それ以外でも、CP(Contents Partner)さんが困ることに個別に対応していける細かなソリューションを持っていること。

加えて、法人利用における販売キャンペーンなどに関するノウハウや、それに付随するツールやアセットがあることなど。いくらでも強みはあるけれど、それがそのまま海外での強みになるかと言えば、そうではない。
 
そもそも環境が異なるし、「海外」と一括りに言っても、国ごとに微妙な差がある。日本だと飲食店のギフトがよく使われるけど、それがあまり使われず、キャッシュニーズが高いために、pay系の商材や携帯会社のバリュー・ポイントが好まれるとか。
 
環境が異なる中で展開しようと考えると、すでに海外で戦っている、現地の他国プレイヤーの存在がキーになる。つまり「競争」するのではなく、「共闘」していく必要があるということ。みな、限られた資金、制約の中でやっている。そこに僕らが持っているノウハウを提供して、一方で、向こうのノウハウに触れて勉強させてもらう。そういった、双方向にメリットのある関係性を築いていく。
 
たとえば販促キャンペーンのノウハウは提供できるけど、海外だと企業の顧客ロイヤリティの取り組みの中でeギフトを配布したりすることが多いから、そこの仕組みづくりについては教えてもらうとか。
 
すでに現地で戦っている企業には、とにかく「リスペクト」を持って接しています。ギフティは日本でこそ知られているけど、ある国ではプレゼンスが全然なかったりする。そのリスペクトのうえでコミュニケーションを取り、互いの欠点を補い、長所を伸ばしていく。1 + 1は2じゃなくて3以上、と相乗効果を生んでいくのが、海外事業での「共闘」の理想です。

海外への挑戦、それができるのは国内で「Moat」を築いてきたから。

──そのような海外とのコミュニケーションの中で、水谷さんが意識していることはありますか。

現地の企業と同じレベルまで、ビジネスや外部環境の解像度を上げる、と考えたときに、デスクトップで調べているだけだと、どうしても足りない。実際に海外に行くのが重要だと思っています。
 
現地でコミュニケーションを取ることで、「本当に来てくれだんだな」と信頼度が上がる。そしてもっと言うなら、そこに一定期間「滞在」したほうがいい。パートナー企業やその候補になるところに、とにかく話を聞きに行く。ニーズがどこにあるか、なにに困っていて、サービスとしてなにが刺さりうるか、など本質的な悩みや課題を探っていく。そういうものは生で向き合って、話したり見たりしないと、分かりにくい。
 
滞在が必要な理由は、もうひとつあって。それは企業だけでなく、その「街」を知ることが重要になるから。僕はとにかく街中をよく見るんです。どこの街にも、ギフト売り場というのがありますよね。それがどういうラインナップになっているかをチェックする。実際に買ってみることもある。店員さんが対応に慣れていると「ギフトがたくさん買われているな」と分かるし、逆に対応に手間取っていると「そんなに普及してないんだな」と分かる。
 
ほかにもどこかの企業の販促キャンペーンで、街中にポップアップをやっていたりするので、なにが送られるんだろう、と見てみる。そうすると、「あ、物なんだ」「車なんだ」「eギフトなんだ」と分かる。街を歩きながら、とにかくアンテナを張っていくんです。そうやって、「人・企業・街」を知って、海外展開の足がかりにしていきます。

──5年間で、3つの現地法人。今後も、ASEANにとどまらず、他の地域への展開も視野に入れ、積極的に展開していく予定だと伺いました。そもそも、ギフティが国内市場で完結せず、海外展開にも挑戦できている理由はなんだと思いますか。


一番は、国内で一定の「Moat(モート)」を築いてきたからだと思います。このMoatというのは、城のお堀を意味していて、ビジネス的な観点では、他社には越えられない壁、競合優位性や事業の強みを指します。日本の事業は、まだまだ小さい存在ですが、その中でもある程度市場を作って来れたと思っています。
 
その中でMoatを意識しながら事業を運営してきたからこそ、新しいことにチャレンジする余地や余力が出てくる。Moatのような差別化要素が少ないと、足元の競争にリソースを使ってしまい、新しいことに種を蒔く余裕が少なくなってしまうかなと。

ギフティでは、その地盤が一定しっかりしているからこそ、新しい種を蒔けるリソースがある。撒いた種も全部花が開くわけではないけれど、その中で何個か開くと、それが次の基盤になって…といった感じで連鎖ができてくる。その連鎖で会社が成長していく。海外事業も、そのうちの1つの「種」だと思います。
 
そして海外に挑戦できている理由は、もう一つ。ギフトというものが、人間の生理に近いもの、つまり人種や国を問わないからだと思います。どこの国も文化は違うけれど、共通して言えるのは、ギフトというものがどこの国にも絶対あるということ。個人から個人、法人から個人、国から自治体など、どういうかたちであれ、ギフトは存在する。それだけ、ギフトというものが普遍的なんだと思いますね。だから国を越えていける。
 
僕はギフトを、「縁を育み、接点を創出する」ものだと思っている。人対人、人対企業、人対街、つまり関係性をつくっていくための媒体。

もらったら使うし、もらったら行くし、そうすると、新しい場所との出会いになるかもしれない。そうやって、生活が豊かになっていく。そういうものは国を越えて、世界中に広がる。ギフティが海外に出るのは、必然だったのかなと思います。

メンバー各人が事業とミッションを信じている。

──大きな挑戦の中では、苦労も多かったのではないでしょうか。

 はい、苦労の連続でした。でも、僕一人でやっているわけではなく、他にもメンバーがいます。チームで乗り越えてきました。そもそもギフティには「自分の領域はここ」と決め込むような人はいない。視野を広く持って、「これをやることの目的ってこれだよね」「これは絶対やらなきゃいけないからやろう」と言い合える人が多い。
 
自分の部署や担当からはみ出してでも、達成すべきだよねという人が多い。根底にあるのは、それぞれ携わっている事業が好きで、ミッションを信じている、ということ。だから少人数でもやれるし、これまでの苦労も、乗り越えられてきたのだと思います。

──最後ですが、ギフティには、どういうメンバーが入ってきてほしいですか。

人であれ事業であれ、その可能性を信じてくれる人、ですかね。マイナス思考にならず、どういった局面になっても、自分のやるべきこと、目指すべき方向性を信じられる人。それでいて、「こういうことやりたい」「面白そう」とワクワクしている人。そういう人とは一緒に居て楽しいですし、挫けそうになっても、ともに頑張れる。
 
逆にギフティにはいないかな、という人は、なにかを見せびらかしたりとか、誇示したりする人。そういった虚栄心を持っている人は、うちでは見ないですね。みな素直で、他者想いの人が多い会社です。
 
(取材・文・撮影・編集:清水 翔太)